舞台裏》トランプ氏、ハーバード台湾留学生に圧力 教育部長に救い求める声も──頼清徳政権の対応は?

2025-06-02 15:52
トランプ政権とハーバード大学の対立が続く中、台湾の留学生たちにもその影響が及んでいる。(AP通信)
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米国のトランプ大統領が、ハーバード大学に対して国際学生の受け入れを停止するよう命じたことで波紋が広がっている。5月29日、ボストン連邦裁判所はトランプ政権に対し広範な禁止命令を発し、ハーバードは訴訟中も引き続き国際学生や訪問学者の受け入れが可能となったが、この影響は同大学にとどまらない。

中国、韓国、香港などでも、米国への留学を予定していた学生たちが「ビザ面接の予約ができない」と不安を募らせている。台湾でも同様の声が上がっており、「風傳媒」によると、米国在台協会(AIT)での学生ビザ申請は現在も受け付けられているものの、面接予約の枠が開かれていない状態が続いている。つい最近、米国の有名大学から正式な合格通知を受け取ったばかりの台湾の若者たちは、AITのウェブサイトを毎日のようにチェックし、新たな面接枠が出るのを待っているという。

ハーバード大学はマサチューセッツ州ケンブリッジにある、世界屈指の名門大学。8人の米国大統領を輩出し、台湾の歴代正副総統11人のうち、馬英九氏、頼清徳氏、呂秀蓮氏の3人が卒業生という実績もある。

米国留学は台湾の学生にとって憧れの進路であり、歴代の重要ポストに就いた人物のうち8人が米国で学位を取得している。2024年の米国国際教育機関による報告書では、台湾は米国にとって5番目に多い国際学生の出身地とされており、留学への関心の高さがうかがえる。しかし今、トランプ政権の動きによって学生たちの人生設計が脅かされる事態となり、頼清徳政権がどう支援に動くのか注目されている。

20250520-総統頼清徳20日出席「2025年台北国際パソコン展示会(COMPUTEX)開幕式」。(柯承惠撮影)
台湾の歴代総統の多くが米国留学経験を持ち、現職の頼清徳総統もハーバード大学の卒業生だ。(写真/柯承惠氏撮影)

    ハーバードには52名の台湾人学生、外交部・教育部が注視

    5月29日、ボストンで行われた連邦裁判所の公聴会と同じ日、ハーバード大学では卒業式が行われ、アラン・ガーバー学長が「世界中の学生を歓迎する」と明言。トランプ政権への明確な反対姿勢を示すと、約3万人の聴衆が30秒間にわたって拍手を送った。

    事の発端は5月22日、米国国土安全保障省が「ハーバードは反米的かつテロ支援者を受け入れている」として、国際学生の受け入れを中止するよう指示したことにある。トランプ政権は続けて、学生および交換訪問者登録システム(SEVIS)の認証を取り消し、大学に対する補助金26億ドル(約4,060億円)と契約費1億ドル(約156億円)を凍結。さらには最大30億ドル(約4,690億円)の連邦予算削減までちらつかせた。

    ハーバード側は5月23日にこの措置を違憲とし、ボストンの連邦裁判所に仮差止命令を申請。同27日には教職員らが抗議デモを行い、29日の判断で一時的な勝利を得た形となった。ただし、移民・関税執行局(ICE)はその後も強硬姿勢を崩しておらず、大学に対し30日以内の対応を求め、ユダヤ人差別への対処についての大統領令に違反していると非難している。 (関連記事: 米国が留学生ビザ面接を全面停止へ SNS投稿も審査対象に 関連記事をもっと読む

    教育部によれば、現在ハーバード大学には台湾出身の学生が52名在籍しており、そのうち41名が在学生、11名が今秋から入学予定の新入生だという。外交部や駐ボストンの教育担当者は、5月22日以降、現地の台湾人学生と連絡を取りながら影響を注視しており、学生会とも連携しているとのことだ。