舞台裏》「核三再稼働国民投票」回避か 賴政権、大規模罷免後の再敗北恐れ準備

2025-07-29 12:00
民進党は7月26日の大規模罷免投票で完敗を喫したばかりであり、賴清德政権は間髪を入れずに8月の核三再稼働の国民投票に直面することになる。(写真/総統府提供)
民進党は7月26日の大規模罷免投票で完敗を喫したばかりであり、賴清德政権は間髪を入れずに8月の核三再稼働の国民投票に直面することになる。(写真/総統府提供)
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7月26日の大規模なリコール投票に続き、8月23日には本年度で最も注目される政治的争点の一つである「第三原発の再稼働に関する国民投票」が全国で実施される。同日には一部の国民党立法委員に対するリコール投票も予定されており、民進党にとっては二重のプレッシャーとなる政治的試練である。

民進党中央は7月26日のリコール投票を「市民による行動」と位置付けたが、実際には運動組織の脆弱さ、主張の一貫性の欠如、そして投票結果における全面的な敗北により、民進党が情勢判断を誤ったことが浮き彫りとなった。加えて、組織的な戦力の低下と、意思決定中枢の断絶という構造的問題も明らかとなった。

大きな打撃を受けた直後に控える第三原発再稼働の国民投票は、頼清徳政権の政治的判断力と統合能力が再び問われる場となる。中央選挙委員会は8月7日、9日、11日、13日、15日に計5回の公開討論会を予定しており、原則として主管機関または代表団体が賛否を担う形となっている。国民党と民衆党は早々に賛成派としての態勢を整えた一方、反対派となる行政院や経済部は登壇者の人選が難航している。政府が自らの政策を説明する代表すら確保できない状況は、決定過程の混乱を象徴しており、加えてリコール投票での敗北も重なった今、頼清徳政権は823の一戦をいかに戦うのか、注目が集まっている。

20250726-決戦国会市民不退開票の夜26日於立法院外濟南路撮影。(劉偉宏撮影)
罷免戦での痛恨の失敗により、民進党の決定や動員能力が低下していることが露見した。(写真/劉偉宏撮影)

反核討論の代表は誰か 経済部が不参加、行政院が出馬

討論会の日程が確定した後、経済部内部では一時、台湾電力(台電)を討論会に出席させる案が検討された。しかし、台電の曾文生董事長(会長に相当)は私的に明確に不適切との考えを示したという。曾氏は、台電は実施機関であり、「原子能管制法」に基づけば住民投票に介入すべきでないと主張。役割の混同や不必要な論争を招く可能性があるとして、7月18日夕方、経済部は正式に行政院へ反対派代表の派遣を見送る旨を報告し、法令順守と手続きの尊重を理由に挙げた。

しかしその夜、行政院は突如、行政院エネルギー脱炭素推進室の副執行長・林子倫氏と台電の曾文生氏を反対派代表に指名する決定を下した。これに経済部は困惑を隠せなかった。曾氏は取材に対し、「この議題に関する準備はまだできていない」としつつも、「突然の任命ではない」と否定し、経緯の詳細については「よく分からない」と述べた。また、「社会ではしばしば原発に対して現実を超えたイメージが存在する。今回の討論は、原発に反対する感情的な主張ではなく、政策そのものについての理性的な説明を行いたい」と語った。

経済部が代表の派遣を渋った背景には、法的・技術的な懸念に加え、自らの郭智輝部長のエネルギー政策に対する立場が影響しているとの見方がある。郭氏は就任以降、原発に関する世論調査で支持率が6〜7割あると述べ、「民主国家では、多数決が原則」と語ったが、この発言が環境団体や「脱原発」を掲げる民進党支持層の反発を招いた。それ以降、郭氏は原発問題への明確な態度表明を避けるようになったが、党内では彼の「原発容認」の立場を把握しているとされる。今回、郭氏が当初から反対派代表の派遣に後ろ向きだった背景には、彼の個人的判断があったのか、それとも頼清徳総統の黙認があったのか、関係者の関心が集まっている。

20241120-経済部長郭智輝(右)、台電董事長曾文生(左)20日於経済委員会での質疑応答セッション。(顏麟宇撮影)
郭智輝経済部長(右)は当初、反対派代表を派遣する予定がなかったが、行政院は彼の基調に沿わず、台電理事長曾文生氏(左)を突然起用した。
(写真/    顏麟宇撮影)
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