米国の中南米問題専門家によると、ホンジュラスは2023年に台湾と断交し中国と国交を樹立したが、中国の貿易面での約束が果たされず経済が低迷。アメリカとの関係改善も望む中、11月の大統領選が台湾との国交再開の契機になる可能性があるという。
英時事誌『外交家』(The Diplomat)は9日、オックスフォード大学でラテンアメリカ研究を専攻する博士課程のヘンリー・ラージ氏による評論を掲載。論文は「台湾は外交的な同盟国を再び得るのか?」と題され、中米ホンジュラスが台湾と国交を回復する可能性を詳しく分析している。
ラージ氏は、ホンジュラスが11月に大統領選を控え、複数の候補者が台湾との国交復活を支持していると指摘。実現すれば台湾の国交国数は現在の12から13へ増加し、ここ20年で初の外交的同盟国の増加となる。国際情勢が混迷する中での大きな外交勝利になるとの見方を示した。
ホンジュラスのシオマラ・カストロ大統領は2023年、台湾との断交を発表。その直後に中国と国交を樹立した。
エビの輸出が67%減少、1万4,000の雇用が失われる
ラージ氏によると、国交樹立後、中国はホンジュラスへの経済的約束を実行せず、中国企業が国内市場に急速進出した。地元紙「エル・エラルド」によれば、中国系小売店14店舗が中部地域に出店し、低価格で販売した結果、地元商人の売上は最大70%減少した。
打撃はエビ産業にも及んでいる。台湾は2022年、ホンジュラス産エビの最大輸出先であり、全輸出の約40%を占めていた。しかし断交後、全国養殖漁業協会(ANDAH)によると輸出は67%減少、1万4,000人の雇用が失われた。外交部長エドゥアルド・エンリケ・レイナ氏も、中国市場参入の難しさを認め、3月には台湾と協力し他の市場開拓を模索していると発表した。
こうした状況下で、複数の大統領候補が中国との国交を見直す姿勢を示している。中道派リベラル党のサルバドール・ナスラジャ元副大統領は、4月の討論会で「当選すれば台湾と国交を復活し、中国の搾取と不公正な貿易協定による植民地化を非難する」と明言。
ナショナル党のナスリー・アフラ候補も「台湾と同盟していた時の方が今より100倍良かった」と述べ、商業や開発援助を例に挙げた。今年7月にはワシントンで投資家や議会関係者と会い、大統領になれば「中国から離れ台湾に近づく」と誓った。
一方、台湾との国交復活に立場を明確にしていない主要候補は、現国防相で与党リブレ党所属のリクシ・モンカダ氏で、現政権の継続を目指している。
米国との関係改善も後押しに
ラージ氏は、汚職スキャンダルや経済不振により与党の再選は厳しく、これは台湾にとって好材料だと指摘する。また米国政府は、中南米での中国の影響力抑制を外交方針としており、歴代政権が台湾の外交的同盟国維持を支援してきた経緯がある。
ホンジュラスでは送金収入がGDPの25%以上を占め、米国が最大の輸出市場。このため野党候補がワシントンとの関係修復を目指すのは自然であり、台湾との国交復活はその一歩になる。
ラージ氏は、大統領選でリベラル党またはナショナル党が勝利すれば、ホンジュラスは台湾と国交を再開する可能性が高いと予測。これは2007年にカリブ海のセントルシアが国交を復活させて以来の歴史的事例となる。
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