台湾の原子力発電政策を巡り、賴清德総統と李鴻源元内政部長の間で意見の相違が浮き彫りとなっている。賴総統は、必要に応じて原子力発電の再稼働を検討する姿勢を示している一方で、李氏はその現実性に疑問を呈している。
5月17日、台湾の核三発電所2号機が運転を終了し、台湾は「原発ゼロ」の時代に突入する。しかし、立法院は13日、与野党の協力により「原子炉施設規制法」第6条の改正案を可決し、原子炉の運転期間を最大20年延長することを可能にした。これにより、核三発電所の運転延長が可能となる。
この動きに対し、李鴻源元内政部長はオンライン番組「中午来開匯」で懸念を表明した。彼は、核一、核二、核三発電所の運転延長や核四発電所の商業運転再開には、最低でも4年の評価期間が必要であり、その間に火力発電への依存が増すことを指摘した。特に、火力発電の比率が84%に達することで、台湾の炭素排出量が増加し、2026年から欧州連合が導入する炭素税の対象となる可能性があると警告した。
また、李氏は、賴総統が過去に「必要時には原子力発電を再稼働できる」と発言したことに対し、原子力発電所の再稼働には詳細な安全検査と準備が必要であり、冷房のスイッチを入れるように簡単にはいかないと批判した。さらに、政府が推進する新型原子力発電(核融合)についても、商業運転が可能となるのは2028年以降であり、電力の安定供給やコスト面での評価が必要であると述べた。
李氏は、台湾南部で農地が太陽光発電に転用されている現状にも懸念を示し、太陽光発電が日没後に機能しないことや、冬季に風力発電がほとんど供給できないことを指摘した。彼は、新型原子力発電への投資よりも、100億台湾ドルを投入して研究機関による再生可能エネルギーの研究を進めるべきだと提案した。
一方、賴総統は、先進的な原子力発電の導入について、「安全性の確保」「核廃棄物の処理」「社会的合意」の3つの条件を満たすことを前提に検討する姿勢を示している。彼は、台湾の電力供給は2032年まで安定しており、現在の課題は再生可能エネルギーの供給不足であると述べている。
台湾のエネルギー政策を巡る議論は続いており、原子力発電の再稼働や新型原子力発電の導入について、今後の政府の対応が注目される。 (関連記事: インタビュー》オードリー・タン氏「民主国家はレジリエントなネット空間を共創すべき」 AI時代の世論操作に警鐘 | 関連記事をもっと読む )
編集:梅木奈実
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