2025年6月1日に行われたポーランドの大統領選決選投票で、保守派のカロル・ナヴロツキ氏が50.89%を獲得。自由派で現ワルシャワ市長のラファウ・トシャスコフスキ氏の49.11%を僅かに上回り、新たな大統領に選ばれた。
選挙戦は全国の注目を集め、投票率は78.2%と2000年以降で最高を記録。2週間前の第1回投票では、保守・自由両陣営の分断が鮮明となっており、決選投票も最後まで緊張感のある展開となった。
出口調査が誤導、地方票で逆転
当初の出口調査ではトシャスコフスキ氏がリードしていると報じられ、多くのメディアがその勝利を予想していた。しかし実際の開票が進むにつれてナヴロツキ氏が地方部や小都市で票を積み上げ、結果的に逆転。最終的に約2%未満の差で勝利した。
中央選挙委員会は6月2日夜、ナヴロツキ氏の当選を正式に発表。全国で約3800万人の有権者が投票に参加した。
ナヴロツキ氏の勝利に対し、アメリカのトランプ大統領は「ポーランド国民の偉大な勝利」とSNSでいち早く祝福。両国の関係がさらに強まることへの期待も示した。

ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相も「素晴らしい勝利」と称賛。両者は移民政策やLGBTQ+問題などで近い立場をとっており、保守的な価値観を共有している。
一方、欧州連合(EU)のフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は祝意を示しつつも、「ポーランドとEUの協力は平和、民主主義、共通の価値観に基づくべき」と釘を刺した。欧州議会の一部からは新政権の方向性に懸念の声も上がっている。
ウクライナのゼレンスキー大統領もナヴロツキ氏に祝意を示し、ポーランドの支援に感謝。SNSで「地域とヨーロッパの安全の柱」とポーランドを称え、今後の協力深化に期待を寄せた。ただしナヴロツキ氏はゼレンスキー氏への態度においてやや批判的で、支援に対する感謝や歴史的和解の姿勢が足りないと指摘している。
大統領職、無視できない影響力
敗北を認めたトシャスコフスキ氏は、「誠実で共感あるポーランドを目指して最後まで戦ったが、私のビジョンに十分な市民を引きつけることができなかったのは残念だ」と述べたうえで、ナヴロツキ氏に祝意を送り、民主的な政権交代を支持するとした。
同氏はX(旧Twitter)でもナヴロツキ氏を祝福し、平和的な政権移行を支持すると発信。ワルシャワ市長として引き続き職務に取り組む姿勢を示した。
ポーランドでは首相が行政の中心を担うが、大統領も外交、軍の指揮、法案への拒否権などを持ち、強い影響力を持つ。ナヴロツキ氏は、8月6日に任期満了となる保守派の現職アンドレイ・ドゥダ氏の後任として、大統領職に就く。

ナヴロツキ氏は現職のアンドレイ・ドゥダ氏の任期満了にともない、8月6日に正式就任する予定。ドゥダ氏は2期務めたため、憲法上これ以上の再選はできない。 (関連記事: ゼレンスキー大統領の和戦戦略!和平案発表直前に117機ドローンでロシア爆撃機を攻撃 | 関連記事をもっと読む )
現在のトゥスク首相は2023年末から幅広い連立政権を率いているが、内閣のイデオロギーの違いから中絶制限の緩和や同性カップルの法的保護といった政策が進まず、政権運営には困難がつきまとう。ドゥダ氏はしばしば拒否権を使い、トゥスク政権が推し進めようとする司法改革を阻んできた。ナヴロツキ氏の就任により、そうした与野党のねじれ構造は今後も続くとみられる。