ドイツの大衆紙『ビルト』(Bild)は5日、国際的なハッカー集団「ブラックムーン(Black Moon)」が中国とロシアの軍事協力に関する極秘文書を入手し、公開したと報じた。報道によれば、ロシアが中国人民解放軍の空挺作戦能力向上を支援しており、台湾海峡をめぐる潜在的な有事に備えた連携が強化されている可能性がある。
北京による台湾への野心は既に公然の事実だが、近年の動向は、武力行使の構想が脅しの域を超え、具体的な準備段階に入っているとの見方も出ている。『ビルト』が独自に入手したとされる文書は、中ロ間の軍事協力が単なる兵器の売買にとどまらず、台湾侵攻に向けた装備と運用システムの統合にまで及んでいる実態を示している。
この一連の情報は、国際的なハッカー集団「ブラックムーン」からもたらされたもので、同集団はロシア国営兵器輸出企業「ロソボロンエクスポート」と中国軍の間で交わされた機密データを入手したと主張している。文書の内容からは、中ロ両国が台湾への武力行使を見据え、緊密な軍事協力を進めている可能性があるとの見方も浮上している。
「208号剣計画」
ハッカー集団「ブラックムーン」は7月22日、X(旧Twitter)上でロシア国営兵器輸出企業「ロソボロンエクスポート」と、中国電子科技国際有限公司(CETC INTERNATIONAL Ltd.)が2021年4月に空挺指揮自動化システム「MECH 208」の開発契約を締結していたと発表した。契約金額は約3490万ドル(約51億円)にのぼるという。
この「208号剣計画」には、ロシア製の空挺装備一式が含まれており、中国側の部隊向けにカスタマイズされている。文書に記載された装備の内容は以下の通り:
空中輸送機・給油機:Il-78MK-90A(空中給油機)とIl-76MD(輸送機)は、大規模な空挺作戦を支える中核機材とされる。
空挺装甲戦車:BMD-4M空挺歩兵戦車とBTR-MDM「シェル」装甲輸送車は、空中投下後すぐに展開可能な火力と機動性を備える。
自走対戦車砲:2S25「スプルート-SD」は、空挺戦車のシャーシを活用し、高い対戦車能力を持つ。
指揮・観測車両:型番83T502-Dの特殊指揮・観測車も含まれる。
空挺降下システム:PBS-955降下傘システムにより、重装備の迅速な空中投下が可能とされる。
契約では、装備品はロシアから海路で上海港へ、もしくはロシア軍の輸送機によって中国国内の指定空港へ納入されることが明記されている。また、契約書には以下のような条項も含まれていた。
「提供される軍用車両は、中国側の操作に対応しており、改造済みのIl-78MK-90AおよびIl-76MDによる空中投下が可能である」 (関連記事: 台湾最大の脅威は武力侵攻か?垂秀夫元大使「エネルギー問題は軍事危機より深刻」 | 関連記事をもっと読む )
これは、単なる装備提供にとどまらず、輸送機とのシステム統合まで支援していることを示している。
ニュースの補足:ロシア国防製品輸出企業(Rosoboronexport)
「ロソボロンエクスポート(Rosoboronexport)」は、ロシアで唯一の国営兵器・軍事装備輸出の公式仲介機関であり、国家技術公社「ロステック(Rostec)」の傘下にある。同社はロシア製兵器の輸出業務を一手に担い、プーチン大統領が掲げる「軍事外交」戦略および国防産業の維持・拡大を支える中核的存在とされている。ロシアが締結する主要な兵器輸出契約の多くは、同社を通じて実施されている。