21世紀の真珠湾攻撃は宇宙から?米将軍「中国は台湾侵攻前に奇襲も」

2025-06-03 17:35
1941年12月7日、日本がハワイの真珠湾を攻撃。(AP通信)

アメリカ空軍第412試験航空団の指揮官であるダグ・ウィッカート准将は、カリフォルニア州のアンテロープバレー・カレッジで行った講演の中で、中国が台湾への武力侵攻の戦略の一環として、アメリカに対して真珠湾攻撃のような奇襲を仕掛ける準備を進めていると警告した。

この講演は、エドワーズ空軍基地の軍民支援チームとアンテロープバレー・カレッジの共催で行われたもので、軍民協力の構築を通じて、北京による重要インフラ攻撃などに伴う公共サービスの中断への対応をテーマとしていた。講演の中でウィッカート准将は、中国人民解放軍の急速な近代化の実態を明らかにし、Google Earthの衛星画像を用いて、ゴビ砂漠に設けられた試験訓練基地を紹介。そこには、台湾・台中にある清泉崗空港を等比で再現した模擬施設まで建設されており、「彼らの意図は極めて明白だ」と強調した。

ゴビ砂漠の別の区域には、フォード級航空母艦や、弧状の軌道上に配置されたアメリカ海軍艦艇の模型も設置されており、ウィッカート准将は、これらの施設は明らかに艦艇による弾道ミサイル回避戦術の訓練を目的としたものだと指摘した。また彼は、中国人民解放軍が昨年12月と今年3月に実施した2度の台湾包囲を想定した実弾演習に特に強い懸念を示した。中でも昨年12月の演習は、第二次世界大戦以降で最大規模の海上戦力展開となったという。ウィッカート准将は、「これらの演習内容は、もはや実戦に限りなく近い侵攻シミュレーションであり、一時は実際に侵攻が始まったかのような態勢に見えた」と警告した。

美軍第412測試聯隊指揮官維克特准將就中國軍事現代化發表演說。(翻攝愛德華茲空軍基地官網)
米空軍第412試験航空団の指揮官であるウィッカート准将が、中国の軍事近代化に関する講演を行った。(エドワーズ空軍基地公式サイトより転載)

『ナショナル・インタレスト』の分析官ブランドン・J・ワイチャート氏によれば、ウィッカート准将は軍事演習に加え、サイバー攻撃の差し迫った脅威についても強調したという。ウィッカート准将は、中国がすでにアメリカの送電網に侵入しており、電力・通信制御を担うSCADA(監視制御・データ収集)システムにマルウェア(悪意のあるソフトウェア)を仕込んでいると指摘。中国が台湾に侵攻する場合、その初期兆候として、米国内での大規模停電やモバイル通信網の麻痺、さらには銀行記録や金融データなどの重要情報がハッキングにより改ざんされる恐れがあると警告した。
また彼は、2003年に北米で発生し、約5,500万人に影響を及ぼし死者も出た大停電を例に挙げ、「仮に電力網が6カ月も機能しなかったら、何が起きるかを想像してみてほしい」と述べた。 (関連記事: 中国が台湾に攻めれば「世界破滅」 米国防長官が異例の強硬メッセージ 関連記事をもっと読む

ウィッカート准将は、冷戦時代にアメリカ軍がステルス技術や精密誘導兵器によってワルシャワ条約機構に対して優位に立っていた状況とは異なり、現在では米国が中国に対して技術面での決定的な優位を失っていると指摘。「もはや中国人民解放軍を“準同等の競争相手”とは呼ばない。彼らは“完全に同等の競争相手”だ」と強調した。さらに彼は、これらの明確な警告サインを無視することの危険性に言及し、かつて真珠湾の脆弱性をいち早く警告したビリー・ミッチェル准将の先見性になぞらえた。