旭化成など4社、食塩電解セル・電極の金属リサイクル実証を開始

2025-08-09 22:50
旭化成は、Nobian、フルヤ金属、Mastermeltと共同で、食塩電解用セルおよび電極に用いられる貴金属のリサイクル実証を開始した。(写真 旭化成)
旭化成は、Nobian、フルヤ金属、Mastermeltと共同で、食塩電解用セルおよび電極に用いられる貴金属のリサイクル実証を開始した。(写真 旭化成)

旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:工藤幸四郎)は、オランダのNobian Industrial Chemicals B.V.(以下、Nobian)、株式会社フルヤ金属(東京都豊島区)、英国のMastermelt Ltdと共同で、食塩電解用セルおよび電極に使用される貴金属のリサイクルに関する実証を開始したと発表した。4社が連携し、クロールアルカリ業界における金属リサイクルのエコシステム構築を目指す。

今回の取り組みは、食塩電解セルに組み込まれる電極に使用されるイリジウムやルテニウムなどの貴金属について、使用済みの電極からこれらを回収し、高純度に精製して再利用するプロセスを実証するもの。これらの貴金属は、電池や電子部品、水素製造技術などの分野で需要が拡大しており、価格高騰や調達難といった課題が指摘されている。クロールアルカリ業界においても、これら希少資源の安定確保と効率的な再利用は中長期的な重要課題とされる。

旭化成は2023年より、Nobianと共同で欧州においてセルのレンタルサービス実証を進めてきた。本取り組みでは、Nobianが使用済み電極を旭化成に引き渡し、Mastermeltおよびフルヤ金属が電極からの触媒剥離および剥離物の加工を担当。抽出された貴金属を高純度化したうえで、旭化成がそれを用いた触媒電極を再製造し、再びNobianの電解プロセスで活用することで、資源の循環利用を実現する。

旭化成は、このリサイクルプロセスを特定の取引関係にとどめず、業界全体に広げていく方針。セル・電極の安定供給体制を構築するとともに、将来的にはトレーサビリティの導入による循環の可視化にも取り組み、グリーン水素製造分野などへの応用展開も視野に入れるという。

旭化成のイオン交換膜法食塩電解プロセスは1975年に販売を開始し、現在までに世界30カ国以上、160工場で採用されている。累積受注量は3,000万トン(100%苛性ソーダ換算)を超え、省エネルギー性能やCO₂排出削減にも貢献している。

Nobianは、塩や塩素系化学品、水素などを製造する欧州のリーディングカンパニーで、オランダ、ドイツ、デンマークに生産拠点を持つ。100年以上の歴史を有し、1,600人以上の従業員を抱える。

フルヤ金属は1968年設立の貴金属精製メーカーで、特にイリジウム・ルテニウムにおいては40年を超える実績と高い純度の精製技術、リサイクル能力を有する。近年はこれら希少金属のリサイクルにも注力している。

Mastermeltは1985年に創業された貴金属リサイクルの世界的リーダーで、クロールアルカリ業界からの電極回収において25年以上の実績を有する。英国、ドイツ、シンガポール、米国に専用施設を展開し、国際的に高度なリサイクルサービスを提供している。

旭化成では、今回のような取り組みを通じて、希少金属の循環と安定供給を両立させるサーキュラーエコノミーの実現を目指す構えだ。 (関連記事: トランプ氏「関税外交」の全記録 一夜で145%、次の瞬間には再び緩和 世界経済は人質に 関連記事をもっと読む

編集:佐野華美 

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