7月26日に台湾で行われた大規模なリコール投票で、桃園地域の国民党立法委員・涂權吉氏と牛煦庭氏は議席を守り抜いた。一方、民進党は「桃園奪回」を掲げ、政治的反攻の最前線として6名の国民党立法委員全員をリコール対象にするという高い目標を立てていた。これは立法院での主導権を取り戻すだけでなく、2024年の「桃園完敗」から立ち直り、鄭文燦氏の不在でも勢力を再構築できるかを示す象徴的な戦いだった。しかし結果は無情で、民進党は桃園で再び抑え込まれ「全滅」を喫した。
かつて鄭文燦氏の指揮で最盛期を築いた民進党桃園チームは、林志堅氏(前新竹市長)が市長選を前に論文問題で撤退したことで失速。2024年の立法委員選挙でも桃園で全滅し、さらに鄭氏自身の汚職起訴が追い打ちをかけた。今回のリコールは長く待ち望んだ反攻の好機と目され、とりわけ牛煦庭氏の第一区(蘆竹・龜山・桃園)と涂權吉氏の第二区(大園・觀音・新屋・楊梅)が焦点となった。

牛煦庭氏への逆風「地に足がついていない」との批判も、地盤は崩せず
牛煦庭氏の選挙区は、若年層の有権者が多く人口流入も続く地域。2020年には中壢で王浩宇氏のリコールが成功し、いわゆる「リコール文化」が根付いた地でもある。ここは民進党が長らく強固な基盤を築き、鄭文燦氏が市長時代に最も重視してきたエリアで、元立法委員の鄭運鵬氏も長く選出されてきた。だが2024年の選挙で、鄭氏の後継を目指した鄭運鵬氏は牛氏に敗北。民進党の牙城が初めて国民党に傾いた。
牛氏はテクノロジー畑出身の若手で、就任から半年足らずの間に強気な政治スタイルが反発を招き、議会での質問も物議を醸した。地元では「空中戦ばかりで地上戦を軽視している」「地に足がついていない」との批判も聞かれたが、それでもリコールには至らなかった。

民進党が強い第二区でも失敗 涂權吉氏リコールの熱量は不足
涂權吉氏の選挙区は伝統的に民進党が強い地域で、これまで県市長選や立法委員選で民進党候補が優勢だった。しかし、国民党側があまり力を入れてこなかった「走りにくい選区」とも言われる。地元関係者は「鄭文燦氏のように派閥を統合できる人がいないと、複雑な恩讐や宗教勢力を調整するのは難しい」と語る。さらに、涂氏のリコールに対する熱意が民進党支持層の中で盛り上がり切らなかったことも勝敗を分けた。

王義川氏が「空軍」を率いて奮闘も、票を伸ばせず
民進党は空中戦で論調を強化し、地上戦では基層組織への浸透を試み、短期間での逆転を狙った。「親中派の立法委員をリコールせよ」と掲げ、動画やSNS投稿で世論を喚起。民進党政策会の王義川執行主任は「空軍司令」として多くのライブ配信や短編動画で発信し、リコールを「民主主義を守るための防線」と位置づけて号令をかけた。7月20日の「桃園奪回ファイナルスリー」イベントは延べ10万人が視聴し、SNSの拡散力は旧来の派閥動員を凌駕したが、最終的な結果にはつながらなかった。

投票前の街頭対立 民進党、桃園での「ゼロ勝」脱却ならず
リコール投票の最終局面を迎えた週末、桃園の街頭では両陣営の対立が一層鮮明になった。7月20日、リコール推進側が呼びかけた「貪食蛇車隊」が約60キロにわたる広いエリアを巡り、6つの区を横断する大規模なデモ走行を展開。夜には風禾公園でリコール集会が開かれ、大雨の中にもかかわらず3000人以上が集結し、中央と地方の連携による空中戦と陸上戦を組み合わせた動員が行われた。
しかし、その勢いも最終的には実を結ばず、牛煦庭氏や涂權吉氏をリコールすることはできなかった。民進党は今回も桃園で「ゼロ勝」の状況を打破できず、今後は他地域との組織連携を強化し、桃園チーム全体の戦力を立て直すことが喫緊の課題となっている。人口規模の大きい桃園は、2026年・2028年の選挙でも民進党にとって重要な戦場となる可能性が高いからだ。
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