韓国新政権》台湾問題に慎重姿勢 李在明政権、米中・日との関係構築に注目

2025-06-05 15:54
2025年6月4日、韓国の新大統領に就任した李在明氏とファーストレディの金恵景(キム・ヘギョン)氏が大統領就任式に出席した。(AP通信)
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2025年6月3日、韓国の第21代大統領選挙が実施され、「共に民主党」の李在明氏が得票率49.42%で「国民の力党」の金文洙氏を破り当選した。3年ぶりの政権交代となる。投票率は28年ぶりの高水準を記録し、李在明氏は3度目の挑戦で1,728万票を獲得。これは歴代大統領選で最多となった。

米中の覇権争い、北朝鮮の軍事的脅威、そして国内の分断という課題の中で、李氏がどのように新たな外交のかじ取りをするかに注目が集まっている。韓聯社と米シンクタンク「大西洋協会」は、李氏の今後の外交スタンスについて詳しく分析している。

アメリカ、李氏当選を歓迎 「揺るぎない同盟」維持を強調

アメリカは、インド太平洋戦略において韓国を最重要同盟国の一つと位置づけており、トランプ政権は李在明氏の当選に対して迅速に祝意を示した。米韓日3カ国の安全保障と経済連携をより深める姿勢も強調された。

米国務長官兼国家安全保障顧問のマルコ・ルビオ氏は、「相互防衛条約、価値観、そして経済的な結びつきに基づいた揺るぎない同盟」だと評価。一方で、ホワイトハウス関係者は韓聯社の書面インタビューで、「韓国が自由で公正な選挙を行ったことは評価するが、中国が民主主義国家への干渉を強めている現状には懸念がある」とコメント。中国の影響力拡大に対して警戒感を示した。

2025年6月4日、韓国大統領李在明が政党リーダーとの会談時に発言。(AP通信)
2025年6月4日、韓国の李在明大統領が政党リーダーとの会談で発言した。(AP通信)

​かねてからトランプ政権は、韓国などの同盟国が「安全保障はアメリカ、経済は中国」という“安米経中”の方針を取ることに懸念を示していた。国防長官のピート・ヘグセス氏は5月31日、シンガポールのシャングリラ対話で「中国と経済協力を進める一方で、アメリカとも軍事的な連携を求める国が増えている」と発言。こうした動きが中国に利用される可能性を指摘した。

一部の見方では、アメリカは李政権に対して、同盟関係を明確に打ち出すことで中国との距離を取るよう、間接的な圧力をかけているとされる。

外交面で李氏が直面する最大の試練は、アメリカの保護主義的な貿易政策と、北朝鮮やロシアとの軍事協力の強化とされる。しかし専門家たちは、どの候補が当選しても、これらの問題に大きな進展を見せるのは難しいと分析。李氏自身も、就任演説でアメリカとの通商問題には直接言及しなかった。

外交路線:米中朝の間で現実的なバランスを模索

李氏は就任演説で、韓米同盟を基盤に「強力な抑止力」で北朝鮮の挑発に対応する方針を示した。ただ一方で、北朝鮮との対話も再開し、朝鮮半島の平和構築に取り組む姿勢を見せた。彼の外交スタイルは、現実主義に基づいた柔軟な調整を志向しているとみられている。

成均館大学で政治学を教える曹成敏氏(大西洋協会インド太平洋シニアフェロー)は、李在明氏の外交方針は、保守派の尹錫悦氏とは対照的で、むしろ同じ「共に民主党」の文在寅元大統領に近いと指摘。北朝鮮との対話重視、中国との安定した関係維持を軸にしているという。