呉典蓉コラム:台湾総統・頼清徳の大博打 わずか8.7%の有権者がその未来を左右

2025-07-24 13:15
史上初の大規模リコールは7月26日に投票が行われる予定で、結果はいまだ予測がつかない。写真は「護国大遶境」が花蓮を出発した際の様子。(写真/反共護台聯盟提供)
史上初の大規模リコールは7月26日に投票が行われる予定で、結果はいまだ予測がつかない。写真は「護国大遶境」が花蓮を出発した際の様子。(写真/反共護台聯盟提供)
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台湾では世界初の大規模リコールが、7月26日(土)に決着を迎える。与野党双方にとって生死を分けるゼロサムゲームであり、台湾の民主主義を大きく揺さぶるこの投票は、リコール区の有権者(35%)のうちわずか25%が投票すれば成立する。極端なケースでは、全有権者のわずか8.7%が台湾の進路を左右することになる。この仕組み自体、民主主義を標榜する台湾にとって想像しがたい現実だ。リコールの正当性を演出するため、双方が嘘や二重基準を用い、どんな結果が出ようと台湾は傷を負う――そう言わざるを得ない。

大規模リコールの原点:「国会少数」を認めないことが混乱の根源に

そもそも今回の大規模リコールは、何を目的としているのか。リコール団体を率いる曹興誠氏の発言に、その端緒が見える。音楽家の羅大佑氏が「選挙に負けた民進党が駄々をこねてちゃぶ台をひっくり返したようなものだ」と批判したところ、曹氏はこう反論した。「立法委員選挙で民進党が獲得した地域票と政党票の合計は1,107万7,338票で、国民党の1,016万6,509票を上回っている。票数では負けていない。ただ、一票の格差のせいで議席数は国民党より1少なくなった」と述べ、リコールは「選挙敗北の逆上」ではないと強調した。

しかし、政党票には民衆党の得票が含まれており、国民党と民衆党を合わせると全体の56%に達する。民進党は36%にとどまり、明らかに国会では少数派だ。曹氏の論理は、民進党支持者の間でリコール正当化の理屈として繰り返されているが、現実を都合よく除外している。根本には「国会少数」という立場を受け入れない民進党の姿勢があり、それこそが政局混乱の起点になっている。さらに、劣勢を挽回しようとリコール団体と民進党が進める「赤いレッテル貼り」の戦略は政治的対立を激化させ、政治倫理を損ない、嘘や二重基準を日常化させてしまった。

大規模リコールが招いた連帯損失 嘘と二重基準が政治の日常に

例えば、曹興誠氏はボランティアがなぜ大規模リコールを発起したのかについて、こう語っている。

「立法院は今や独裁的な“殴り合いの場”になってしまった。傅崐萁氏が提出する法案は、他の立法委員に内容を事前に知らせないまま強行採決され、民進党が反対すれば激しく殴られる」。

だがこの説明は、事実と大きく異なる。昨年、国会改革法案をめぐって与野党が激しく衝突した際、議長席を守ろうとしたのは野党の国民党・民衆党陣営であり、議長席を奪おうとしたのは民進党側だった。実際、民進党の鍾佳濱委員は国民党の陳菁徽委員に飛びかかって倒し、郭国文委員は事務総長の周万来氏から議事文書を奪い、邱議瑩委員は羅智強委員を平手打ちし裁判所から賠償を命じられている。これらはすべて、民進党側が国会改革法案を阻止するため自ら物理的行動に出たものだ。 (関連記事: 評論:台湾・大規模リコールが導いた「たった一つの結末」──分断と疲弊の1年 関連記事をもっと読む

一体どの民進党立法委員が「法案に反対したことで殴られた」というのか。

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