張鈞凱コラム》反共は正義、「親共」は死すべきか?

2025-06-02 19:16
インフルエンサー「館長」こと陳之漢(写真)は先日、生中継で中国大陸に向かい「平和大使」を務めることを発表したが、陸委会は「この時代に平和大使を自称できる者はいない」と抗議した。(資料写真、柯承惠撮影)
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インフルエンサーの館長(陳之漢)は近日、中国本土を旅行し、全行程をライブ配信すると発表し、自身を「平和の使者」と称している。陸委会の官員はこれを皮肉り、この時代に「平和の使者」と自称する者はいないと述べた。注目されるのは、民進党政権の見解において、「平和の使者」と名乗れないのは一体どのような時代なのかという点だ。それは戦争の時代なのか、敵対関係にある時代なのか、それとも戒厳令と白色テロが支配していた時代なのか――。

陸委会は明確な説明を避けたものの、実際の動きは活発だ。
中国の学者が指摘したように、頼清徳総統の5月20日の就任1周年演説では両岸関係への言及はなかったが、台湾独立に向けた動きは「言わずに実行している」との見方もある。陸委会は、中国共産党の宣伝画像を転載したとして、台湾の芸能人20人を対象に調査・処分の方針を明らかにした。陸委会は台湾の芸能人20人をピックアップし、中共のプロパガンダ絵葉書を共有した件で調査を行っている。民進党の中国部門は、欧陽娜娜氏を含む12名の芸能人を名指しで、彼らが軍事、宣伝、娯楽を貫く「統一戦線(統戦)ネットワーク」の一環であると指摘している。

最新の動きとして、北京で開催された第2回「両岸中華文化サミット」が閉幕した直後、陸委会はすぐさま旺中グループを名指しで批判。「中国共産党による対台湾統一戦線的な宣伝に呼応し、我が国の主権を損ない、国家の利益を著しく害する行為である」として、強い非難の声明を発表した。さらに陸委会は、同メディアグループの行動が《両岸人民関係条例》に違反していないか精査する意向も明らかにした。

総統は「条件付き統一」を提起できるのに、インフルエンサーや芸能人は自己のアイデンティティを持つことが許されないのか

これは奇妙でありえない時代である。大統領は「大企業・中小企業の合併論」を持ち出し、大企業に条件を提示して交渉を進める一方で、ネット有名人や芸能人は自分の考えやアイデンティティをもとに中国側と接触・交流することが許されない。大統領は憲法を「災難」と表現しながらも、《両岸人民関係条例》には一切言及しない。しかし陸委会などの関連部門は、《両岸人民関係条例》を盾に市民のあらゆる動きを監視し、少しでも問題があれば厳しい処分を課そうとしている。

政府自らが両岸関係の監視隊を名乗り、黒熊や青鳥といった側翼勢力が跋扈する言論空間では、「赤い帽子」が飛び交う状況だ。党の方針に合わない意見や気に入らない発言には、すぐに「親中派」のレッドカードを突きつけられる。台湾で陸配(大陸出身の配偶者)である劉振亜(通称・アヤ)氏の事件が大きな話題となった際、ある報道関係者が陸委会の記者会見で、アヤ氏の動画が「武力統一の宣伝」と同じかどうかをただしたところ、ネット上で「親中派記者」と罵倒される投稿が相次いだ。 (関連記事: 張鈞凱コラム》戦争は本当に必要か? 関連記事をもっと読む

与党が「大規模なリコール運動」を積極的に推進する中、あらゆることが過剰に騒がれる傾向がある。
例えば4月、一部メディアはレーサーであり「霧峰林家」の末裔である人物が、公然とリコールを支持し、ボランティアにも参加して「急速に赤化(共産化)しつつある国会の混乱に直面して、簡単に頭を下げて敗北するわけにはいかない」と強調したと報じた。
この「赤化」という言葉が出ると、当然ながら「文字が読めず衛生観念もない」と批判される「支語監視隊(中国寄りの言動や用語の使用を監視・批判する人たちのこと)」の存在も思い起こされる。今や「寢室」、「本科といった言葉さえ彼らの目に触れると問題視され、物理の先生が「質量」という専門用語を説明するだけで、赤化用語だと指摘される

欧陽娜娜が「中共に同調している」として主要な調査対象に指定されたが、中国の公式は「14億人があなたを支持する」と高らかに宣伝している。(図/IG「nanaouyang」転載)
民進党の中国部門は5月29日、王心凌、張韶涵、呉慷仁、楊丞琳、王力宏、欧陽娜娜(写真)、欧陽娣娣を含む12名の芸能人を名指しで、「中国共産党の浸透プロジェクト」に協力し、軍事、宣伝、娯楽を貫く「統戦チェーン」を構築していると述べた。(IG/nanaouyang より転載)