2025年のハーバード大学卒業式で、中国青島出身の蔣雨融(Yurong "Luanna" Jiang)さんが中国伝統衣装をまとい、学生代表として演説を行った。ハーバード大学およそ400年の歴史の中で、初めて卒業式の壇上に立った中国人女性として、会場から熱い拍手を浴びた。しかし、演説の映像がネットで話題になると、彼女の家族背景や入学経緯について疑問や議論が巻き起こった。
ネット上では、蒋雨融さんの父親・蒋志明氏が中国生物多様性保護とグリーン発展基金会(略称:緑発会)の特別基金執行主任を務めていることから、父親の人脈を通じてハーバード大学に入学したのではないかとの指摘が上がった。また、彼女が語った「家庭環境の崩壊」や「いじめ被害」といった過去についても、一部からは「同情を引くための誇張ではないか」との声が上がっている。
これに対して、蔣雨融さんは6月2日夜、SNSで投稿し、自分は中国のパスポートを所有しており、どの外国のグリーンカードや身分も持っていないと強調した。ハーバード・ケネディスクールの修士課程に応募する際には、デューク大学での卒業論文指導教授やクレディ・スイスでの上司からの推薦状を3通提出したと述べ、緑発会からも推薦状をもらったが、規定で3通までしか提出できなかったため、使用しなかったと説明した。学費については、自分の貯蓄から払ったと述べた。
緑発会公式に声明を発表、父親はボランティア
中国緑発会の周晋峰事務局長は微博上に「中国緑発会政策研究室」名義の声明を掲載し、同会で活動するボランティアは基本的に推薦状を受け取ることができ、その多くが名門大学への進学を果たしていると説明。声明では、推薦状の発行は公益寄付とは無関係であり、蒋雨融氏への推薦は完全に規定に則ったものであると強調した。また、蒋氏の父親も緑発会のボランティアに過ぎず、職員ではなく公務員でもないとしている。

また、蒋雨融さんは自身の成長過程を振り返り、幼い頃に両親が離婚し別居していたことや、中学時代に深刻ないじめを受けた経験があることを明かした。高校2年の時には、英国で最も学問的に厳しいとされる高校に合格し、その後、イギリスのウォーリック大学で政治・経済・哲学を専攻。優秀な成績を収め、アメリカのデューク大学へ編入したという。自身について「他の人よりも恵まれていることは自覚している。家庭には海外で4年間の学部課程を支える経済力があった」としながらも、「ハーバード大学での大学院進学は、自分が卒業後に働いて貯めた全ての貯金でまかなった」と語っている。 (関連記事: 舞台裏》トランプ氏、ハーバード台湾留学生に圧力 教育部長に救い求める声も──頼清徳政権の対応は? | 関連記事をもっと読む )
最近では米国の華字紙の『星島日報』のインタビューに応じ、卒業式でのスピーチを志した理由について「卒業生を代表して発言するのは大きな名誉であり、また不確実な時代だからこそ、この場を借りてより深い思索を伝えたかった」と説明。スピーチ選考は3月に始まり、原稿はすべて自身で執筆したとし、特定の人物や出来事を念頭に置いて書いたものではないと強調した。一部でスピーチ内容がトランプ氏への当てこすりではないかと憶測されていることについては、「彼のためにわざわざ反応する価値は感じない」と述べた。