アメリカのトランプ大統領は、自身のSNS「Truth Social」で重大な合意を発表した。米韓が包括的な貿易協定に達し、韓国が15%の優遇関税率を享受することが決まったという。この税率は、日本や欧州連合(EU)といった米国の親密な同盟国と同水準である。
注目されるのは、トランプ氏によれば、韓国はこの関税優遇を得るため、米国に対して3500億ドル(約10兆4000億台湾元)の投資を約束し、さらに1000億ドル相当の米国産エネルギー製品を購入することで合意した点である。
この発表を受け、台湾のネット掲示板「PTT」の株式板では激しい議論が巻き起こった。多くの書き込みが、アジアにおける関税競争の圧力が完全に台湾に向けられたと指摘しており、「15%の税率を獲得できなければ、本当に終わりだ」といった悲観的な声も見られた。
韓国の3,500億ドル投資約束の具体的な内容とは?
トランプ氏が「Truth Social」に投稿した詳細な声明によれば、韓国が15%の優遇関税を得るために提示した条件は、これまでに例のない規模である。トランプ氏は、韓国が3500億ドルを「米国側が保有・管理する投資資金」として提供すると明かし、さらにこれらの投資先は、自身が大統領として直接選定すると述べた。
投資項目の配分詳細
韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は、3500億ドルに及ぶ巨額投資の具体的な用途について説明した。それによれば、同資金は造船、半導体、電池、バイオ、エネルギーといった韓国が強みを持つ産業分野に投入され、両国企業による米国市場への展開を後押しする役割を担うという。
なかでも注目されるのは、1500億ドル規模の「船舶協力特別ファンド」の創設である。これは、韓米企業による米国船舶製造業への進出を支援するもので、韓国側が資本投入を通じて、米国の製造業再興政策において有利な地位を確保しようとする意図がうかがえる。
エネルギー調達の約束
投資に加えて、韓国は1000億ドル相当の液化天然ガス(LNG)やその他のエネルギー製品の調達にも合意した。この約束は、米韓間の貿易不均衡の是正に資するだけでなく、トランプ政権が推進する米国産エネルギーの輸出政策にも合致する内容である。
市場の全面開放
李在明大統領「韓国側合意過程での戦略的考慮」
李在明(イ・ジェミョン)大統領は、関税協定の締結により、韓国が直面していた輸出環境における不確実性が解消されたと述べた。また、戦略産業における米韓間の協力基盤が強化され、主要国と対等あるいはより有利な条件で競争できる環境が整ったと強調した。
さらに李氏は、この協定について「米国の製造業振興と、韓国企業による米市場での競争力拡大という、両国の目標が結びついた成果である」と位置づけ、今後、米韓同盟関係をより一層強固なものにすると期待を示した。
政府内の意思決定過程
李氏はまた、各方面からの意見を集約し、戦略を繰り返し調整した結果、韓国が重大な障壁を乗り越えたことを明らかにした。この発言からは、韓国政府内部で本協定の受け入れを巡り、極めて厳しい条件に対して激しい議論が交わされていたことがうかがえる。
台湾のネットユーザーはなぜ韓国の協定にそんなに不安なのか?
韓国が15%の優遇関税を米国と合意したとの報道が伝わると、台湾の電子掲示板「PTT」では即座に激しい議論が巻き起こった。書き込みには焦燥感が色濃くにじみ出ており、台湾がこの「関税戦争」において厳しい立場に追い込まれている現実が浮き彫りとなった。
競争劣位への懸念
「台湾も15%を獲得しているだろうな。そうでなければ終わる」「主要なライバルはみな15%。台湾だけ高ければ話にならない」「15%を取れなければ崩壊する。相手は韓国だ」といった書き込みが相次いだ。台湾と韓国は半導体、電子、石油化学など複数の産業分野で直接競合しており、韓国が15%の関税優遇を得る一方で、台湾が引き続き32%という高関税を課される状況が続けば、輸出競争力に壊滅的な打撃を与えるとの危機感が強まっている。
巨額投資への不安
韓国が提示した3500億ドルという巨額の対米投資に対し、台湾のネットユーザーからは自国の経済力に対する不安の声も上がっている。「15%が欲しいなら金を出せ、出せないなら地獄だ。台湾にそれができるのか」「台湾が4000億ドルも要求されたら破綻する」といった意見が見られた。実際、台湾の2025年の国内総生産(GDP)は約7884億ドルと予測されており、3500億ドルの投資はその半分近くに相当する。韓国と同水準の投資を実現することは、台湾にとって極めて困難と見られている。
市場開放への圧力
ネット上では、韓国の関税協定が単なる税率引き下げにとどまらず、市場の全面開放を含んでいる点にも注目が集まっている。「韓国は全方位で門戸を開き、さらに3500億ドルも投資するのか」「農産物も自動車も関税ゼロ、台湾に同じことができるのか」「日本や韓国がすでに全面開放しているなかで、台湾だけが粘れるのか」といった投稿が相次いだ。
韓国が米国との間で15%の関税優遇協定を締結したことは、米韓の経済関係における画期的な前進であると同時に、まだ協定を結べていない他国に対し、かつてない圧力を与えることにもなった。台湾にとっては、国家の中核的利益を損なうことなく、実効性のある関税協定をいかにして実現するかが、今後の外交と経済政策の最大の課題となる。
関連情報:トランプ氏が30日に発表したその他の世界的な関税措置とは?
8月1日の関税対等措置の期限まで残りわずか数時間というタイミングで、トランプ氏は7月30日、関税政策に関する“集中砲火”を開始し、複数の国と品目を対象とした一連の重大な措置を発表した。
国/商品 | 関税税率 | 発効日 | 特別条件 |
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韓国 | 15% | 8月1日 | 投資3,500億ドル+1,000億ドルのエネルギー購入 |
インド | 25% | 8月1日 | ロシアへの購入を批判+貿易障壁 |
ブラジル | 50% | 8月6日 | 航空機、オレンジジュース、エネルギーは免除 |
銅管銅線 | 50% | 8月1日 | 銅鉱、精鉱の原料は含まない |
小型小包 | 各国適用税率 | 8月29日 | 800ドル以下の免除廃止 |
インドに対する最も厳しい制裁
トランプ氏はインドに対し25%の関税を課すと発表し、インドの関税水準について「世界で最も高い」と厳しく非難した。さらに、非関税貿易障壁についても「各国の中で最も厳しく、不快極まりない」と強い言葉で批判した。加えて、インドが長年にわたりロシアから大量の軍事装備を購入し、ウクライナ戦争が続く中でモスクワ最大のエネルギー輸入国となっていることを問題視し、追加制裁の対象とした。
銅製品への関税は限定的な影響
トランプ氏は、銅管や銅線などの半製品に対し50%の関税を新たに課すと発表した。しかし、銅鉱石や精鉱、電解銅板などの原材料は対象外となっており、市場が想定していた全面的な措置とはならなかった。この発表を受け、ニューヨーク商品取引所(Comex)における米国の銅価格は17%以上下落した。
ブラジルは一部免除を獲得