中国籍配偶者1.2万人が除籍危機 国台弁が猛反発「人倫に反し、道義を失っている」

2025-06-12 14:30
陸委会が1万2000名の中国籍配偶者に対し、「原籍喪失証明」の提出を要求。3か月の期限が迫る中、現在、提出を済ませたのは3000件余りにとどまっている。(写真/顔麟宇撮影)
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米中のロンドン協議が続く中、両国関係に一時的な前向きの兆しが見え始めている。6月10日、中国商務部の国際貿易交渉代表を務める李成鋼氏は、6月5日の首脳電話会談とその後のジュネーブ会談で交わされた合意を実行に移すため、米中が原則的な枠組みに達したと発表した。中でも注目されたのが、会談中に話題となった台湾問題だ。

11日午前には、中国国務院の台湾問題を担当する機関が記者会見を開き、報道官の朱鳳蓮氏が「台湾問題は中国の核心的利益の中でも中核にあたる。米中関係のなかで、最初にして決して越えてはならないレッドラインだ」と強調。「民進党政権と『台独』勢力は一方的に独立を模索し、外部勢力と連携して挑発を繰り返している。これこそが台湾海峡の平和を脅かす元凶だ」と非難した。

さらに米国に対し、「中国の一つの原則および米中の三つの共同声明を厳守するよう求める。『台独』勢力を支持しないという約束を実行に移し、誤ったシグナルを送ることがないよう慎重に対応すべきだ」と述べ、米側の対応を牽制した。

この日の会見では、朱鳳蓮氏が「台独」という表現を以前よりも多用。特に、台湾で進むリコール運動や、中国籍配偶者約1万2000人に関わる「追加書類問題」に対して強く言及した。

アメリカと中国、2025年5月にスイスで貿易交渉。アメリカ財務長官ベセント(左一)、アメリカ貿易代表グリール(左二)、中国副首相何立峰(右一)、中国国際貿易交渉代表李成鋼(右二)が交渉のテーブルに付く。米中関係、中美関係、貿易戦争、関税。(アソシエイテッド・プレス)
2025年5月、スイスでの米中貿易交渉。アメリカのベセント財務長官(左端)とグリール貿易代表(左から2番目)が、中国の何立峰(か りつほう)副首相(右端)と李成鋼(り せいこう)国際貿易交渉代表(右から2番目)と交渉のテーブルについた。米中関係、貿易戦争、関税。(AP通信)

中国籍配偶者への追加書類要求「人倫に反する」と国台弁が批判

台湾の大陸委員会(陸委会)は以前、中国籍配偶者1万2000人に対して、いわゆる「原籍証明書」の追加提出を求めた。期限は3か月で、すでに3000人あまりが対応を終えたものの、多くの人が証明書を用意できずにいる。提出できなければ、台湾での戸籍が無効になる可能性があるという。

これに対して中国側の国台弁は、「台湾で生活し、働いている彼らは、台湾住民と同様に公正な待遇を受けるべきだ」とし、民進党政権を厳しく批判。「長年にわたり中国籍配偶者を差別し、行政・司法手段を濫用して圧迫している。これは人倫に反する行為であり、『台独』を推進するための非道なやり方だ」と非難した。さらに、国台弁は「今後は事実と法律に基づいて、民進党政府に協力し中国籍配偶者を迫害する行為に加担した者に対して、法的責任を問う」とも表明している。

この問題と並行して注目されているのが、中国で大学教員を務める張立斉氏が台湾の「住民定住証」を取得していたことを理由に、民進党系の勢力が彼の台湾の身分を取り消した件だ。これは定住証を巡る初の摘発案件とされる。

国台弁はこの件について、「定住証は長年運用されており、中国に一時的に定住する台湾住民に対して発行されるもの」と説明。そのうえで、「定住証保持者は、期限内に公安機関で正式な手続きを行わなければならない。そうでなければ登録は無効になり、証明書も失効する」と強調した。

以前から、定住証の取得には一定の基準があり、手続きも外部で言われているほど迅速ではないと指摘されていた。こうした背景から、一部ではこの問題が政治的な道具として利用され、選挙に向けた「支持率アップのカタリスト」となっているとの見方もある。