「中華民国」の名前は消されるのか──台湾のアイデンティティはどこへ向かう?

2025-06-04 17:44
「中華民国」の名はこのまま消えてしまうのか──。ニューヨークに暮らす“老保釣”こと花俊雄氏が、このテーマについての考えを語った。(写真/柯承惠氏撮影)。
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最近、ネットで「中国時報-尚青論壇」の投稿を読んでいたとき、「中共同路人」――より正確に言えば「中国同路人」としての誇りを語る若者たち、史学勤氏、許明偉氏、游智彬氏、何溢誠氏の言葉に触れ、1970年代に「保釣運動」や「和平統一運動」に関わった自分の記憶がよみがえった。思わず「微斯人、吾誰与帰(この人あらざれば、誰によりて帰せん)」という思いが浮かんだ。

「中華民国」という国号はこのまま消えてしまうのか――。

1981年に「葉九条」が発表される以前、中国大陸からの招待を受けて北京を訪れた。孫中山の旧居がある鉄獅子胡同で、社科院台湾研究所の研究者たちと数日間にわたって意見交換を行った。その中で特に議論が白熱したのは「和平交渉の相手は誰か?」という点だった。

私(筆者)は、当時の台湾与党である国民党と対等な立場で交渉すべきだと主張した。相手側は「国民党が本当に台湾人を代表できるのか?」と問いかけてきたが、私は1971年の国連2758号決議以降、蒋介石父子が国民党を「台湾化」するために、許信良氏や張俊宏氏ら台湾出身の若手を積極的に登用し、地方のリーダーを党の要職に据えてきたことを指摘した。当時の統計では、本省人党員の割合は85%に達しており、国民党との交渉が「台湾人の利益に反する」とは言えないはずだと述べた。「葉九条」は、国民党に、そして台湾人に希望を託す内容だった。

その後の議論で争点となったのは、統一後の台湾の政治的地位だった。多くの参加者は「自治区」として位置づけるべきだとしたが、私は異を唱えた。台湾には高山族などの少数民族が存在するものの、人口比率は低く分散しており、「自治区」よりも「特別行政区」の方が現実的だと主張した。かつて海南島も省になる前は「特別行政区」と呼ばれていた。

許明偉氏と游智彬氏は、「中華民国」という名前を使って中国との統一交渉ができるのか、そして統一後にその国号が消滅するのかという、根本的な問題を提起した。

新版護照(右)の「TAIWAN」字樣放大,避免因護照の字樣與「CHINA」混淆,而造成國人旅行不便。圖為新舊護照對照示意圖。(盧逸峰攝)
外交部は2020年9月2日、新デザインのパスポートカバー(右)を正式発表。従来の構成を維持しつつ、「TAIWAN」の表記を大きくし、英語の国名「REPUBLIC OF CHINA」は国章の外周に配置された。画像は新旧パスポートの比較(写真/盧逸峰撮影)

この点に関して、「葉九条」は明確に、交渉の主体は「中華人民共和国」と「中華民国」ではなく、中国共産党と国民党の政党間交渉であると示していた。鄧小平氏も1983年に、「国号・国旗・国歌も交渉の対象になる」と言いつつ、「国際社会で中国を代表するのはあくまで『中華人民共和国』だ」と強調している。1997年には汪道涵氏が「一つの中国は『中華人民共和国』でも『中華民国』でもない」と語っており、将来の統一国家が新しい国号を持つ可能性があるという考え方も出てきた。つまり、「中華民国」の名称は、国際舞台から姿を消すリスクがある。

最近の台湾のパスポートにも変化が見られる。「CHINA」との混同を避けるため、「TAIWAN」の文字が強調されたデザインになっている。

許明偉氏は、現実的な見方をしている。もし将来、政治的な統一がなされた場合、「中華民国」という国名は消え、「Taiwan」の名称も「中国台湾」あるいは「中国台湾特別行政区」に変更される可能性が高い。五院(行政・立法・司法・考試・監察)は改組または改称され、総統は「行政長官」などに変わり、総統府も「特区政府」となるかもしれない。つまり、現在の制度や名称は、歴史の中に姿を消すことになる。