特集》首相を見守った台日友情 安倍派の知られざる支え手

2025-08-04 14:41
故・安倍晋三元首相(写真)は台湾との絆が深く、逝去後もその派閥は自民党内で影響力を保っている。(写真/AP)
故・安倍晋三元首相(写真)は台湾との絆が深く、逝去後もその派閥は自民党内で影響力を保っている。(写真/AP)
目次

参議院選挙で大敗を喫した自民党では、首相交代を求める声が急速に広がっている。石破茂首相は続投の意向を示しているものの、党内各派はすでに動きを見せ、両院議員総会の開催を視野に指導部の去就を議論する構えだ。自民党が政権交代に向けてカウントダウンに入るのかが焦点となる。一方で、安倍派や旧来の盟友は依然として党内に影響力を保ち、党の行方に一定の影響を及ぼしている。

安倍晋三元首相に近い重鎮たちは、選挙後に活発な動きを見せ始めた。かつて安倍派の中核だった萩生田光一氏は石破首相の辞任を公然と要求。安倍政権で多くの要職を務めた麻生太郎氏や前自民党幹事長の茂木敏充氏も頻繁に会談を重ねており、保守系議員の結集と政権交代の準備が進んでいるとの見方が広がっている。支持基盤が揺らぐ中で、石破氏が政権を維持できるかは不透明で、小泉進次郎農水相や安倍派を継ぐ高市早苗氏の名前が次期首相候補として浮上している。

日本自民党選挙:安倍晋三、石破茂。(AP)
現職の石破茂首相(右)は政権運営の危機に直面し、故・安倍晋三氏(左)の派閥に属する重鎮たちが次々と動きを見せている。(写真/AP)

東京媽祖廟の詹徳薫氏、台日交流を20年以上牽引

安倍派は首相ポストに挑戦できる実力を持ち、仮に首相を獲得できなくとも党内での影響力は依然大きい。その台湾との縁は、安倍氏の外祖父である岸信介元首相が蒋介石元総統と緊密な関係を築いた時代に遡る。安倍氏本人も台湾との関わりは深く、長年日本に滞在した金美齢氏や、母の安倍洋子氏のために作品を描いた台南出身の画家・陳香吟氏とも親交がある。頼清徳総統も副総統時代に「至親摯友」として安倍氏の葬儀に参列した。

その中で、外界にあまり知られていない存在が東京媽祖廟の会長、詹徳薫氏だ。詹氏は『風傳媒』の取材に対し、安倍家との日常的な交流を通じて日本僑界で20年以上活動し、地域の友好から国会人脈へとつなげてきたと語る。支援会を設立して台湾支持の国会議員を後押しし、龜井静香氏らの協力を得て僑界の力を結集。最近では「国会之窗」と名付けたプラットフォームを通じて台湾関連の議題を推進している。しかし政界の変動や後継者不在の課題を前に、今後の方向性を模索しているとも明かした。

1968年に日本へ渡り、半世紀以上にわたり僑界を牽引してきた詹氏は、2013年に東京媽祖廟を建立し会長を務める。新大久保から東京都庁にかけての一帯を「媽祖街」として台湾文化の拠点にする構想を掲げ、台湾同郷会や台商会、華僑総会など数多くの組織で要職を歴任。2023年には日台交流協会から個人表彰を受け、現在も僑務諮詢委員として活動を続ける。

東京媽祖廟董事長詹德薰。(黃信維攝)
東京・新大久保から都庁周辺を「媽祖街」として台湾文化の拠点に育ててきた東京媽祖廟の詹徳薫会長(写真)。日本の台湾僑界を代表する存在だ。(写真/黄信維撮影)

政党を超えて台日をつなぐ「橋渡し役」

詹氏は「頼清徳之友会」顧問として、民進党の頼清徳氏が大統領選に挑む際に日本僑界での人脈構築を支援した。与党との関係を保ちながらも、他党の訪問も受け入れており、2023年には当時台湾民衆党の党首だった柯文哲氏の東京媽祖廟参拝も手配した。詹氏は「宗教は政党の立場を超えるべきだ。寺はすべての政党に開かれている」と強調する。

日本政界との長年の友好関係により、多くの国会議員が台湾を訪問する際には、詹氏が現地調整や商界との橋渡し役を担う。台日間の政治・経済・文化を結ぶ「政界の重要な橋渡し役」として、今も存在感を放ち続けている。

東京媽祖廟。(黃信維攝)
東京媽祖廟は宗教は政党を超えるものと考えており、詹徳薫会長は「どの党でも歓迎します。うちの廟は開かれています」と語る。(写真/黄信維撮影)
最新ニュース
舞台裏側》台湾・大規模リコールで見えた新勢力台頭 次期トップ候補は意外な人物に
イギリスがパレスチナ国家承認をめぐり疑問の声 『テレグラフ』:実在する国「台湾」をなぜ承認しないのか?
分析》大規模罷免後の米中台情勢 焦点はトランプの台湾対応
台湾の20%関税政策3》日本の輸出競争力に暗雲 五大産業直撃
台湾の20%関税政策2》半導体調査結果迫る 企業に232条項・関税・チップ税の三重圧
台湾の20%関税政策1》米国が鉄鋼や自動車部品に最大50%関税、一部業界は予想外の恩恵
台湾が土壇場で20%重税を突如発表 英紙報道が示すその背景と理由
トランプの「兄弟外交」が崩壊:プーチンとネタニヤフが応じず、終わらない戦争が平和賞の夢を打ち砕く恐れ
国家主導のイノベーションはなぜ加速したのか――中国の「市場と統制」の両立を読み解く
第二次世界大戦をめぐる「記憶の闘い」 FCCJで国際研究者3名が語る現代の論点
世界で最もAIが使いやすい国へ 城内実大臣が描く日本の未来
台湾東部・台東人気観光地ランキング発表 絶景と便利さで富岡が1位に
台湾の旅行客が日本の心霊スポットで遺体発見 廃墟ビルから白骨化した遺体見つかる
少年犯罪と闇バイト急増 龍谷大・浜井浩一教授が警鐘「日本の治安は揺らいでいる」
台湾発TeamT5、サイバー脅威の最新動向と防御戦略を解説
戦後80年、日本の役割を問う――中西寛教授が国際秩序と外交課題を語る
飛行機で最も汚い場所は枕やカーペットではない? 客室乗務員が明かす「一度も清掃されない1箇所」とは
なぜ台湾だけが「一時的な関税」に区分されるのか? 専門家が語る「頼清徳が触れない事」:トランプの罠に陥る
舞台裏》大規模リコールが崩壊 民進党は無関心を装う 病院のメンタル科に若者が次々と駆け込む
なぜ台湾だけが「暫定関税」に? 専門家が語る「頼清徳が語らなかった事実」:トランプの罠に陥った
2025年新竹駅おすすめグルメ》格安グルメの集まる場所!老舗の美食15選、サクサクのタロイモボールや肉汁たっぷりの城隍包
外国メディアが分析 トランプ氏の台湾冷遇で浮き彫りになる頼清徳政権の苦境
トランプ氏が台湾に冷たい理由 WSJ「習近平氏との大取引を模索」
夏珍コラム:頼清徳は救えるか?
「松本零士展 創作の旅路」開幕 DJ KOOさんと真山りかさんがセレモニーに登場、松本零士の創作人生と“銀河の旅”に祝福
オーバーツーリズムの克服へ 田中俊徳准教授「持続可能な観光立国に必要なのはルールと分配」
「現実に立脚した安保戦略こそが必要」——折木良一元統合幕僚長が語る戦後80年と日本の進路
台湾グルメは鼎泰豊だけじゃない!日本人旅行者が「本当に絶品」と絶賛する隠れた名店とは
松本零士展が夏休み仕様に拡充 新フォトスポットや限定グッズも登場、SNS割引キャンペーンも実施中
アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭
相互関税で台湾に20%か 日韓EUより5%高い
台湾、「関税20%は交渉目標に非ず」頼総統が米と再交渉へ明言
台湾株、トランプ関税で夜間に180ポイント急落 非農業統計控え市場に緊張走る
台湾・台中と兵庫・尼崎が「スマート都市」で意気投合 デジタル×脱炭素で国境越えた交流へ
8月8日は「ポテコなげわの日」!池袋で限定イベント&お菓子プレゼントも
裏金17億円、40年続いた潜水艦修理めぐる不正の実態 防衛省が海自93人を一斉処分
中国軍、忠誠は共産党でなく習近平? 青学大・林教授が指摘する「制度なき統制」の危うさ
専門家が警告:この「5つの情報」をChatGPTに絶対に伝えないで! 一言で財産とキャリアを失う可能性とは
「災害対応にジェンダーの視点が不可欠」 女性自衛官らが語る現場の変化と課題
吳典蓉コラム:「民意」を読み違えた頼清徳総統 大規模リコールで露呈したリーダーの孤立
台湾と中国、異例の非公式交渉 頼政権の「オリーブの枝」を北京が一蹴
親中路線を強めるトランプ氏 頼清徳総統を冷遇か?米中「取引外交」に警鐘
舞台裏》台湾リコールで中国も誤算 最も懸念していた人物とは?
FRB分裂、利下げ巡り異例の反対票 31年ぶりの波乱で市場動揺
台湾関税は20%に決定 なぜ「最良税率」が日韓より高いのか、その背景とは
20%関税で台湾株1.2兆台湾ドル蒸発 国家安定基金が緊急介入
台湾の関税「20%はまだ前菜」──卓栄泰・行政院長、台米協議の焦点は「サプライチェーン協力」と「232条項」