「災害対応にジェンダーの視点が不可欠」 女性自衛官らが語る現場の変化と課題

2025-08-01 15:29
2025年7月31日、防衛省主催のWPSシンポジウムが開催され、防災分野における国内外の実践事例が紹介された。(写真/黃信維撮影)
2025年7月31日、防衛省主催のWPSシンポジウムが開催され、防災分野における国内外の実践事例が紹介された。(写真/黃信維撮影)

防衛省は7月31日、「女性・平和・安全保障(WPS)」に関するシンポジウムをハイブリッド形式で開催し、防災・災害対応分野におけるWPSの国内外の取り組みについて、関係省庁や関係機関の担当者が実例を交えて発表した。

冒頭、防衛省の廣瀬政策立案総括審議官は「災害時においては、特に脆弱な立場にある人々のニーズに応じた支援が求められる」と述べたうえで、「女性や子ども、高齢者、障がい者への対応においてWPSの視点は欠かせない」と開会挨拶を行った。

防衛省WPS国際連携室の松沢朝子室長は、政府によるWPS関連の行動計画を紹介し、「能登半島地震の現場では、女性自衛官が参加したことで、トイレの設置や物資配布にジェンダーの視点を取り入れることができた」と説明。性別を問わず誰もが安心して活動できる職場環境の整備や、災害対応における女性視点の重要性を強調した。

続いて、海上幕僚監部防衛課の氏田あき三等海佐は、女性自衛官としての勤務経験に基づき、「かつては制服や装備が体格に合わないことも多かったが、現場の声が反映され、改善が進んでいる」と語った。

また、第三護衛隊群の先任伍長を務める大久保英機海曹長は、部隊内における教育のあり方に触れ、「階級や性別にとらわれず、フラットな意識を持つことが重要。災害対応は誰にとっても他人事ではない」と述べ、現場における意識改革の必要性を訴えた。

内閣府からは、防災担当の瀧澤謙・内閣官房審議官が登壇し、「避難所の運営や物資の管理など、災害時には性別に起因する課題が多く存在する」と指摘。さらに、男女共同参画局の市川恭子参事官は「女性の声が災害対応の施策に十分反映されていない現実がある。地域に根ざしたネットワーク形成が重要だ」と述べ、女性の意思決定への参画促進の必要性を訴えた。

消防庁からは脇本篤・国民保護・防災部国際協力官が登壇し、「避難所での性暴力やプライバシー確保といった課題は、性別を問わず共有すべき問題」とし、支援者向けの研修制度の整備や自治体へのWPSの普及が急務であると語った。

外務省の猿橋弘幸・女性参画推進室長は、「ODAや国際平和協力の現場ではすでにWPSの視点が不可欠となっている。国内の災害対応でも同様にジェンダー主流化を進めるべきだ」と強調した。

国際協力機構(JICA)の国際協力専門員・宇佐美茉莉氏は、アジア各国との防災協力の事例を紹介。「現地の女性が災害リスクを理解し、自ら発信することが、継続的な支援につながる」と述べ、女性リーダーの育成支援の重要性を訴えた。

国連女性機関(UN Women)本部の戦略軍事顧問タイソン・ニコラス氏はオンラインで講演し、「WPSは『保護』にとどまらず、女性が意思決定に関与することで社会の平和と安定につながる」と述べ、WPSに基づく国際的枠組みとその進展について解説した。

シンポジウム後半のパネルディスカッションでは、防衛省の松沢室長、内閣府の市川参事官、消防庁の藤本国際協力官が登壇。「避難所における女性専用スペースの設置」「意思決定機関への女性の参画」「性別データの収集と可視化」といった具体的な課題について意見を交わし、関係機関のさらなる連携強化を確認した。

今回のシンポジウムは、防災分野におけるWPSの視点を国内で定着させるための実践的な一歩となった。

世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp

最新ニュース
台湾・台中と兵庫・尼崎が「スマート都市」で意気投合 デジタル×脱炭素で国境越えた交流へ
8月8日は「ポテコなげわの日」!池袋で限定イベント&お菓子プレゼントも
裏金17億円、40年続いた潜水艦修理めぐる不正の実態 防衛省が海自93人を一斉処分
中国軍、忠誠は共産党でなく習近平? 青学大・林教授が指摘する「制度なき統制」の危うさ
専門家が警告:この「5つの情報」をChatGPTに絶対に伝えないで! 一言で財産とキャリアを失う可能性とは
吳典蓉コラム:「民意」を読み違えた頼清徳総統 大規模リコールで露呈したリーダーの孤立
台湾と中国、異例の非公式交渉 頼政権の「オリーブの枝」を北京が一蹴
親中路線を強めるトランプ氏 頼清徳総統を冷遇か?米中「取引外交」に警鐘
舞台裏》台湾リコールで中国も誤算 最も懸念していた人物とは?
FRB分裂、利下げ巡り異例の反対票 31年ぶりの波乱で市場動揺
台湾関税は20%に決定 なぜ「最良税率」が日韓より高いのか、その背景とは
20%関税で台湾株1.2兆台湾ドル蒸発 国家安定基金が緊急介入
台湾の関税「20%はまだ前菜」──卓栄泰・行政院長、台米協議の焦点は「サプライチェーン協力」と「232条項」
台湾株先物が急落500ポイント超 トランプ20%関税で市場に警戒感
「テクノロジー冷戦」の最前線は東南アジアに 米中のAI覇権争いが地政学リスクを加速
韓国、関税15%で米国と合意 3500億ドル投資と自動車・農産品市場を全面開放でトランプ氏が10ポイント引き下げ発表
世論調査》大規模リコールの「逆風」直撃──頼清徳総統の信頼度、ついに3割台に転落 再選支持は半数以下
外国人との共生社会を目指す、鈴木法相「外国人を人として受け入れる時代へ」──新・育成就労制度の方向性
戦後80年──米軍記録映像が語る知られざる「戦争の実像」 映像解析で次世代へ記憶をつなぐ
堺が見せる日本の底力!大阪万博で職人技と伝統文化を再発見
暑さに負けない!梅・ネギ・XO醤…五味で味わう“夏ごはん” アコメヤのフェアが全国で開催中
暑さにひと息!茅乃舎の「冷たい飲むだし」東京&福岡で無料提供、先着100名限定
「石破首相は辞任すべき」自民党内で退陣論が噴出 ヒゲの隊長も決断迫る
ロシア・カムチャツカM8.8巨大地震が琉球海溝100年周期地震を誘発?専門家「台北は二重共振に警戒」
イチロー、アジア人初の米野球殿堂入り 「3度目の新人」とユーモア溢れるスピーチ
韓国が15%関税優遇と引き換えに差し出したものとは?台湾が驚く「代償の大きさ」
台中市、神戸のマイクロソフトAIラボを視察 「アジア唯一の拠点」にスマートシティ構想のヒント探る
評論:なぜリコールは失速したのか 強権的な拘束と「司法不信」が招いた反発
北京観察》中国社会は台湾の「大リコール」に強い関心 学者「北京は国民党にまだ期待?」
頼清徳総統、リコール惨敗で支持者に謝罪 「悔しさを改革の決意に変える」
津波警報で交通網まひ 東海道線、横須賀線など主要路線が終日運休、仙台空港も滑走路閉鎖
舞台裏》日本と台湾の53年の禁忌を突破 林佳龍外交部長が東京都を訪問
台海解読》米中首脳会談の陰で台湾は犠牲に? 賴政権に「厄介者」回避のブレーキ役
TSMCの苦境!インテル救済か25%関税か 専門家「短期利益も長期は不透明」
台湾が15%の最適関税を獲得の可能性 追加投資と米中交渉の駒リスク
「関税交渉」期限迫る トランプ政権が台湾に「最良税率」提示か、中国は慎重対応
ロシア・カムチャツカ沖M8.8地震 北千島列島が壊滅的被害、漁船・工場水没、2,400人が緊急避難
兵庫・丹波市で国内観測史上最高41.2℃ 京都・福知山は府内初の40℃超 近畿で31年ぶりの40℃台
舞台裏》高雄での民進党陣営初選の変化!「三分天下」が定局 彼女は最強勢力の支援を得た
津波警報》台湾、13:18から「警戒高度」に到達!30センチで人が流される恐れ 沿岸の住民に緊急避難指示
ゼレンスキー大統領の職務解除を検討か 米英がウクライナ高官と秘密会談と報道
独立派支持者も民進党に不満? 専門家「反罷免は藍白連携だけではない、第三勢力の怒りが鮮明に」
M8.8巨大地震、津波がロシア沿岸を直撃 史上最強地震と津波被害を振り返る
評論:「反中カード」が裏目に?頼清徳総統、孤立深める 米国も北京に配慮の姿勢
トランプ政権が「黄金株」で拒否権 米国で国家資本主義モデルが加速か
解説》米国でも「大リコール」はできる?カギはシュワルツェネッガーにあり
TSMCがテスラの165億ドル契約を逃す!マスク氏が新チップ製造を「この企業」に依頼
台湾が国際的非難の渦に直面 アムネスティ「ジェノサイド共犯」の可能性を警告
台湾、最大1メートルの津波到達の恐れ カムチャツカ半島沖M8.8地震で「津波警報」格上げの可能性
ロシア・カムチャツカ半島沖でM8.8巨大地震 地震学者「地球は地震活発期入り」巨大地震続発の恐れ