台湾で前例なき「大規模リコール」実施へ 米国の「沈黙」が民進党に追い風?野党幹部「リコールは楽観できない」

2025-07-24 11:50
「大規模リコール」は今週土曜日に投票が行われる予定で、国民党内部では情勢を楽観視する声もあるが、一方で厳しい外部環境が国民党に不利に働くとの見方も根強い。写真は国民党主席・朱立倫氏(資料写真、撮影:顏麟宇)。
「大規模リコール」は今週土曜日に投票が行われる予定で、国民党内部では情勢を楽観視する声もあるが、一方で厳しい外部環境が国民党に不利に働くとの見方も根強い。写真は国民党主席・朱立倫氏(資料写真、撮影:顏麟宇)。
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7月26日、国民党所属の立法委員24人を対象とした「大規模リコール」が実施される。この情勢について現時点での分析では、国民党側に不利な要因が3つあるとされている。第1に、台湾の政治勢力の基盤は民進党優勢であり、全体的な世論環境が国民党にとって不利であること。第2に、米国の態度がすでに民進党寄りになっているように見えること。第3に、国民党が今回のリコールを「内閣不信任」につながる政権攻防戦として十分に昇華できておらず、その戦略に誤りがあるのではないかという見方だ。ある在野党の幹部は《風傳媒》の取材に対し、「今回のリコール選挙は楽観視できない」と語った。

今回リコールの対象となっている議員は以下の通り。基隆市では林沛祥氏、台北市では王鴻薇氏、李彥秀氏、羅智強氏、徐巧芯氏、賴士葆氏、新北市では洪孟楷氏、葉元之氏、張智倫氏、林德福氏、廖先翔氏、桃園市では牛煦庭氏、涂權吉氏、魯明哲氏、萬美玲氏、呂玉玲氏、邱若華氏、新竹市では鄭正鈐氏、台中市では廖偉翔氏、黃健豪氏、羅廷瑋氏、雲林県では丁學忠氏、花蓮県では傅崐萁氏、台東県では黃建賓氏となっている。

20250719-「反惡罷,戦獨裁!不同意罷免」北部黃金週造勢晚會,国民党主席朱立倫、新北市長侯友宜、立法院長韓国瑜。(陳品佑撮)
国民党は19日、「悪質なリコールに反対し、独裁と戦う!罷免に不同意を」のスローガンを掲げ、北部で「黄金ウィーク決起集会」を開催した。会場には朱立倫主席、新北市の侯友宜市長、韓国瑜立法院長など党の重鎮が出席した。(写真/陳品佑撮影)

民間から発起され、民進党の呼応を受けて進められている今回の大規模リコール運動について、国民党内部では選挙情勢を比較的楽観視する声がある。仮に一部の立法委員が失職したとしても、立法院における与野党の勢力構図に大きな変化はないと見ているためだ。しかし、外部の一部分析では、全体の情勢には3つの要因が影響しており、国民党にとっては決して有利とは言えないとの見方も出ている。

台湾の選挙地盤は民進党優勢 国民党にとって不利な情勢続く

まず、今回のリコールは総統選や統一地方選挙のような全国規模の選挙ではなく、補欠選挙やリコールといった単一案件の選挙であるため、投票率はそれほど高くならない傾向がある。政治への関心が低い中間層の有権者は投票に消極的で、実際に投票所へ足を運ぶのは、与党・野党いずれかへの支持意識が強い層に限られるケースが多い。実際、これまでのリコール選挙でも、2015年に行われた国民党籍の蔡正元氏のリコールでは投票率25%、2017年の時代力量・黃國昌氏のケースでは27.75%、2021年の基進党・陳柏惟氏のリコールは51.72%、2022年の無所属・林昶佐氏のリコールでは41.93%となっている。

このように投票率が高くない選挙では、最終的にカギを握るのは与野党それぞれの「基礎票」のぶつかり合いとなり、どちらが多くの支持層を動員できるかが勝敗を左右する。だが、2024年の総統選の結果を見ると、民進党の頼清徳氏が得票率40%、国民党の侯友宜氏が33.49%、民衆党の柯文哲氏が26.46%という結果だった。全体的に見れば、民進党の支持基盤は40%前後で安定している一方、国民党は約30%にとどまっており、もともと基礎票の面でも国民党が不利な立場にあるのは明らかだ。

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