なぜ「7月5日の大地震」が話題になっているのか?
2025年7月5日に日本を中心とした巨大地震と津波が発生するという「予言」が、台湾や香港のSNS上で急速に拡散し、現地では不安の声が広がっている。この「災害予言」は、日本の漫画家・たつき諒氏がかつて描いた『私が見た未来』という作品に由来する。彼女は過去に阪神淡路大震災や東日本大震災、新型コロナの流行などを「予見」していたとされ、一部では「日本の龍婆」と呼ばれている。
今回も彼女の描いた未来の出来事として、「震源が日本・台湾・フィリピンの海域で、広範囲に津波が押し寄せる」という内容が取り上げられ、多くの人々に影響を与えている。
どうして海外にまで広がったのか?
NHKによると、このような「2025年7月大災害」に関する動画は2023年からYouTube上で増加しており、2025年に入ってからは爆発的に再生回数が伸びている。日本語だけでも1,400本以上の関連動画が存在し、再生数は1億回を超える。
また、これらのコンテンツが英語や中国語などに翻訳され、特に台湾・香港など中華圏での拡散が顕著となった。繁体字中国語の動画は220本以上、再生回数は5,200万回にのぼるという。さらに一部の風水師やメディアが「4月以降は日本に行かない方がいい」などと発言したことで、旅行への不安がより強まった。
観光業への影響は?
この「予言騒動」は観光業にも影響を与えている。日本政府観光局によれば、香港からの訪日客数は2024年3月時点で約20.8万人と依然として高水準だが、前年同月比で9.9%の減少を記録した。
特に香港との直行便を持つ地方都市では打撃が大きい。徳島空港と香港を結ぶ定期便は、今年5月から週2便に減便。仙台、福岡、札幌などの路線でも同様の動きがみられる。実際に訪日予定だった香港の夫婦は「日本で地震に遭ったらどうしていいか分からない」と語っている。
地震の専門家はどう見ている?
台湾中央気象局の元地震観測センター長・郭鎧紋氏は、「過去の巨大地震は事前に複数の前震が観測されているが、現在は世界的に地震活動が静かな『平穏期』にある」と指摘。「7月の大地震説」は信ぴょう性に乏しいと述べた。
また、日本気象庁も「現在の科学では地震や火山の具体的な発生日時・場所を予測することは不可能」との立場を示している。東京大学の災害情報学の専門家・関谷直也教授も、「このような予言には一切の科学的根拠がない」と断言。仮に7月に大地震が起きたとしても、それが「予言通り」とするのは誤りであり、日頃の備えこそが真の防災だと強調している。
どう対応すべきか?
関谷教授は「不確かな情報に過剰反応するのではなく、日常的な防災準備と冷静な情報の取捨選択が重要」と呼びかけている。SNSや動画サイトなどで拡散される不確かな情報には注意を払い、むやみに共有しないことが、社会的な混乱や不安を防ぐ鍵となる。 (関連記事: 中国、東シナ海で新たな海上施設を設置 日本政府が強く抗議「2008年合意の協議再開を」 | 関連記事をもっと読む )
編集:梅木奈実
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