特集》葉元之氏、まさかのリコール回避 「全党で一人を救う」も、なお漂う暗雲

2025-07-26 20:33
大規模なリコール選挙戦で、国民党の立法委員・葉元之氏(写真)は常にリスクの高い候補リストに入っていた。(写真/劉偉宏撮影)
大規模なリコール選挙戦で、国民党の立法委員・葉元之氏(写真)は常にリスクの高い候補リストに入っていた。(写真/劉偉宏撮影)
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台湾・新北市板橋区の縣民大道と台65線沿いでは、東西でまったく異なる空気が広がっている。第7選挙区に含まれる61里では、最近のリコール投票をめぐって一段と熱気を帯びた。注目の的となった国民党の立法委員・葉元之氏は、約3年で3度目となる投票を経て、ついにリコールを回避。政界の予想を覆す結果となった。

2024年1月、葉氏は立法委員選挙をかろうじて制したが、その後すぐにリコール運動の渦中へ。今回は対立候補のスキャンダルに助けられることもなく、過去の言動が次々と問題視され、苦しい戦いを強いられた。

リコール投票直前の7月19日午後、国民党は板橋第一運動場前で「新北愛国者行動」を開催し、リコールを仕掛けられた新北市の6人の立法委員を後押しする「反リコール」集会を実施。前総統の馬英九氏、台中市長の盧秀燕氏、台北市長の蔣萬安市氏らが登壇し、大雨の中でも「参加者は2万人超」とアピールした。しかし舞台上で韓国瑜立法院長が演説を始めた際、そこに葉氏の姿はなく、しばらくして舞台裏から服を整えながらゆっくり現れ、韓氏の背後に立った。

20250719-「反悪いリコール,独裁に対抗!同意しないことにしたリコール」北部黄金週集会,国会院長韓国瑜。(陳品佑撮影)
7月19日のリコール投票直前の週末、国会院長・韓国瑜氏(中央)が救援に駆けつけたが、葉元之氏(左から二人目)はまたしても遅刻した。(写真/陳品佑撮影)

選挙情勢が不利なのに態度は消極的――党内からも嘆きの声

こうした遅刻は初めてではない。新北市長・侯友宜氏が6人の党籍立法委員を招き、反リコールの打ち合わせを行った際、ほかの委員は全員時間通りに集まったのに、葉氏だけが遅れて現れたという。6月初旬に侯氏が板橋の新設地下駐車場を視察した際も、葉氏は現場にはいたものの、途中でヘルメットを外して早退したとされ、侯氏が「どうしてこうなるんだ」と思わず漏らしたという証言もある。

市政府は、立法委員が市政をアピールしやすいように視察予定や資料を事前に用意し、支援体制を整えているが、葉氏は他の委員と比べても出席が少ない。党本部も物資提供や人員派遣で「反リコール」活動を後押ししていたが、葉氏側からの動きは乏しかった。こうした態度に、党内からも「状況は厳しいのに消極的すぎる」と不満の声が上がっている。

20250629-新北市長侯友宜(写真)29日同行立法委員王鴻薇と市場を訪れ票のお願いをし、反リコール投票を呼び掛ける。(柯承惠撮影)
新北市長の侯友宜氏(写真)はかつて新北の立法委員を招集してリコール対策会議を開いたが、葉元之氏は遅刻した。(写真/柯承惠撮影)

「板橋は本来の地盤ではない」勝利の裏に相手候補の自滅

そもそも葉氏が板橋東区で勝利したのは、本人の地力によるものとは言いがたい。板橋東区はもともと国民党優勢とされていたが、近年は外部人口の増加で構図が変化し、選挙結果は「青と緑が揺れる地域」となっている。2024年の選挙で葉氏はわずか約2500票差、得票率差1.5ポイント未満で辛勝した。過去、2008年以降の選挙で同選区を連続当選したのは民進党の羅致政氏のみだった。 (関連記事: 特集》UMC創業者・曹興誠氏が率いた大規模リコール運動、失敗に終わる 民進党は利用するだけなのか? 関連記事をもっと読む

葉氏はもともと新北市議時代、サービス拠点を板橋西区に置いていたが、立法委員当選後に東区に事務所を設置。2024年の勝利の大きな要因は、対抗馬だった羅氏のスキャンダルだった。選挙直前、羅氏とされる人物の性的な私的映像や、蔡英文前総統との会話録音とされる音声が相次いで流出。羅氏は境外勢力の介入だと否定したが、「ビデオゲート」「録音ゲート」と呼ばれる騒動の中で支持を失い、最終的に敗北を認めた。

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