TSMCの2ナノ機密流出危機 国家技術を守る女性検察官がスパイ摘発へ

2025-08-07 12:00
TSMCの2ナノ製造プロセスの機密が盗まれ、国家安全が大いに揺るがされ、捜査当局が精鋭を尽くしてこの事件を追う。(写真/顏麟宇撮影)
TSMCの2ナノ製造プロセスの機密が盗まれ、国家安全が大いに揺るがされ、捜査当局が精鋭を尽くしてこの事件を追う。(写真/顏麟宇撮影)
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2025年7月、漢光演習が終了したばかりの台湾では、南部を覆う黒雲と各地の豪雨、さらに全国的なリコール運動の高まりが続く中、誰もが予想しなかった国家安全上の危機が「護国神山」ことTSMC(台湾積体電路製造)に発生した。

台湾高等検察署と法務部調査局は、7月25日、新竹市の調査站、北部機動工作站、サイバーセキュリティ站の精鋭を動員し、新竹をはじめとする複数地域で極秘の捜索・逮捕作戦を展開した。狙いは、TSMCの2ナノメートル製造プロセスに関する技術情報が漏洩したとされる産業スパイの特定と、その背後にいる黒幕の摘発にある。

関係者によれば、TSMCは2025年7月初旬、調査局新竹市調査站に内部告発を行い、2ナノ製程に関連する技術が複数の社内関係者により不正に複製された疑いがあると通報。これら世界最先端の重要技術が他社に流出したかどうかは確認されていないが、TSMCは被害拡大を防ぐためにも、当局による迅速な捜査介入を要請したという。

20220304-竹科台積電專題,台積電張忠謀大樓。(顏麟宇攝)
TSMCは機密情報の不正流出に気づいた後、調査局新竹市調査站に通報した。(写真顏麟宇撮影)

TSMCの機密漏えい事件、国力に影響 検察と調査機関のプレッシャー増大

世界をリードする2ナノメートル先進製造プロセスの機密が流出したことで、「護国神山」とも称されるTSMC(台湾積体電路製造)は、検察・調査当局に支援を要請した。この技術は国家の核心的な重要技術に指定されており、単なる営業秘密の漏洩事件ではなく、国家の実力と存亡に関わる安全保障上の重大案件である。この事態は国家安全当局の上層部を驚かせ、関係者による案件の進展への注視が続いている。台湾高等検察署の張斗輝検察長と法務部調査局の陳白立局長にも大きな重圧がのしかかっている。

今回のTSMCに関する2ナノ技術流出事件は、検察にとって国家安全案件として高等検察署の国安組が所管する一方、営業秘密侵害としては知的財産専責部門(以下、智財分署)の扱いともなるという複雑な構図にある。偶然にも、国安組と智財分署の両方で主任検察官を務めているのは鄭鑫宏検察官である。どちらの部門に捜査を担当させるか、張斗輝検察長は頭を悩ませたという。国安組には陳舒怡、王正皓、王盛輝といった検察界でも屈指の実力者が揃っており、智財分署にも羅雪梅、黃正雄、朱立豪、劉怡君ら実績のある検察官が名を連ねている。

最終的に、張検察長は本件を智財分署が主導する方針を決定した。関係者によれば、決め手となったのは、同分署に所属する劉怡君検察官の存在であるという。劉氏は高検での任期満了を目前に控えており、2025年8月下旬には新竹地検署に復帰する予定である。張検察長があえてこの時期に彼女を主任に起用し、経済・汚職事件に精通した朱立豪氏と黃正雄氏を補佐につけた理由には、劉氏の捜査手腕への強い信頼があると見られている。 (関連記事: TSMCの2ナノ技術流出疑惑で急浮上 Rapidusとは何者か──日本半導体産業の逆襲 関連記事をもっと読む

20190530-法務部次長張斗輝30日出席立院司法法制委員会。(顏麟宇攝)
高等検察署の張斗輝検察長(写真)によって智財分署の劉怡君氏が案件を担当。(写真/顏麟宇撮影)

TSMC事件の主導に選ばれた 智財分署のエース女性検察官

検察関係者によれば、劉怡君検察官は一審主任検察官を務めた経験はない。一方、台北地方検察署で長年にわたり一審主任を務めてきた朱立豪氏や黄正雄氏とは経歴が異なる。しかし、かつて新竹地検署に所属していた劉氏は、知的財産専責部門(智財分署)におけるエースとして知られ、その功績は高等検察署の内部でも高く評価されている。

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