「分かれても一つに」──台湾前総統・馬英九氏、中国訪問で若者に託す、両岸の平和と希望

2025-06-16 14:45
前総統の馬英九が2025年6月15日に海峡フォーラムで中国全国政治協商会議主席の王滬寧と会見。(読者提供)
前総統の馬英九が2025年6月15日に海峡フォーラムで中国全国政治協商会議主席の王滬寧と会見。(読者提供)

台湾前総統の馬英九氏は、馬英九基金会の「大九学堂」メンバーを率いて中国を訪問し、「海峡フォーラム」に出席した。6月15日には全国政治協商会議主席の王滬寧氏と初めて会見し、中国5,000年の歴史における「合久必分、分久必合(長く続いた統一はやがて分裂し、分裂が長引けばまた統一される)」という考えを語った。

馬氏は過去2年で中国を3度訪れており、今回の訪問を通じて両岸の民間交流、特に若者同士の対話の重要性を再確認したと述べた。台湾では、大陸から来た学生や教員が温かく受け入れられており、これに対する双方の反応も良好だという。こうした民間交流が、いかなる力でも切り離せない友情の証であると強調した。

今回の訪問は6月14日から27日までで、福建省と甘粛省を回る予定だ。馬氏にとっては2023年以降、今回が中国訪問4回目となる。出発前の台湾桃園空港では、「両岸の若者が学び合い、理解し合う機会をつくることで、平和的な発展を後押ししたい」と語った。

馬氏ら一行は14日午後に厦門に到着し、インターコンチネンタルホテルに宿泊。随行者には、中国側から潘賢掌・国務院台湾事務弁公室副主任、台湾側からは新党の呉成典主席、国民党の林祖嘉・大陸事務部主任、民衆党の張凱鈞・党中央委員らが含まれている。

王滬寧氏は「尊敬する馬英九氏」と呼びかけ、今回が初対面であることを明かした上で、海峡フォーラムが両岸の民間交流の拡大と融合発展の深化において重要なプラットフォームであると述べた。

また、馬氏が「中華民族の一体感を持ち、九二コンセンサス(※1992年の合意)を堅持し、台湾独立に反対する立場を明確にしている」と評価した。さらに「民族統一と復興を願う台湾の人々にとって、馬氏の行動は模範的だ」とも語った。

王氏は、馬氏がこの3年間で4度にわたり中国を訪れ、青年交流や中華文化の普及に尽力していることに触れ、「両岸交流の障害を乗り越える象徴的存在」だと称賛した。馬氏は会見で、現在の両岸関係が不確実であり、挑戦に直面していることを認識したうえで、「こうしたときこそ、理性と冷静さを保ち、対話と交流を通じて理解を深める努力が求められている」と語った。

また、中国5,000年の歴史に根ざす「合久必分、分久必合」の考えに触れ、「台湾の人々は、両岸が『和』と『合』の方向に進むことを望んでいる」と述べた。さらに、今年5月以降の世論調査では、多くの台湾人が両岸の平和と協力を支持し、「両岸は同じ民族である」との認識が主流になっていると説明した。

馬氏は、1992年に両岸がそれぞれの表現で「一つの中国」原則を認めた合意について、歴史とそれぞれの法律の整合性にかなっており、人民の利益と福祉を重視するものであると評価した。

そのうえで、「九二コンセンサスに基づいて台湾独立に反対し、協力関係を深めていきたい」と語り、対立を交流に、衝突を対話に置き換えるべきだと強調。戦争の可能性をすべて排除し、中華民族の振興をともに目指すことが、両岸の未来に安全と繁栄をもたらすと述べた。

また、両岸の民間交流の重要性についても再度触れ、特に若者たちが広い視野を持ち、文化を通して中華文化の本質や民族としての一体感を育むことができると述べた。

最後に、王滬寧氏の招待に感謝の意を示し、「この交流が単なる友情の証にとどまらず、両岸平和の表れであることを信じている」と語った。

今回の旅の目的については、「福建の歴史や産業を知ることに加え、顔を合わせて交流することで両岸の緊張緩和を図りたい」と述べ、今後は甘粛省の天水や敦煌などを訪問し、中華文化の発信に共同で取り組む予定であると明かした。

​編集:田中佳奈

最新ニュース
実戦経験ゼロの軍隊は強いのか?元米司令官が語る台湾と中国軍の「真の実力」
台湾が数か月耐えれば、中国の「災難」に 元米司令官が語る軍事的分岐点
民衆党には頼らない──民進党・柯氏、国会の「偽民主」に対抗する戦略を明かす
トランプ氏、イラン最高指導者の暗殺を阻止、イスラエルとイランの衝突回避へ調停の意志示す プーチン氏も協力姿勢
台湾・総統府主催の国家安全会議、野党側は「罷免法案の罠」と警戒感も
舞台裏》「台中防衛戦」始動 台湾・台中市長盧秀燕氏がリコール危機に「指揮官」として出陣
イスラエル、イラン核施設を攻撃、米は暗殺に反対 ネタニヤフ首相「神権打倒を」
大阪・関西万博》川崎重工、四足歩行ロボット「CORLEO」公開 関西万博で次世代モビリティを披露
台湾、日本最大のドローン展に初出展!「台湾版スプリングナイフ」が軍民両用の戦術機体に注目集まる
Japan Drone 2025開幕、最新ドローンが日本に集結 非レッド・サプライチェーン陣営と中国勢が技術競争で激突
日本与野党税制改革を巡る攻防 野党は消費税削減を求め、自民党は国債の深刻な影響を懸念
インタビュー》フジロック2025企画チームが語る今年の見どころとは?:山下達郎がついに登場
夜空と宇宙を旅する夏。六本木ヒルズで「天空の星まつり」開催へ
独占インタビュー》一青窈さんが語る「魂のふるさと台湾」音楽と言葉のちから
観光の未来をつくる──ライオントラベル、「台湾観光サステナ賞」で5冠達成
本音を話せる相手はAI?チャットボットに潜む「迎合」のリスク
トランプが語るマスクとの対立の経緯 「彼が私を支持するとは思わなかった」
飛行機のどの座席が最も安全か?印航空機墜落で「1つの鍵」を持つ唯一の生存者 専門家が明かした「命を守る3つのゾーン」
中東の緊張が高まる中、イスラエルがテヘランを急襲!革命防衛隊司令官を狙撃
日米、関税政策で協議を加速 赤澤経済再生相と米商務・財務長官が会談 石破首相とトランプ大統領も電話会談
台湾最大級の熱気球フェス、草原ピクニック付きで楽しむ夏旅ツアー発売
独占インタビュー》台湾の若手アニメーション監督・蘇瑞容の短編が東京の国際映画祭へ
独占インタビュー》台湾の新鋭監督・王彥蘋SSFF & ASIA 2025に『Till Next Time』でノミネート
インド航空機事故で294名犠牲に 世界で最も安全な航空会社ランキング、過去に死亡事故ゼロの機種を一挙紹介
阿里山を超えた!台湾で今一番人気「癒しの森」、32万人が通う魅力とは
「台湾語は心の音」──日本人シンガー真氣、歌で繋ぐ日台の絆
独占インタビュー》洪瑋婷監督、短編映画『風流少女殺人事件』でSSFF & ASIA 2025に入選
日本国債危機が米国に波及?──台湾の専門家「金融市場の終末が始まるかもしれない」
「13日の金曜日」はなぜ不吉とされるのか?──欧米文化に根付く迷信のルーツとは
一方通行の対話?台湾総統頼清徳氏の「対話呼びかけ」に野党が警戒感 内容不透明との批判も
「ワクチンはどっちの腕に打つべき?」免疫効果を左右する「身体の記憶」とは
中国半導体発展》両岸協力で世界一に!台湾企業が米国に拠点構える中、張汝京の「この結末」への警鐘
美日台軍事机上演習》中国の台湾侵攻で、米日が台湾独立承認?北京学者が民進党主導の「戦略的軍事演習」を疑問視
「なぜ自分だけが…」241人死亡の墜落事故、生き残ったたった1人の男性の証言
南海トラフ地震で台湾にも津波リスク?気象局が警鐘
チップ規制は逆効果?「ChatPPT」から逆転劇へ──中国のAIが3ヶ月で米国に迫る衝撃
自民党、訪日外国人の免税制度「全面廃止」を提言、年2000億円の税収損失に懸念
「ドリームライナー」神話崩壊か──ボーイング787、初の死亡事故で信頼に再び打撃
CNNも注目!阿里山・太平山を超える、台湾の絶景ローカル鉄道5選を徹底紹介
「発言が過激すぎた...」マスク氏が謝罪姿勢、ブルームバーグ「トランプは恨みを忘れない」と和解困難視
台湾・彰化、2025王功漁火節6/28-29開催 多彩なイベントと光のアート祭典を展開
台湾ドル、3年ぶり高値更新で輸出業界に大打撃 為替レートが2.6角急騰し警戒感強まる
エアインディア、ボーイング787が離陸30秒で墜落 乗客乗員241人死亡、1人が奇跡的に生存
「台湾企業の移転、TSMCの懸念は氷山の一角に過ぎない」元閣僚警告の要因とは
施威全コラム》「中共の良心を探す?」誤った問いかけ
アップルの発表会が期待外れ、革新性に疑問符 エコノミスト誌「アップルはノキアの二の舞いになるか」と懸念
陸文浩の視点:『シャングリラ会合』後の中国軍『遼寧』空母の遠距離兵力支援
JR東日本、TAKANAWA GATEWAY CITYで産業用ドローンの最前線を体験
透明感で夏を彩る「透明フェア」、エキュート品川で初開催 スイーツ・アクセ・涼感アイテムが勢揃い
台湾米が日本で急拡大 コメ不足の中で輸出量6倍増、「最も信頼できる輸入米」との声も