《日本経済新聞》は11日、米国財務長官ベセント氏の単独インタビューを掲載した。トランプ政権下の貿易戦争を主導した同氏は、日米貿易協定は双方の「黄金の産業パートナーシップ」を体現するものであり、両国の貿易不均衡が改善されれば、現在米国が課している対等関税は縮小する可能性が高く、「氷塊のように溶けるだろう」と述べた。
ベセント氏は先週木曜日、ワシントンの財務省執務室で《日本経済新聞》の単独インタビューに応じた。就任後、米国のテレビ局以外のメディア取材に応じるのはこれが初めてである。ベセント氏は今回のトランプ政権による関税戦争で、中国や日本といった主要貿易相手国との交渉を担当してきた。取材当日、トランプ政権による新たな対等関税率が発効したが、同氏は「時間の経過とともに、関税は溶けていく氷塊のようなものになるはずだ」と語った。
イェール大学の推計によれば、新税率の導入後、米国に輸入される商品の平均適用関税率は18.6%となり、これは第二次世界大戦終結以来、最高水準である。ベセント氏はこれについて、トランプ政権が関税を引き上げる目的は主に経常収支の赤字を「再均衡」させることにあると説明した。《日本経済新聞》によれば、2024年時点で米国の経常赤字は1兆1,800億ドル(約…円)に達し、主要国の中で最大であり、同氏はこうした大規模な赤字が金融危機を招く恐れがあるとの認識を示した。

ベセント氏は「この40~50年間、中国やその他の同盟国との間で貿易不均衡が続き、その結果、米国は製造業の多くの雇用を失った。これらの職は海外に移転してしまった。だから我々の考えは、それらの仕事を米国本土に取り戻すことにある。我々は自由貿易を享受しているが、公平な貿易も望んでいる」と述べた。
もっとも、ベセント氏は対等関税(reciprocal tariffs)を「溶けつつある氷塊」にたとえ、将来的には引き下げや撤廃の可能性もあると示唆した。「生産が米国に戻れば、輸入は減少し、再びバランスを取り戻すことになる」と語る一方で、貿易不均衡を是正するのに何年かかるのか、またトランプ政権下で関税が再び引き下げられるのかは不透明だと認めた。
さらに、ベセント氏は米FOXニュースのインタビューでも、今後米政府は四半期ごとに各国との貿易状況を再検証し、改善が見られなければ対等関税を再び引き上げる可能性があると述べている。複数のメディア発言を総合すると、トランプ政権が各国との間で貿易協定を結んだとしても、対等関税率は固定的なものではなく、トランプ氏や政権高官の一言で随時変更され得ることを意味している。

米国とまだ貿易協定を結んでいない国々について、ベセント氏は概ね10月末までに交渉を終える見通しを示した。ワシントンにとって最も重要な未完の交渉は「米中交渉」であり、同氏は中国とのやり取りは「非常に難しい」と率直に語った。その理由として、「中国は非市場経済であり、非市場経済は異なる目標を持っている。我々はこの非市場経済の目標に対処することに強くコミットしている」と説明した。
さらに同氏は歴史的な視点から、「我々の同盟国は常に経済的競争相手でもあった。ソ連は軍事的な敵であったが経済規模は非常に小さかった。一方、中国は新興国であり、最大の経済的競争相手であると同時に最大の軍事的競争相手でもあるため、対応は極めて困難だ」と述べた。
ベセント氏はまた、中国の過剰生産とダンピングに強い警戒感を示し、世界第2位の経済大国が極めて低い価格で大量輸出する手法を問題視した。「中国の多くの生産はコストを下回っていると考えている。これは雇用確保のための政策であり、彼らの雇用目標や生産目標は利益目標よりも優先されている」と指摘した。
編集:柄澤南 (関連記事: トランプ関税がインドの「親ロ」を追撃、世界の石油価格高騰の恐れ! 『エコノミスト』警告:中国が漁夫の利を得る | 関連記事をもっと読む )
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