スポーツから介護まで。筑波大発AIベンチャーが切り拓く「動作解析」の未来

2025-06-08 15:09
SportipのAIは写真や動画から体の歪みを検知し、姿勢異常を予測。個別に最適化された運動プログラムも提案する。(写真/黃信維撮影)
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筑波大学発のテックベンチャー・Sportip(本社:東京都文京区、代表取締役:髙久侑也氏)は、AIによる高精度な動作解析技術を武器に、スポーツ、フィットネス、リハビリ、介護といった多分野で事業を広げている。2018年の創業以来、「すべての運動指導をAIで代替する」というビジョンを掲げてきた。

SportipのAIは写真や動画から体の歪みを検知し、姿勢異常を予測。個別に最適化された運動プログラムも提案する。(写真/黃信維撮影)
SportipのAIは写真や動画から体の歪みを検知し、姿勢異常を予測。個別に最適化された運動プログラムも提案する。(写真/黃信維撮影)

中核をなすのは、スマートフォンだけで完結するリアルタイムのエッジAI解析。姿勢や関節の動きを145か所・六次元で計測し、2億円相当のモーションキャプチャ機器と同等の精度を実現している。大規模で多様な動作データをベースに、独自のアルゴリズムを構築しているのが特徴だ。

保有する動作データは1000万件を超え、年齢や性別、競技種目、疾患別に分類されている。たとえば、野球肘、脳梗塞、人工股関節、血行障害といった症例もカバーする。SLAMやバイオメカニクスの専門家、Preferred Networks出身の研究者など、技術陣の層も厚い。

展開するサービスは大きく三つに分類される

一つ目は「Sportip Studio」。医師や理学療法士、トップアスリートなどと連携し、企業や自治体向けに課題発見から開発、運用までを一貫して支援する。

二つ目の「Sportip Pro」は、スマホで高精度な三次元姿勢解析を行うSaaS型サービス。可視化や重心、筋肉の状態、角速度などの指標に対応し、診断から改善提案、トレーニング内容の最適化までを自動でサポートする。

三つ目の「リハケア」は介護・医療現場向けアプリで、TUGやCS-30、ROM、HDS-Rなどの評価指標に対応。運動プログラムの立案や報告書作成、加算申請までをワンストップで行える。姿勢や口腔機能、嚥下機能の解析も可能で、現場の負担を軽減しつつ、質の高いケア提供を支援している。

そのほかにも、体型測定AI、筋骨格モデルAI、音声解析AI、生成AIなどのモジュールをAPIやSDK形式で提供しており、企業のニーズに合わせた導入もスムーズに行える。

Sportipは「誰でも、どこでも、いつでも」最適な運動指導を受けられる社会を目指し、AI×サイエンスの融合による革新を加速させている。

​編集:田中佳奈

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