台湾出身の芥川賞作家・李琴峰(り・ことみ)さんが5日、自身のトランスジェンダーであることをSNS上で暴露された(アウティングされた)として、山梨県甲府市の女性市議を相手取り、550万円の損害賠償と投稿の削除を求めて東京地方裁判所に提訴した。
李さん側によると、市議は昨年5月下旬、フェイスブックに「身体が男性で手術もしていない」などと投稿し、李さんの個人情報を明かした。この投稿は警察への相談後に削除されたが、その後、市議は別の人物の投稿を引用する形で、李さんが性別を変更する前の未成年時代の写真を再び掲載した。この投稿は5日時点でも削除されていないという。
李さんは記者会見で、「市議とは全く面識がなく、一方的に機微な個人情報をさらされた」と強調。「自分を守る行動を取らざるを得なかった。これは私自身や日本の性的少数者の基本的人権を守ることにつながる」と訴えた。
李さんは2021年、『彼岸花が咲く島』で芥川賞を受賞。その後インターネット上で性別に関する誹謗中傷を多数受け、2024年11月に自身がトランスジェンダーであることを公表していた。日本に渡航した2013年(平成25年)以前に、台湾で性別を女性に変更していたが、日本ではその事実を伏せて生活していたという。
一方、市議は「最初の投稿はすでに削除し、その後の投稿も適切に対応した。訴状が届いてから、名誉毀損に当たるのか弁護士と相談したい」とコメントしている。
編集:梅木奈実 (関連記事: 在日台人Lulu氏、風傳媒インタビュー 偶然たどり着いた不動産業で「日本への帰属感」 | 関連記事をもっと読む )
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