米国・日本・台湾が参加する軍事演習「台湾海峡防衛机上演習」が6月11日、2日目に突入した。主催は台北政経学院。今回の演習は、中国人民解放軍による台湾全面侵攻を想定したシナリオで進行した。初日の演習では、台湾側が中国軍の艦艇や軍用機が12海里内に進入しても無反応だった。しかし2日目には一転し、反撃に転じ、米日両国との連携を模索する動きが見られた。これに対し、演習を統括する管制組は「学習の成長曲線が非常に速い」と高く評価している。
初日の段階で台湾側は、いわゆる「グレーゾーン」の侵入に対し明確な反応を示さず、管制組から厳しい指摘を受けていた。夜間の間に対策を練るよう求められ、翌朝には新たな対応策を提示した。
具体的には、台湾側は中国軍による海上封鎖への対抗措置として、2つの脱出航路を計画。1つは東北ルートで、琉球諸島南を通り与那国島へと到達するルート。日本領海を経由し、日本側の海軍護衛隊が同行する。もう1つは南部ルートで、米日と会議を行ったうえで、アメリカ軍がフィリピン近海から護衛を提供するという案で、1日あたり55回の航行が想定されている。
演習中、中国側の攻撃シナリオも詳細に組まれている。第1波では戦闘指揮所やミサイル基地、レーダー施設などを攻撃。第2波では空港の滑走路や電力施設、LNG受け入れ施設が標的となり、さらに第3波では主要インフラ(道路、橋梁、トンネルなど)を破壊し、東部海岸からの上陸作戦に移行するというものだ。
シナリオ上では、2030年6月10日午後11時、中国国務院新聞弁公室が声明を発表。台湾軍に対し武装解除と代表派遣を要求し、翌11日午後6時までに統一交渉に応じるよう通告している。

台湾側、ようやく動く 監視組から「大きな進歩」と称賛
こうした緊迫の中、台湾側の対応にも進展が見られた。無人艇を北部に80隻、東部に50隻、南部に70隻と分散配備し、海軍は浜辺への機雷設置を進め、空港滑走路の復旧作業も続行中。また、陸軍は蘭嶼・緑島への特遣隊を編成し、空軍のIDF戦闘機4機が敵拠点を爆撃した。
さらに、特殊部隊が上陸敵部隊の掃討に動き、第三作戦区域(蘭陽)を本島防衛の要と位置付けて戦線を構築。北宜公路や雪嶺トンネルにも阻止施設を設置するなど、防衛網の強化が図られている。
このような一連の対応に、管制組は「台湾側が東部からの上陸という奇襲シナリオにも備え始めたことは、大きな進歩」と評価。「米日との連携や思考の広がりを見せたのは戦略的に意義が大きい」と述べた。
また、政府に対しては「国家の品位を損なわずに国民の安全を守る方法」についての検討を呼びかけ、軍や政府機関に対し、参考となるような提案の提出を求めている。
編集:田中佳奈
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