米国のトランプ大統領と欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は27日、貿易協定の枠組みに合意した。米国はEU製品の大半に対し15%の輸入関税を課す方針で、これにより米欧間で懸念されていた大規模な貿易戦争は回避された形となった。ロイター通信によると、米EU間の貿易は世界貿易総額の約3分の1を占める。協定発表直後にはユーロがドルやポンド、円に対して0.2%程度上昇した。
会談はスコットランド西部のトランプ氏所有ゴルフ場で1時間にわたり行われ、難航していた協議に最終合意がなされた。トランプ氏はこの枠組みを「史上最大の取引」と表現。EUが今後米国に約6000億ドル(約89兆円)を投資し、エネルギーや軍事装備の購入を大幅に拡大する計画を明らかにした。この合意により、米欧関係が一層深化するとした。一方で、経済学者らが警鐘を鳴らすインフレリスクについては言及しなかった。

こうした中、トランプ氏は欧州市場への投資規模が日本の約束した5500億ドル(約81兆円)を上回った点を強調。欧州は今後数年で7500億(約112兆円)ドル相当の米国産エネルギー、さらに数千億ドル規模の武器を購入する計画だという。ただし、今回の枠組みは先週発表された日米協定と類似点を持つものの、蒸留酒の関税問題など、依然未解決の課題も残されている。
トランプ氏はかねてより、米国がEU製品との貿易で赤字を抱えていることに不満を示していた。今年7月12日には、包括的な合意に至らない場合、8月からEU製品に30%の関税を課すと警告。これに対しEU側は報復措置として、米国製品930億ユーロ分(約16兆円)への関税を検討していた。米国国勢調査局のデータでは、2024年の対EU貿易赤字は2350億ドル(約35兆円)に達している。一方、EU側は米国のサービス収支の黒字がそれを一部相殺していると主張している。
「これが得られる最善の結果」と評価
フォン・デア・ライエン委員長は「15%の関税は全面的に適用される」と説明し、「これが得られる最善の結果」と述べた。大西洋を挟む二大経済圏が貿易協定に至った意義は大きく、安定と予測可能性につながるとした。欧州側が当初目指していた「ゼロ関税協定」とは異なる内容だが、30%の関税が回避されたことで一定の成果と見る向きもある。

イタリアのメローニ首相は「正面衝突の回避」と評価し、ドイツのメルツ首相も「貿易摩擦の回避により、自動車産業を含む輸出主導型経済への打撃が防がれた」と歓迎した。実際、フォルクスワーゲンやBMWなどは現在27.5%の自動車関連関税の影響を受けているとされる。ただし、欧州議会のバーンド・ラング貿易委員長(独・SPD)は、EUの多額の投資が「欧州の利益を犠牲にしかねない」と懸念を示している。
ドイツ産業連盟のニーダーマーク理事は「賢明な妥協とは言えない」とし、15%の関税が輸出に与える影響に懸念を表明。一方、欧州産業円卓会議は慎重ながら支持を示し、今後さらに多くの産業が例外リストに加わることを期待している。フォン・デア・ライエン氏も「特定産業にとって15%の税率は挑戦となる」と認めつつ、「EU最大の輸出市場における立場は守られた」と強調した。