「核三廠除役(台湾第三原発の運転終了)」後、台中火力発電所と高雄興達発電所で石炭火力発電が増加し、住民の健康被害を懸念する声が高まっている。大台中医師会の魏重耀理事長は3日、「台中火力の10基の発電機と5本の煙突は全力稼働している。ここ数年、一時的に改善の兆しが見えたものの、5月17日に台電のデータを見たところ、核三廠除役後、夜間は太陽光も風力発電もなくなり、火力発電が全開となったことで、中部や中南部の大気汚染が急激に悪化した」と指摘した。さらに魏氏は「原子力は真の敵ではない。真の敵は地球温暖化と汚染された有害な大気だ」と強調した。
一方、台湾民衆党立法院党団は3日、「無許可での黒鉱石の過剰燃焼、誰が国民の健康を殺しているのか」と題した記者会見を開催し、複数の市民団体を招いた。大台中医師会の魏理事長は、「燃煤発電の停止こそが最も健康的で最善の選択だ」と訴え、「大気汚染は肺だけでなく、肺胞から血管を通じて全身に影響を及ぼし、さらに次世代へも被害が及ぶ。妊婦や新生児の体内には重金属が蓄積され、不妊症や新生児の疾病の増加につながっている」と警鐘を鳴らした。
「次世代の健康を守ることは当然のことである」と魏重耀氏は指摘する。近年、台湾の平均寿命が1〜2年短くなるという異例の現象が起きている一方で、医療保険の支出は増加しているにもかかわらず、寿命はむしろ短くなり、病気は増加しているという。大気汚染がもたらすPM2.5はガソリン燃焼によるものよりも深刻で、重金属やオゾン層の破壊なども含まれている。これらがさらなる医療投資を必要としているが、肺がんは依然として台湾で最も多い癌である。多くの医療機関や団体が対策に努めているものの、医師は一人ひとりの患者を救うしかなく、大気汚染は地域や集団を選ばず全国的な問題であり、誰もが汚染の影響を受けていると述べた。
魏重耀氏は、立法院(国会)に対して主決議を提出し、2028年から台中火力発電所の「カーボンニュートラル(ネットゼロ炭素排出)」を開始するよう求めている。特に先日のヨーロッパでの停電を受けて、「核エネルギーは真の敵ではなく、真の敵は地球温暖化や汚染された有害な大気だ」と強調した。また、執政党が掲げる「健康な台湾」政策について魏氏は、「健康な空気がなければ、健康な台湾は絵に描いた餅に過ぎない。健康な台湾を実現するには、ネットゼロ炭素排出を達成しなければならない」と述べた。政府は国民のために存在し、その役割は国民の健康を守ることにあるとし、北部、中部、南部を問わず全国すべての地域で健康の平等が実現されるべきだと訴えた。特に南投地域については、豊かな自然環境で工場も少ないにもかかわらず、全国の廃棄物が集められ住民が被害を受けている現状を批判した。
台湾健康空気行動連盟の発起人である葉光芃医師は、「全国の石炭火力発電所の中で最大の被害者は南投の住民だ」と説明した。南投は台中火力発電所の真下に位置しているためだという。葉医師は、「台中火力発電所は1991年に稼働を開始し、2025年までの計34年間稼働し続ける予定だ。しかし、まだ燃焼を続けている」と述べた。さらに、政治的背景についても触れ、「中央政府内では、台中火力発電所は国民党時代(前台中市長・胡志強氏)が建設したものなので責任を問われるべきだという声がある一方、2001年に陳水扁氏が大統領に就任した際に建設を阻止すれば、第9号・第10号機は存在しなかったはずだ。1基建設には3~4年かかる。理論的には、民進党政権時に第9号・第10号機を建設しなければ称賛するが、実際には建設され、2006年の陳水扁政権時代に台中火力は世界で最も汚染の激しい発電所となった」と指摘した。
葉医師はまた、賴清德氏が大統領に就任したことを歓迎し、「彼が設立した健康台湾委員会の最重要課題は『健康な空気』であり、PM2.5が最も毒性が強いことから、台中火力を停止すれば台湾のPM2.5は大幅に減少する」と述べた。さらに、「賴清德氏は気候変動委員会も設置しており、石炭火力を止めれば台湾の炭素排出は即座に大幅削減される」と期待を示した。 (関連記事: 台湾「脱原発政策」は正解だったのか? 海外メディアが「電気料金高騰」「自滅行為」と警告、米国の反応に注目 | 関連記事をもっと読む )
編集:柄澤南
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