ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、ドローンの重要性が改めて注目される中、アジアを代表するドローン展示会「Japan Drone 2025」が、千葉県・幕張メッセで盛大に開催されている。会場には、世界各国から300社以上の無人航空機(UAV)や先進的な飛行装置、関連部品メーカーが出展し、物流、災害対応、捜索救助、さらには軍民両用の最新技術まで、多岐にわたる分野の製品が披露されている。 本展示会は、日本無人機産業推進協議会とコンベンション運営会社のコングレ(Congrès Inc.)が共催。実機の静態展示、応用展示エリア、専門家によるフォーラムなど、産業関係者と一般来場者の双方に向けた多彩なプログラムが展開されている。 《風傳媒》は現地で、最新のドローン技術や先進設備に加え、東日本大震災以降、復興と地域産業の再建を目指す福島県で進むドローン関連産業のサプライチェーン構築についても取材を行った。
今年の展示会テーマは「ドローン社会の着実な実現と安全戦略」。日本政府が進める「空域改革」や都市空中交通(UAM:Urban Air Mobility)政策に呼応する形で、「次世代空中モビリティ」および「災害対応技術」に特化した展示エリアが設けられており、平時における産業利用から有事の安全保障まで、ドローンの戦略的役割に焦点が当てられている。海外からも多数の出展があり、台湾の工業技術研究院(ITRI)や漢翔航空工業(Aerospace Industrial Development Corporation)をはじめ、韓国や日本など各国の企業が、高い自主性を持つ「非レッド・サプライチェーン」に基づいた革新的な機体を展示している。一方で、中国企業の存在感も依然として大きく、大疆(DJI)をはじめ、成都や深圳のメーカーも多数出展し、国際的な技術競争の最前線が会場内に展開されている。
台湾は工業技術研究院(ITRI)が中心に「Japan Drone 2025」に参加。写真は銘旺科技が開発した先進的なドローン。(撮影:黄信維)
三菱重工、大型無人輸送機を出展 災害対応や物資輸送に焦点 三菱重工が出展した日本の大型無人輸送機が注目を集めており、同機種は日本企業が自ら開発したもので、高い積載量と効率的な遠距離物流能力を備えている。三菱重工の幹部が《風傳媒》の取材に応じ、同無人機は現在開発段階にあるとし、設計の中心は遠距離物資輸送にあり、特に日本の多災かつ島嶼が多い地理的特性に対処するために開発されたと述べている。最大有効荷重は200キログラムに達し、多量の物資を辺鄙な地域や孤島に輸送でき、災害時に即応供給ソリューションを提供することが可能である。
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「200キログラムという有効荷重は同タイプの無人機では非常に珍しく、この機種の大きな特徴の一つである。」技術の出所について、三菱重工は、一部の部品の供給元は多様だが、開発と設計の全体は日本国内で行われ、地元の技術開発能力が強調されている。今後の展望について、三菱重工幹部は、日本は島国で自然災害が多いため、このような大型無人機は災害対応と離島物流の面で非常に高い潜在力を持っていると述べ、「この無人機が緊急救災や島嶼物資輸送の場で実際に活用されることを期待している。」と語っている。
三菱重工の無人機設計は、遠隔地への物資輸送を主な目的としている。(撮影:黄信維)
金属加工のTopia、ドローン分野に進出 主力製品はカーボンファイバー製プロペラ 日本の金属加工会社Topiaは、今回初めて自社製のカーボンファイバー製ドローンのプロトタイプを展示。現地での説明担当者は《風傳媒》の取材に応じ、「当初は自動車の板金および車体構造の製造に注力していたが、社内で専門のカーボンファイバー部門を設置し、無人機部品の製造を試みた」と語った。構想からテストまではわずか5ヶ月で仕上げたという。「当初は全機体の販売を目指していなかったが、今回のプロトタイプを通じて無人機製造力を示したい、特にカーボンファイバー製のプロペラが今回の目玉です」と強調している。
担当者によると、現在開発中のこの機体に搭載されるプロペラは、Topiaが独自に製造しており、重さは約500グラム。将来的にはさらなる軽量化が見込まれているほか、航続時間の改善も期待されているという。従来のプロペラとは異なり、Topia製のカーボンファイバー製ブレードは鉛を追加したり、手作業でバランスを調整する必要がない。「ブレード自体に安定したバランスが備わっており、従来のような加工調整は不要だ」と説明した。 現状、プロトタイプのバッテリーとモーターはまだ開発段階にあり、飛行試験は未実施の状態だ。今後は各コンポーネントの製品化を順次進めるとともに、特にプロペラのサプライチェーン構築を最優先に取り組む考えだという。
Topiaが初めて自社開発のカーボンファイバー製ドローンを展示した。(撮影:黄信維)
SoftBankとNokiaの協力 ドローン遠隔対応プラットフォームを推進 日本の大手企業SoftBankはNokia と提携し開発したドローンと自動化ドッキングステーションのソリューションを展示し、遠隔監視や緊急対応分野での応用可能性を強調した。SoftBank の担当者によると、このシステムはすでにベルギーやスイスの消防や警察で実際に配備されているが、日本国内ではまだ正式導入されておらず、市場の反応を見ながら普及の可能性を評価しているという。 この無人機ソリューションは主に監視や警戒に用いられ、例えば火災の発生前に熱源を監視することで警戒効率の向上に寄与するという。
現地担当者は、システムが高度な自動化やAI統合をサポートしているものの、具体的な機能は利用者のニーズに合わせて調整が必要だと説明。利用目的に応じて最適なブランドやモデルを提案しており、特定の機種を推奨することはないとした。ネットワーク環境については、現時点で4G/LTEが主に利用されており、5Gの全面的なサポートには至っていない。しかし通信事業者としてのSoftBank は「日本全国で利用可能な通信基盤の構築」を目指し、無人機システムと通信インフラのさらなる統合を進めている。将来的にはドローンをIoTプラットフォームの一部として位置付けることを視野に、全国規模の運用プラットフォームの構築を目指している。
SoftBankとNokiaが無人機と自動化ドッキングステーションソリューションを共に開発した。(黃信維:撮影)