国際原子力機関(IAEA)は5月26日から30日にかけて、日本政府の要請に基づき、東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS(多核種除去設備)処理水の海洋放出について、安全性の現地審査を実施した。日本外務省が発表した声明によると、IAEA職員および11か国の専門家から構成されるミッションが来日し、放出作業の開始後4回目となる審査を行った結果、「処理水の海洋放出は国際的な安全基準に則り、安全に実施されている」との評価が下された。
福島現地を視察 設備の安全性を確認
今回の調査は、IAEAと日本政府が2021年7月に締結した「ALPS処理水安全性審査の職務範囲(TOR)」に基づく取り組みの一環として行われた。
IAEAの説明によると、今回の審査では日本政府、福島県、東京電力が実施する海域および原発構内でのモニタリング計画を重点的に検証したほか、日本の具体的な放出方法が国際的な安全基準に適合しているかどうかについて、各関係機関と意見交換を行った。
5月28日にはミッションが福島第一原発を訪れ、排出関連設備の現地確認を実施した。
IAEA「独立・中立な監視が信頼の鍵」
IAEAは、国際的に権威ある核エネルギー機関として、独立かつ中立的な立場からの評価は処理水の透明性確保および国際社会からの信頼獲得に不可欠であると強調した。
日本政府も引き続きIAEAとの緊密な連携を維持し、国内外の理解と支持を得るための努力を続ける方針を示している。
ALPS処理水とは
ALPS処理水とは、福島第一原発の原子炉建屋などにたまった放射性物質を含む水を、複数の浄化装置を通して処理したものである。トリチウム(三重水素)を除くほとんどの放射性物質は、排出基準を下回るレベルまで除去されている。放出の際には、このトリチウムも大量の海水で希釈し、国際基準に準拠したかたちで海洋放出される。
今回の審査には、アルゼンチン、イギリス、オーストラリア、カナダ、韓国、中国、フランス、アメリカ、ベトナム、マーシャル諸島、ロシアの11か国から、独立した立場の専門家が参加した。
編集:梅木奈実
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