トランプ氏の賭け:「アジアの5倍コスト」でも米造船業を再建できるか

2025-06-02 16:04
「ジョン・F・ケネディ」航空母艦の命名式がバージニア州ニューポートニューズ造船所(HII-NNS)で開催され、ケネディ大統領の娘であり、元駐日大使のキャロラインも出席して証人となった。(米国海軍公式サイト)
「ジョン・F・ケネディ」航空母艦の命名式がバージニア州ニューポートニューズ造船所(HII-NNS)で開催され、ケネディ大統領の娘であり、元駐日大使のキャロラインも出席して証人となった。(米国海軍公式サイト)

米国の造船業は長年にわたり衰退の一途をたどっている。過去10年間、中国は商用船を6,765隻建造し、世界の約半数を占めている。日本は3,130隻、韓国は2,405隻を建造したのに対し、米国はわずか37隻にとどまっている。この現状に対し、トランプ政権はどのように立ち向かうのだろうか。

​『ニューヨーク・タイムズ』によると、フィラデルフィア南郊にある造船所が韓国の造船大手、ハンファグループによって1億ドル(約156億円)で買収された。ハンファ・フィラデルフィア造船所のCEOであるデイビッド・キム氏は、「米国の造船業は再起の準備ができている」と楽観的な見方を示している。しかし、中国と造船分野で競争するのは、今の米国にとって非常に困難であり、多くの海運専門家はあまり期待していない。だが、デイビッド・キム氏と同様に楽観的に考えるアナリストもおり、トランプ政権が成功する可能性があると見ている。ただし、そのためには莫大な数十億ドルもの資金を投入し続ける必要があるという。

キム氏は、米国が造船業の復興を実現するには、造船所に新しい注文が絶え間なく必要であり、連邦政府は造船業に補助金を提供しつつ、外国船を使用する海運会社が米国の港に停泊することを罰する必要があると語る。トランプ大統領は、造船業を支援するために多額の資金を投入すると宣言し、在任中に米国を再び偉大にすると署名した。また、キム氏が言う「外国船使用の罰則」に関しては、今年4月に米国通商代表室も動いており、特定の商用船舶は米国本土で建造し、中国船舶を使用する海運業者を罰することが義務付けられた。さらに、議会は米国造船業を支援するための巨額補助金法案を検討中だ。

問題は、本当にこれで米国の造船業が再び偉大になれるのかどうかだ。世界最大の造船国である中国と比べるまでもなく、韓国の造船大手の一つであるハンファグループと比べても、米国ははるかに劣っているのが現状だ。

​『ニューヨーク・タイムズ』は厳しい現実を指摘する。ハンファに買収されたフィラデルフィア造船所は、新しい注文が2027年まで埋まっており、他の米国の造船所は海軍の注文で生産ラインが占有され、新しい商用船舶の注文を受ける余力がない。しかし、フィラデルフィア造船所のキム氏も認めているように、米国で新しい船を作る時間はアジアの製造速度に全く及ばず、コストは5倍にもなる。フィラデルフィア造船所の年間生産能力は約1.5隻だが、ハンファの韓国にある大型造船所では、1週間で新しい船を建造できるという。コストが高く、速度が遅いとなれば、どの海運会社が米国に注文を出すのだろうか? (関連記事: トランプ氏、EUへの「核弾級」50%関税を警告 電話会談で発動延期に合意 関連記事をもっと読む

ワシントンのシンクタンク、カトー研究所の副所長コリン・グラボウ氏は、造船業再興計画について既視感のような不安感を持つと語る。米国政府は過去にも本土の造船業を推進しようとしたことがあるが、特に1995年にフィラデルフィア海軍基地を閉鎖して造船業を支援しようとした努力は概ね失敗に終わった。米国を行き来する貨物船は依然として中国、韓国、日本に発注されることがほとんどであり、中国の商用船の生産量はここ数年で急増しているため、米議会の議員たちは中国がほぼ揺るぎない戦略的優位を得ていることを懸念している。

最新ニュース
2025年「日台観光サミット in 鳥取」開催 台湾からの訪日客が最多更新、『鳥取宣言』も発表
「2025日台観光サミットin鳥取」開催 米子~台北直行便が同時就航、官民連携で日台観光が新段階へ
エコノミスト誌が米政府を批判:台海政策に安定性欠く、トランプ氏「退任後に中国が台湾を奪取」と発言
2025年世界都市ランキング 日本は東京9位、京都100位、台北は60位に
評論》「台湾人」に「中国人」と主張する自由はあるのか?──民進党政権の処分方針に波紋
舞台裏》トランプ氏、ハーバード台湾留学生に圧力 教育部長に救い求める声も──頼清徳政権の対応は?
台湾海峡の緊張に懸念 シンガポール国防相「未来を語り合うべき」
イーロン・マスク氏「薬物依存」疑惑 NYTが実名報道、本人は全面否定
石垣島〜台湾・基隆の定期フェリーが9月就航へ 片道1万円から、週3便運航
TSMCが中東進出へ? UAEと複数回協議、中東に「第2のアリゾナ工場」構想浮上
半導体サプライチェーン3》AIブームがサプライチェーンの再編を推進 台灣企業が現れる最有力候補を考察
半導体サプライチェーン2》ゴールドマン・サックスからマッコーリーまで 米中対立下での台湾投資戦略を法人評価で一文解説
半導体サプライチェーン1》米中対立下における半導体サプライチェーン再編成 米日欧代表と台湾企業の大計画
チエさんインタビュー:夢だった日本生活、そして「好き」が仕事になるまで
台湾映画『余燼』、慶應義塾大学で特別上映──記憶と加害の問いをめぐる白熱討論
仏教はAIとともにどう歩むか?熊谷誠慈教授が語る、信仰とテクノロジーの可能性
独占インタビュー》2025年「台湾映画上映会」が大学に拡大開催 林家威監督と曾鈐龍センター長が語る
台湾文化センター主催「台湾映画上映会2025」が日大で開催、映画『タイペイ、アイラブユー』上映後には監督と批評家が登壇へ
『猟師兄弟』で『セデック・バレ』俳優が再共演 「台湾映画上映会2025」2作品でトークイベント実施へ
Lynnさん語学ゼロからBEAMS就職 日本で奮闘の日々
スターラックス航空、台北〜オンタリオ直行便を新規開設 初便搭乗でソニー最新イヤホン贈呈も!
大湖いちご・三義老街を超えた! 苗栗で最も人気の観光スポットに35.4万人、「美食天国で行く価値大」
トランプ関税撤回で台湾は危機回避?米貿易法院が大統領権限に制限、専門家が「最強者」の次の一手を分析
賴総統、訪米国議員に購買リストを提示 米国メディアが特別報道
阿里山より凄い! 台湾で一番の観光列車が話題、地元民も絶賛「必見コース」
【サマーソニック2025】8月16日・17日に東京・大阪で同時開催!
日本での11年、理想と現実の間で見つけた道──台湾出身・歩小心さんが語るキャリアと挑戦
IAEAが福島第一を再訪問 ALPS処理水の監視体制を現地確認
海外赴任は割に合わない?EY調査で明らかになった待遇ギャップ
デンソー×ロームが半導体強化 戦略的パートナーシップで合意
【プロ野球】「マイナビオールスターゲーム2025」のプラクティスユニフォームデザインが決定
東大が約70年ぶりに新学部!「UTokyo College of Design」誕生へ
夢を追いかけて日本へ──イラストレーターDoryさんの東京ワーキングホリデー生活記
TICAD9に向けた日本のODA戦略を村上参事官が解説 — 民間連携の重要性を強調
遠洋航海中の「いつくしま」 米沿岸警備隊と連携訓練
イーロン・マスクが「トランプ政府からの離脱」を発表!意見の相違を認める:非常に失望 ホワイトハウスが確認
米国務長官、一部中国人学生のビザを「積極的に」取り消しへ 影響範囲は?
「幽霊署名」が拡大!台北市議・張斯綱氏、個人情報流用の疑いで送検へ
米中AI大戦の行方──鍵を握るのは「速度」ではなく「応用力」
離陸からわずか6分で発火、韓国海軍P-3C哨戒機が浦項の山中に墜落 4人全員が殉職
最強AIモデル「ChatGPT o3」がシャットダウン拒否、プログラムコードを「自己改変」か マスク氏も懸念表明
台湾で次に「地下鉄を建設すべき」都市はどこか?ネットユーザーが挙げる1都市:建設も維持も可能
世界最大のスタバが「Dream Plaza」に出店確定 統一会長「為替が最大リスク」
櫻井翔の頼総統インタビューで日台メディアが反発? 総統府「在台日本メディアと事前調整済み、抗議なし」
「携帯没収で激怒」昼休みに教師を殺害!ネット情報:ナイフで首を切った…ニュース報道直後に情報統制
教皇が直接挨拶!台湾「原声」合唱団がバチカンで歌う 林佳龍:世界に台湾を聞かせる
独占》台湾・民進党中央、端午前に「密令」発動!一本の電話で地方議員全面出動し団体バッシングを支援
トランプ政権『中国人学生のビザ取消し』を発表!国家安全保障上の懸念に対処 2つの対象グループへの厳格審査を予告
1億8400万件の個人情報流出!Google、Facebook、銀行など大手サイト全被害
台湾元幹部が証言 中国の「買収工作」に使われる現金と性接待の実態