「放射線影響は無視できる水準」と改めて評価 国際安全基準を満たす
国際原子力機関(IAEA)は2025年6月2日、福島第一原子力発電所から海洋放出されるALPS処理水に関する追加モニタリングの分析結果をまとめた報告書を公表した。今回の報告は、2024年10月にIAEAの枠組みのもとで行われた国際共同調査に基づくもので、日本の分析機関に加え、中国、韓国、スイスの専門機関が参加した。
IAEAは報告書の中で、参加機関による分析結果が2023年7月に発表された包括報告書と整合していることを確認。処理水の海洋放出による人や環境への放射線影響は「無視できるレベルにとどまる」と再評価し、国際的な安全基準を満たしているとの見解を改めて示した。
日本政府はこの報告を受け、IAEAとの連携を維持しつつ、国内外に対する透明性の高い情報発信を今後も継続する方針を表明。「国際社会との信頼醸成と、科学的根拠に基づく説明が極めて重要だ」とする政府関係者のコメントも伝えられた。
今回の分析に使用されたサンプルは、以下のスケジュールで採取された。第1回は2024年10月15日に海水を採取、第2回は2025年2月に海水・水産物・処理水を対象に実施、そして第3回は同年4月に、海洋放出前の希釈後処理水が対象となった。いずれも放出前の段階でのデータ取得を目的としている。
ALPS処理水とは、福島第一原発の建屋内に溜まった放射性物質を含む水を、多核種除去設備(ALPS)をはじめとする浄化システムにより処理し、トリチウム以外の放射性物質を規制基準以下にした水を指す。実際の海洋放出に際しては、さらに大量の海水で希釈し、トリチウム濃度も含めて国の安全基準を満たすよう管理が行われている。
IAEAは今後も独立した立場から検証と報告を続けるとしており、日本のALPS処理水放出に関する国際的な監視体制は、今後も維持される見通しだ。
編集:梅木奈実 (関連記事: IAEAが福島第一原発のALPS処理水を現地調査 「国際安全基準に沿って排出」確認 | 関連記事をもっと読む )
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