イスラエルのネタニヤフ首相は、数十年にわたりイランの核兵器開発を阻止することを自身の使命として掲げてきた。そして今、ついにイランへの大規模な空爆を決行。ウラン濃縮施設を破壊しただけでなく、政権転覆や最高指導者ハメネイ師の暗殺を示唆する発言まで飛び出し、国際社会に衝撃を与えている。しかしこの「斬首計画」に対し、アメリカのトランプ大統領はブレーキをかけた。極めて危険性の高い今回の軍事行動は、戦略的な決定打なのか、それとも政治的延命を賭けた一か八かの賭けなのか、その真意が問われている。
ネタニヤフ首相がこのタイミングでイランへの大規模攻撃に踏み切った背景には、地政学的・政治的条件が整った「決定的瞬間」であるという判断があったと見られる。
2023年10月7日にハマスがイスラエルを奇襲して以来、イスラエル軍はイランが支援する地域の武装勢力に対して一連の攻撃を加え、「抵抗の枢軸」の力を徐々に削いできた。ガザ戦争ではパレスチナ民間人に甚大な被害をもたらしたものの、ハマスに対しては壊滅的な打撃を与えた。レバノンのヒズボラに対する空爆も大きな損害を与えている。中でも注目すべきは、短期間の軍事衝突の中で、イスラエルがイランの防空システムの大部分を破壊し、イラン側が空爆に対してほぼ無防備な状態に陥った点である。
こうした一連の軍事行動により、イスラエルは戦術的主導権を握り、長年にわたって警戒されてきたイラン核施設への攻撃に向けた“行動の窓”をついに切り開いた。
トランプ、軍事行動を容認も「斬首計画」に反対の立場を示す
アメリカ政府は今回の一連の攻撃に対して公式な支持を明言してはいないものの、ネタニヤフ首相はトランプ大統領の黙認のもと、部分的な軍事計画を進めたと見られている。ロイター通信や英「フィナンシャル・タイムズ」など複数のメディアの報道によれば、イスラエルがトランプ大統領に対し攻撃の概要を伝えた際、トランプ氏はこれに明確な反対を示さなかったという。しかし、ネタニヤフ首相が示唆した「ハメネイ師暗殺」の可能性については、アメリカ側が明確に拒否の立場を伝えたとされる。報道によれば、トランプ大統領はイラン指導部に対する「斬首作戦」には支持を与えないという“レッドライン”を引いたという。

イスラエル側はこれらの報道を否定している。ネタニヤフ首相の報道官は、トランプ氏が攻撃計画に反対したとの報道を「事実無根」と断言し、ネタニヤフ首相本人も「一度もなかった会話についてコメントしない」と述べている。
こうした他国の内政に対する公然たる介入発言は、歴代のイスラエル指導者の中でも極めて異例であり、ネタニヤフ首相が軍事的攻勢を仕掛けると同時に、イデオロギーと心理戦の戦いも始めていることを示している。 (関連記事: 黄仁勲・蘇姿丰・イーロンマスクも全員集合! トランプ、CEO団を率いてサウジ訪問:シリア制裁解除、イランと交渉意向を表明 | 関連記事をもっと読む )

初回空襲の成果発表:ウラン濃縮施設と革命防衛隊高官が標的に
ネタニヤフ首相はアメリカの「FOXニュース」のインタビューで、イスラエル軍がナタンズにある主要なウラン濃縮施設を破壊したと述べた。ナタンズの施設は濃縮度が60%に達し、長らく西側諸国からイランの核兵器計画の中核とみなされてきた。