台湾・民進党政権の高官である副総統・蕭美琴氏と、陸委会副主任の梁文傑氏は、それぞれ両岸関係の緩和を目指す「オリーブの枝」を差し出した。蕭氏は「現状維持」を掲げ、梁氏は「台湾にとって中国人であるか否かは問題ではない」と発言した。しかし、中国大陸の国台弁は30日の定例会見でこれらの呼びかけを一蹴し、事実上の「遠隔交渉」が行われる異例の形となった。
頼清徳総統は先に「国家の団結十講」を発表し、大陸側から「台湾独立の自白」と見なされ、強い批判を浴びていた。その一方で、蕭氏と梁氏は頼氏の強硬な姿勢を和らげるかのように、それぞれ異なる形で対話の糸口を模索していた。
蕭美琴氏の「現状維持」提案
蕭氏は最近、ノルウェー国営放送のインタビューで「我々の憲政上の責務は台湾の人々から授けられたものであり、中華民国憲法を守ることだ」と強調した。さらに「我々の立場は現状維持を支持するものである」と述べた。また、台湾外国記者会が主催する「蕭美琴副総統との対話」イベントに出席し、「安定した現状を守ることが我々の選択」と明言し、大陸に対して「対等かつ尊重ある」対話の開始を呼びかけた。
蕭氏が挙げた「中華民国憲法」と「現状維持」というキーワードには政治的な含意がある。中華民国憲法は両岸を「一つの中国」と位置づけ、最終的な国家統一を前提としており、憲法上に「台湾独立」という言葉は存在しない。このため、長年にわたり憲法は両岸関係を安定させる役割を果たしてきた。

「現状維持」という提案は、2016年の蔡英文政権発足時にも打ち出された。当時は馬英九政権期の両岸交流モデルを維持することが狙いだったが、蔡政権が九二共識を受け入れず、さらに米中対立が激化したことで、台湾海峡の安定は崩れ、情勢は危機的な局面に変化した。
国台弁報道官の陳斌華氏は、蕭氏の「対等かつ尊重ある」対話の呼びかけについて、「一つの中国の原則を認めないまま両岸対話を模索する試み」と批判した。また、「現状維持」の提案は国家を引き続き分裂させ、台湾の「事実上の独立」を追求するものだと指摘した。
大陸側からすれば、現在の台湾海峡の現状はすでに馬政権時代とは異なる。現状維持は、ほぼ台湾独立の固定化に等しいと見なされる可能性が高い。そのため、蕭氏が「現状維持」を掲げても、馬政権期に両岸安定の基礎となった九二共識などに触れない限り、大陸側が協議に応じることはなく、このオリーブの枝も退けられた。 (関連記事: 独占》台湾情報機関トップ人事 台北支部を掌握した副局長候補、接待を控える理由 | 関連記事をもっと読む )
梁文傑氏「台湾に中国人であるか否かの問題はない」
陸委会副主任の梁文傑氏は、先週の陸委会定例記者会見で、台湾と中国大陸の間には「中国人であるか否かの問題」や「中国文化の問題」ではなく、制度と理念の問題があると述べた。緑営寄りの陣営は、台湾を南島語族の発祥地と強調し、両岸の共通血縁を切り離そうとする傾向がある。しかし梁氏の発言は、両岸が同じ中華民族であることを認め、共通の血縁や文化を通じて膠着状態を打破しようとする試みに見えた。
