李志堯の見解》米軍は台湾海峡戦争を援助しない─それはなぜか?

2025-06-03 14:04
写真は米軍F-16とフィリピンFA-50戦闘機が並んで飛行演習を行う様子。(米軍DVIDSシステムから引用)
写真は米軍F-16とフィリピンFA-50戦闘機が並んで飛行演習を行う様子。(米軍DVIDSシステムから引用)

国防部長の顧立雄は最近のインタビューで、アメリカのアジアにおける軍事力と同盟を利用し、北京に戦争の恐ろしい経済的代償を警告することにより、中国本土を抑止できると述べた。顧立雄は今回の最も包括的な海外メディアとのインタビューで、中国の台湾侵攻の鍵をコストと利益の計算に簡略化し、アメリカ大統領のトランプの商人的な思考に合致しているものの、中国の領土主権へのラインを明確には理解しておらず、東西の軍事力の巨大な変化も考慮していないことを示している。顧部長のこうした国防戦略の思考は議論の余地があるかもしれない。

まず、1949年以降の北京の8回の対外軍事行動を振り返ると、どれも超大国の介入の可能性によって後退したものはない。その中にはアメリカとソ連の両国との正面衝突が2回あった(すなわち1950年の朝鮮戦争と1969年の珍宝島の戦い)。1955年初めの大陳島の戦いも、台湾とアメリカが軍事防衛条約を締結した直後(1954年12月)に起こった。また、1979年2月の「懲越」戦争は、ベトナムとソ連が軍事同盟条約を結んだ直後(1978年末)に発動された。金門砲戦(1958年)、中印国境戦争(1962年)、中越西沙の戦い(1974年)も同様に、超大国が後ろ盾となっている相手国との戦争であった。

注目すべきは、これまでの8回の戦争は、北京が警告なしに宣戦布告もなく発動してきたことであり、これは中国が領土主権問題を政治的に考慮し、予測が難しいものであることを示している。言い換えれば、中国が軍事攻撃を発動するかどうかは、意思やタイミングではなく必要性に依存するということだ。中国がもし必要だと考えれば、例えば台湾の独立宣言に対し、他の条件が不利であっても攻撃を躊躇なく行うであろう。これは中国の一貫した「千の軍を失っても、一寸の土地も失わぬ」という政治的な強硬立場を反映している。 (関連記事: 論評》波風立たぬ無風はなし、米債危機は各国に試練 関連記事をもっと読む

次に、最近の米軍の海外軍事行動を観察すると、航空母艦戦闘群による兵力や火力の投射が主流となっている。航空母艦の艦載機F-18の作戦半径は1026キロメートル、F-35(ステルス戦闘機)の作戦半径は1080キロメートルである。共軍の東風21D対艦弾道ミサイルの射程は2000キロメートル、東風26対艦弾道ミサイルの射程は4000キロメートル、東風27対艦弾道ミサイルの射程は5000キロメートル以上であり、米軍の航空母艦はこれらの三層の攻撃網を突破して台湾に接近するのは容易ではない。どうやって兵力を派遣して台湾を援護するのか?さらに中国は2020年に4発の地上発射型対艦弾道ミサイルを発射し、そのうち2発は成功裏に西沙海域の移動標的船に命中したことが確認されており、共軍の対艦弾道ミサイルは数千キロメートル先の海上移動目標を攻撃できることが証明された。終端速度が10マッハの極超音速であるため、米軍のスタンダード2型やパトリオット3型対ミサイルでは迎撃できない。もし航空母艦が沈没すれば、その艦上にいる米国の6000家族の子供たちが犠牲になる。その場合、トランプ大統領ほど強硬な人物であっても、その巨大な政治的反動を耐えることはできないであろう。

最新ニュース
21世紀の真珠湾攻撃は宇宙から?米将軍「中国は台湾侵攻前に奇襲も」
「協定を破ったのは誰か?」米中が「合意違反」を巡り応酬 レアアース・関税・台湾発言で緊張再燃
米中再び緊張、トランプ氏「穏便に済ませない」 レアアース輸出停止で合意破り批判
中国無人機が台湾東方沖を旋回飛行 空母「遼寧」は監視圏外に?日本も警戒強化へ
ロシア版「真珠湾攻撃」 ウクライナ無人機が戦果、ロシア軍極東基地まで爆撃
論評》波風立たぬ無風はなし、米債危機は各国に試練
北京観察》台湾サイト「海棠文学城」作家大量拘束 同性愛小説で刑事処分の恐れ
フジロック開幕に向け「FUJI ROCK WEEK」開催へ、都内・関西でプレイベント続々 公式グッズ第2弾も販売開始
中国・大連で日本人2人殺害 容疑の中国人男を拘束、ビジネストラブルが背景か
「我が巨人軍は永久に不滅です!」長嶋茂雄氏、89歳で逝去 「ミスタープロ野球」が歩んだ伝説の生涯
チームラボ、身体ごと没入するアート体験を追求 新たなミュージアムも開業
トランプ「解放日」の混乱、苦い結果が到来!米国4月商品輸入が20%暴落、記録開始以来最大の下落幅
ゼレンスキー大統領の和戦戦略!和平案発表直前に117機ドローンでロシア爆撃機を攻撃
米造船業の凋落はなぜ?建造費アジアの5倍高、トランプ政権の復活戦略は
【新ニュース】がんは年齢を選ばない、予防対策が急務 若年性大腸がん増加の真因が判明
中国が台湾に攻めれば「世界破滅」 米国防長官が異例の強硬メッセージ
張鈞凱コラム》反共は正義、「親共」は死すべきか?
台湾ドル急騰の黒幕判明 中央銀行が異例の声明6本発表
2025年「日台観光サミット in 鳥取」開催 台湾からの訪日客が最多更新、『鳥取宣言』も発表
「2025日台観光サミットin鳥取」開催 米子~台北直行便が同時就航、官民連携で日台観光が新段階へ
エコノミスト誌が米政府を批判:台海政策に安定性欠く、トランプ氏「退任後に中国が台湾を奪取」と発言
2025年世界都市ランキング 日本は東京9位、京都100位、台北は60位に
評論》「台湾人」に「中国人」と主張する自由はあるのか?──民進党政権の処分方針に波紋
トランプ氏の賭け:「アジアの5倍コスト」でも米造船業を再建できるか
舞台裏》トランプ氏、ハーバード台湾留学生に圧力 教育部長に救い求める声も──頼清徳政権の対応は?
台湾海峡の緊張に懸念 シンガポール国防相「未来を語り合うべき」
イーロン・マスク氏「薬物依存」疑惑 NYTが実名報道、本人は全面否定
石垣島〜台湾・基隆の定期フェリーが9月就航へ 片道1万円から、週3便運航
TSMCが中東進出へ? UAEと複数回協議、中東に「第2のアリゾナ工場」構想浮上
半導体サプライチェーン3》AIブームがサプライチェーンの再編を推進 台灣企業が現れる最有力候補を考察
半導体サプライチェーン2》ゴールドマン・サックスからマッコーリーまで 米中対立下での台湾投資戦略を法人評価で一文解説
半導体サプライチェーン1》米中対立下における半導体サプライチェーン再編成 米日欧代表と台湾企業の大計画
チエさんインタビュー:夢だった日本生活、そして「好き」が仕事になるまで
台湾映画『余燼』、慶應義塾大学で特別上映──記憶と加害の問いをめぐる白熱討論
仏教はAIとともにどう歩むか?熊谷誠慈教授が語る、信仰とテクノロジーの可能性
独占インタビュー》2025年「台湾映画上映会」が大学に拡大開催 林家威監督と曾鈐龍センター長が語る
台湾文化センター主催「台湾映画上映会2025」が日大で開催、映画『タイペイ、アイラブユー』上映後には監督と批評家が登壇へ
『猟師兄弟』で『セデック・バレ』俳優が再共演 「台湾映画上映会2025」2作品でトークイベント実施へ
Lynnさん語学ゼロからBEAMS就職 日本で奮闘の日々
スターラックス航空、台北〜オンタリオ直行便を新規開設 初便搭乗でソニー最新イヤホン贈呈も!
大湖いちご・三義老街を超えた! 苗栗で最も人気の観光スポットに35.4万人、「美食天国で行く価値大」
トランプ関税撤回で台湾は危機回避?米貿易法院が大統領権限に制限、専門家が「最強者」の次の一手を分析
賴総統、訪米国議員に購買リストを提示 米国メディアが特別報道
阿里山より凄い! 台湾で一番の観光列車が話題、地元民も絶賛「必見コース」
【サマーソニック2025】8月16日・17日に東京・大阪で同時開催!
日本での11年、理想と現実の間で見つけた道──台湾出身・歩小心さんが語るキャリアと挑戦
IAEAが福島第一を再訪問 ALPS処理水の監視体制を現地確認
海外赴任は割に合わない?EY調査で明らかになった待遇ギャップ
デンソー×ロームが半導体強化 戦略的パートナーシップで合意
【プロ野球】「マイナビオールスターゲーム2025」のプラクティスユニフォームデザインが決定