米中間の新たな関税・通商交渉が加速する中、米ブルームバーグ通信は28日、関係筋の話として「トランプ政権が台湾の頼清徳(ライ・セイトク)総統による米国経由訪問を認めるかどうかをめぐって慎重に協議している」と報じた。政権内では、この訪問がトランプ・習近平会談(いわゆる「川習会」)および貿易交渉に悪影響を与える可能性があるとして懸念が高まっているという。
米中の通商交渉は今週月曜、スウェーデン・ストックホルムにてイベット・ベセント財務長官と中国の何立峰(カ・リツホウ)副首相が会談を行い、交渉が再開された。交渉進展により関税休戦協定の延長が見込まれており、川習会開催への布石ともなっている。ブルームバーグによれば、トランプ大統領はこれまで国家安全保障を理由に導入された対中技術輸出規制の一部を、柔軟な交渉材料として再検討しているという。
報道によれば、頼総統は8月4日にニューヨーク、10日後にダラスを経由し、中南米の友好国であるパラグアイ、グアテマラ、ベリーズを歴訪する予定だった。しかし、今回の訪問は米中間の敏感な時期に重なるため、米国側からの同格レベルの許可が下りておらず、日程確定には至っていないとされる。
28日時点で、米ホワイトハウスおよび国務省はブルームバーグからの問い合わせに対してコメントしていない。
一方、台湾の総統府報道官である郭雅慧氏は28日、「例年通り、総統の訪問が決定した場合は、適切な時期に発表する」と述べたうえで、「現在は南部の豪雨災害からの復旧、米台間の関税協議、地域安全保障などを考慮し、頼総統に海外訪問の予定はない」と明言した。
米政府関係者によれば、今後も訪問の延期や経由地の変更が提案される可能性があるという。なお、バイデン前政権下でも、頼氏のハワイ・グアム経由による訪問は「米大統領選への影響を回避するため」として延期された前例がある。
今回、トランプ政権が頼総統の米国通過に慎重姿勢を示していることにより、「台湾問題が通商交渉の取引材料として扱われているのではないか」との懸念が国際社会で再燃している。
アメリカ在台協会(AIT)のローラ・ローゼンバーガー前会長はブルームバーグの取材に対し、「米政権内部の一部では、台湾との関係を北京との交渉カードとして扱おうとする動きがあり、非常に懸念している」と述べた。
さらに彼女は「中国が台湾への圧力を強めている今こそ、米国はこれまでの慣例を守るという強いシグナルを発するべきだ。北京にレッドラインを再び動かさせてはならない」と訴えた。
ローゼンバーガー氏は2024年1月21日をもってAIT会長を退任しており、後任はまだ発表されていない。彼女は頼清徳氏の総統就任式にも出席するなど、任期中に6度の台湾訪問を行っていた。
編集:梅木奈実 (関連記事: 【解説まとめ】台湾で史上初の大規模リコール「25対0」で全敗 なぜここまで失敗したのか? | 関連記事をもっと読む )
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