公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)は2025年7月30日、内閣府特命担当大臣(科学技術政策)の城内実氏を招き、「日本の最新科学技術政策:世界で最もAIを開発・活用しやすい国、研究者にとって最も魅力的な国を目指して」と題するハイブリッド記者会見を開催した。
城内氏は日本語と英語を交えて講演と質疑に応じ、AI政策の全体像や国際的な展望を丁寧に説明した。

冒頭、《風傳媒》の質問に対し、城内氏は高速鉄道や半導体、防災などの分野で日台協力が続いてきたことを紹介。科学技術振興機構(JST)と台湾国家科学技術委員会(NSTC)の共同研究支援は2008年から継続しており、今年度もAIシステム構成に資するナノエレクトロニクス技術をテーマとした公募が進行中だと述べた。今後も機関間連携を深める方針を示した。
講演では、日本政府のAI政策の柱を説明。AIは農業、教育、行政、医療など幅広い分野で社会課題解決に寄与する一方、偽情報拡散や犯罪の巧妙化といったリスクもあるため、イノベーション促進とリスク対応を両立する法制度として「AI法」を制定したと述べた。同法は基礎研究から実用化まで包括的に支援し、透明性確保や国際協調を明記。総理を本部長とするAI戦略本部を新設し、必要に応じ事業者への助言や指針整備も可能な体制を整えた。城内氏は、この法律は規制を目的とせず、民間の自主性を尊重しながら開発と活用を後押しするものだと強調した。

さらに、6月に閣議決定された「統合イノベーション戦略2025」に基づき、研究基盤強化、信頼あるAI開発、医療・ロボット分野での活用、安全性評価、人材育成、国際連携など7つの重点項目を紹介。「広島AIプロセス」により日本主導で国際行動規範が策定され、56の国・地域が参加する「Friends of Hiroshima AI Process」が設立されたことや、2024年にAIセーフティインスティテュート(AIC)が設立され、安全性研究やベンチマーク手法開発を進めていることも説明した。
研究者招致のための国際プログラム「J-RISE」についても触れ、約1000億円規模で最先端研究環境の整備や生活面での魅力発信を進め、世界中の優秀な人材に日本での研究を促す取り組みを紹介。質疑では、米国製AIへの依存について「現状では多くが海外モデルに依存しているが、日本語や文化に即した国産AIの重要性は高く、政府も積極的に支援する」と述べた。
また、祭りとAIを組み合わせた地域活性化の可能性や、J-RISEを通じた国際的人材獲得競争について問われると、城内氏は「日本には安全な生活環境と高度な研究基盤がある。翻訳技術の進歩で言語の壁も低くなり、より多くの研究者が日本で人生と研究を豊かにしてほしい」と呼びかけ、会見を締めくくった。
編集:田中佳奈