米NASA、2030年までに月面に原子炉を設置へ 中国との宇宙競争で「核」に注目

2025-08-06 16:15
米国、2030年までに月面に初の原子炉を配備へ。(イメージ図/シェフィールド大学公式サイトから引用)
米国、2030年までに月面に初の原子炉を配備へ。(イメージ図/シェフィールド大学公式サイトから引用)
目次

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、2030会計年度第1四半期(2029年10月~12月)までに、月面へ原子力炉を送る計画を正式に発表した。将来的な月面基地のエネルギー供給を見据えたプロジェクトであり、宇宙空間での核エネルギー利用が本格的な段階に入ろうとしている。

「月面への核配備」は人類探査の転換点

NASAのショーン・ダフィー(Sean Duffy)代理長官は、8月5日、トランプ政権時代から構想されていた「Rapid Mission Concept(迅速任務構想)」の始動を発表した。

同構想の中核となるのが、月面に設置予定の核分裂型パワーシステムである。

ダフィー氏は「すでに数億ドルを研究開発に投じてきた。今こそ設計段階から実行段階へ進む時だ」と述べ、月面探査におけるエネルギー問題の打開策として核技術の重要性を強調した。

現在、月面では太陽光発電が主な電力源だが、極端な温度差や長期間の夜により安定供給が難しい。NASAによれば、今回の原子炉は出力100キロワットを想定しており、これは一般家庭の約3日半分の電力に相当するという。

最大2社に設計・製造を発注 民間の提案も募集

NASAはプロジェクト推進のため、「Surface Nuclear Fission Power Program(表面核分裂エネルギー計画)」の責任者を設置し、プロジェクトの進捗管理を徹底する方針。

すでに産業界に対し、設計および製造を担う企業の選定に向けた提案募集を開始しており、最大2社が選ばれる見通しだ。

今回の原子炉は、地上で組み立てられた後、現地で稼働するものではなく、あくまで「将来的なエネルギー供給体制構築のための先行投資」として位置づけられている。

すでに2022年から準備は始動 ダフィー長官の初陣ミッション

実際にNASAは2022年、40キロワット級の原子炉システムの設計に向け、3社にそれぞれ500万ドル(約8億円)規模の契約を交わしており、既に開発の基盤は築かれつつある。

今回の月面原子炉プロジェクトは、ダフィー氏がNASAの代理長官に就任して以来、最初の大規模ミッションであり、宇宙技術だけでなく国家戦略としても位置づけられている。

ダフィー氏は「これは単なる技術開発ではない。もしアメリカが人類の宇宙探査で主導的地位を保ちたいならば、スピードを上げなければならない」と語り、対中国を念頭に宇宙開発の主導権を巡る競争の激化を示唆した。

編集:梅木奈実

最新ニュース
台湾と米国の関係、頼政府にとっての試練-専門家が指摘する「秘密取引」と台米関係の行方
トランプ氏、TSMCが米国に3000億ドル投資と発言 TSMCが「実際の金額」を即座に公表
「米中首脳会談」の実現なら台湾はどうなる?専門家が指摘する「米中取引」の行方、台湾が最大の敗者に
陸文浩の視点:中国共産党軍のキロ級潜水艦、北上して中露合同演習に参加
広島原爆80年 台湾が初参加 駐日代表「戦争に勝者はいない」
評論:ナチスの鷹を模倣?台湾は枢軸国に向かっているのか?
台湾、トランプ氏との関係悪化の真相とは?元政権高官が明かす民進党政府の誤算
TSMCの2ナノ技術流出疑惑で急浮上 Rapidusとは何者か──日本半導体産業の逆襲
タイタン号の深海悲劇、創設者のコスト優先と船体欠陥無視が招いた内破事故の真実
核兵器が再び矛先に?ロシア、INF条約の一方的遵守を停止
TSMCの2ナノ技術が日本企業に流出か 元社員3人を国家安全法違反で拘束
三菱重工が2兆円護衛艦を受注、日本の軍事輸出で過去最大規模
トランプ政権の39%高関税でスイス経済に打撃 発端はたった一本の電話?
舞台裏》アメリカが「地獄絵図」を作り、中国を抑止 台湾のドローン問題が沈殿する恐れ
台湾の人気キャラ「a-We」大阪初上陸 ぬいぐるみ即完売、文化イベントに長蛇の列!
リコール全敗の台湾で何が?「中国寄り」批判が招く「魔女狩り」と民主主義の危機
第6回「渋谷盆踊り」今年も盛況、過去最高の約6万2,000人が来場 外国人比率は3割
評論:数字が物語る 米国の台湾への要求の苛烈さ
グーグルもマイクロソフトも台湾に進出 有事の際は支援するのか、それとも沈黙か
台湾のリコール運動に中国が注目 「中国台湾省」構想が再浮上の兆しも?
夏一新の視点:台湾若者の市民運動が過激化 街頭の極化で民主広場は闘争の場に
TSMC日本工場が高収益!熊本市、税収大幅増で日本政府からの補助金が不支給に
舞台裏》頼清徳氏、罷免再戦に強い執念 「8・23罷免」へ民進党が標的を絞り攻勢継続
秋のおやつに迷ったらコレ!東ハトの安納芋&和栗フレーバーが期間限定で登場
台湾カルチャー満載の「We TAIWAN」が大阪・中之島で開催中 38組129プログラムを展開、圧巻の五感体験も話題に
台湾文化「We TAIWAN」、大阪で話題沸騰 2日で1.6万人、メディア各社も報道
南台湾でアスベスト被害拡大 台風・豪雨で「静かな健康災害」発生
台湾TSMCに高関税の可能性 トランプ関税が「中国+1」戦略を直撃、アジア経済を揺さぶり
台湾、関税15%のために4千億ドル投資?経済部長の発言が波紋呼ぶ 「TSMC頼み」交渉に批判噴出
関税最大の敗者は誰か?「中国55%」以外にこの国も…台湾は依然と勝者の位置を争う
アフリカが中国の影響下に... 台湾の「2つの断交国」が関税で打撃、大規模な失業危機へ
台湾、関税20%からさらなる引き下げは可能か 行政院副院長・鄭麗君氏が帰国し見解
大規模リコール後も台湾は民主の模範か?学者が警告 分極化こそ最大の安全保障リスク
舞台裏》台湾・大規模リコールで見えた新勢力台頭 次期トップ候補は意外な人物に
イギリスがパレスチナ国家承認をめぐり疑問の声 『テレグラフ』:実在する国「台湾」をなぜ承認しないのか?
特集》首相を見守った台日友情 安倍派の知られざる支え手
分析》大規模罷免後の米中台情勢 焦点はトランプの台湾対応
台湾の20%関税政策3》日本の輸出競争力に暗雲 五大産業直撃
台湾の20%関税政策2》半導体調査結果迫る 企業に232条項・関税・チップ税の三重圧
台湾の20%関税政策1》米国が鉄鋼や自動車部品に最大50%関税、一部業界は予想外の恩恵
土壇場で台湾20%重税を突如発表 英紙報道が示すその背景と理由
トランプの「兄弟外交」が崩壊:プーチンとネタニヤフが応じず、終わらない戦争が平和賞の夢を打ち砕く恐れ
国家主導のイノベーションはなぜ加速したのか――中国の「市場と統制」の両立を読み解く
第二次世界大戦をめぐる「記憶の闘い」 FCCJで国際研究者3名が語る現代の論点
世界で最もAIが使いやすい国へ 城内実大臣が描く日本の未来