台北政経学院基金会(TSEF)は、同基金会の黄煌雄(ファン・ホアンション)董事長と和平与安全中心(CPAS)の李喜明(リー・シーミン)執行長が、近年の台湾海峡をめぐる緊張の高まりを受け、6月10日から11日にかけて、政治大学公企中心において「台湾防衛兵棋推演(Taiwan Defense TTX)」を開催すると発表した。今回の演習には、米国および日本の退役将官4名が参加する予定で、シナリオは中国によるグレーゾーンでの威嚇から始まり、次第に状況がエスカレートし、台湾の離島への攻撃、そして最終的には本格的な侵攻へと至る四段階で構成される。
基金会によれば、この演習の目的は、国内外の退役将官や国防分野の専門家の知見を集約し、2030年時点で国軍の戦力整備が完了していることを前提に、中国による武力行使に直面した際の軍事戦略および作戦構想の妥当性と実行可能性を検証することにある。同時に、台湾が強化すべき国防上の課題を明らかにし、政府の参考とすることを目指している。
基金会によると、今回の兵棋推演(ウォーゲーム)はCPAS執行長の李喜明氏が主導し、米国および日本から4名の退役将官を招いて実施される。参加者には、米国の元統合参謀本部議長マイケル・マレン上将(Admiral Michael Mullen)、元太平洋軍司令官デニス・ブレア上将(Admiral Dennis Blair)、日本の元統合幕僚長の岩崎茂上将(General Shigeru Iwasaki)、元海上自衛隊幕僚長の武居智久上将(Admiral Tomohisa Takei)らが含まれ、いずれも台湾に来訪し、推演および討論に直接参加する予定だという。
基金会の説明によれば、兵棋推演は「管制組」「中国(紅)組」「台湾組」「米国組」「日本組」の5チームに分かれ、テーブルトップ・エクササイズ(Table Top Exercise, TTX)の形式で行われる。管制組の主導のもと、中国によるさまざまな威嚇・挑発・侵攻シナリオを通じて、台湾組の対応能力を検証するとともに、米国組および日本組が台湾支援にどのように関与するか、または関与しないかについても評価される。

基金会によると、日本チームには、2名の元自衛隊上将に加え、元国防部副部長の張冠群上将も参加する。また、「紅組」(中国側)には、元陸軍司令官の徐衍樸上将、元参謀本部情報次長室情報研究センター主任の王紹華中将、中共軍事を専門とする学者である馬振坤博士が加わるほか、元空軍副司令官の傅慰孤中将が顧問として参加する予定である。
同基金会は、本兵棋推演の全体的なシナリオ設計を中華戦略および兵棋協会に委託しており、推演はCPASの李喜明執行長と、同協会理事長の黄介正氏が管制組として統括する。推演は、あらかじめ設定された目標およびシナリオに基づき4段階に分けて実施される。中国によるグレーゾーンでの騒擾(そうじょう)から始まり、段階的に緊張が高まり、離島への攻撃を経て、最終的には台湾本島への全面侵攻に至る内容となっている。演習終了後には「事後検討(After Action Review, AAR)」を行い、その後に国際記者会見が開かれる予定である。
さらに、基金会は今回の兵棋推演に「指導組」を設置し、行政院長や国防部長、参謀総長、国家安全会議秘書長などの元政府高官を招き、指導を受ける予定だと説明した。また、政府の「全民国防」政策の推進に呼応し、国内メディアの幹部、戦略研究関連の研究機関・シンクタンクの学者・専門家、大学院生らを見学者として招くことも計画している。
今回の兵棋推演は、台湾の民間団体による初の「作戦レベル(operational level)」での両岸軍事衝突を想定したものであり、国内外から計9名の上将と8名の中将が一堂に会し、台湾海峡の安全と地域の平和・安定に向けた戦略的議論を行う場となる。参加者の軍事的背景においても、これまでで最も高いレベルの推演となる見通しだ。 (関連記事: 米国の軍事戦略が転換 元将軍・呉氏「台湾有事でも介入は保証されず」 | 関連記事をもっと読む )
編集:柄澤南
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