評論》「台湾人」に「中国人」と主張する自由はあるのか?──民進党政権の処分方針に波紋

2025-06-02 16:22
旺旺グループ総経理蔡旺庭氏が両岸メディアサミットで「我々は中国人だ」と述べ、大陸委員会は「法に基づいて対処する」と声明した (ビデオスクリーンショット)
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端午節が過ぎたばかり。旺中集団の創設者である蔡衍明​氏は、「我本將心向明月,奈何明月照溝渠(私の心は明月に向かっているが、明月は溝に照らしている)」という深い感慨に浸っていることだろう。彼は先日フェイスブックに投稿し、野党の国民党と民衆党に対し、頼清徳総統の「両岸企業買収論」を認め、支持と協力を与えるよう呼びかけた。しかし、陸委員会は直後に厳しい声明を出し、旺中集団が中国による統一戦線に加担し、国家の主権を侵害しているとして「法律に基づいて処分する」とまで表明した。

蔡旺庭氏の「祖国論」が民進党の痛点を突く

​蔡衍明氏の三男である蔡紹庭氏が両岸文化サミットで話した内容が、波紋を呼んでいる。「旺旺は中国台湾から始まり、祖国大陸で発展した。私たちは自分のルーツ、歴史、文化、血脈、そして使命を決して忘れてはならない。私たちは中国人であり、祖国からの様々な支援に感謝し、祖国の市場発展の利益に感謝しながら、文化の伝承における責任と使命を銘記している」と述べた。この発言は、北京を非難する陸委員会と台湾独立支持者たちの怒りを買ってしまった。陸委員会は以前から、メディアや文化交流を名目に台湾のメディア関係者や文化人を北京に呼び出して「説教するような行為は政府が望んでいない」と公表していた。

旺中集団以外にも、民進党の中国部は昨年の中国共産党「十一国慶節」や今年3月の全国人民代表大会の期間に「祖国生日快樂(祖国の誕生日おめでとう)」「中国台湾必歸(中国に帰すべし)」と書かれた画像をシェアした12人の芸能人を名指しで非難した。陸委員会の邱垂正主任委員はすでに文化部と協力して「行政調査」を始めたことを認めており、沈有忠副主任委員は立法院で、20数名もの台湾人芸能人が調査対象になっていることを発表した。この人数は民進党の中国部が名指しした人数よりも多い。民進党はこれを言論の自由を制限するものではなく、「自由が専制的な言葉によって乗っ取られないための必要な防衛線」だと主張している。

この「処分の嵐」は、今後を占う重大な前兆と言えるだろう。論争の核心は次の点にある。

一、台湾人は中国人か?

二、台湾人には自分を中国人だと認める言論の自由や思想の自由があるのか?

三、民進党の中国部は(まるで中国共産党のように)「党が政治を指導する」形で陸委員会の政策実行を「指導」しているのか?

四、「国家統一前」の「任務機関」としての陸委員会の仕事は、交流を促進することなのか、それとも交流を妨げることなのか? (関連記事: 【大阪】台湾独立派の団体代表、大阪・関西万博の中国館前で「一中一台」と訴え 関連記事をもっと読む

「台湾人」は「中国人」なのか?

まず、「台湾人は中国人か?」という議論は長い間続いている。「台湾人」という呼び方自体には問題はないが、「台湾」は国家なのか?という問題がある。正確には、台湾は地名で、国家としての正式名称は「中華民国」「台湾人は中国人である」と主張する際の「中国」は、法的な「中華民国」の略称として使われることもあれば、文化的な「中国」として、中華文化の歴史発展を指すこともある。一方で、「台湾は中国人ではない」と主張する際の「中国」は、政治的な「中華人民共和国」を指し、「中華民国」のことではない。この点から見ると、憲法や法律に違反しているのは旺旺集団ではなく、陸委員会ということになる。