独占インタビュー2》中国の上陸戦力が予想以上の拡大 元海上幕僚長・武居智久氏「日米台はキルチェーン強化が急務」

2025-07-24 12:58
中国の075型強襲揚陸艦。(写真/ウェイボーより)
中国の075型強襲揚陸艦。(写真/ウェイボーより)
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中国が水陸両用作戦の配備を加速させ、075型水陸両用強襲揚陸艦や071型ドック型揚陸艦の就役ペースが想定を上回っている。さらにロールオン・ロールオフ船の軍事転用や電子戦機の配備を組み合わせる中、元海上幕僚長の武居智久7月21日、《風傳媒》の独占ビデオインタビューで強い懸念を示した。北京当局の台湾への武力行使に向けた準備は「大幅に前倒しされる可能性がある」とし、「1年以内に攻撃を開始する能力と兆候がそろいつつある」と警告する。ただし、すぐに行動に移すことを意味するわけではないが、地域の防衛体制に対し実質的な脅威と大きな圧力を与えるのは確実だと強調した。

武居氏は「これは単なる軍備競争ではなく、戦略ペース自体の根本的転換だ」と指摘。台湾の防衛思考が依然として「上陸遅延」という単一の軸にとどまるなら、北京が進める「迅速な島嶼奪取、衝突閾値の急速な引き上げ」に効果的に対応するのは難しいと率直に語った。日米台の三者は、協調の枠組みを急ぎ調整し、情報識別・共有から統合作戦構想に至るまで、地域危機を実際に抑止する防衛ラインを築く必要があると訴えた。

また、地域情勢が厳しさを増す中で「台日間には海洋情報を交換するプラットフォームが存在せず、双方が先進的な監視装置を持っていても、合意に基づく『海洋状況認識MDA, Maritime Domain Awarenessを形成するのは難しい」と警鐘を鳴らした。その一方で、フィリピン、日本、オーストラリア、米国の間では、すでに成熟した情報共有メカニズムが存在していると指摘した。

以下は《風傳媒》が行った4つの質問に対する武居氏の詳細な分析である。テーマは、中国の民間船を利用した軍事行動への対応、中国海軍の急速な増強、日米台の協力と作戦能力の向上など多岐にわたる。

日本前四星海上自衛隊幕僚長武居智久於7月21日於淡江大學發表全英文視訊演說,主題為「台灣有事下的海上交通保護〜日本的視點」(台湾有事における海上交通保護〜日本の視点)。(王秋燕攝)
日本の元海上幕僚長・武居智久氏が7月21日、淡江大学で全編英語によるビデオ講演を行った。テーマは「台湾有事における海上交通保護〜日本の視点」。(写真/王秋燕撮影)

中国の軍民融合が境界線を曖昧化、海自は「ブルー・オン・ブルー識別」を強化すべき

質問一:中国がロールオン・ロールオフ船等の民用船舶を軍事活動に運用し、軍民の境界線を曖昧にしていることに対し、日本海上自衛隊はどのような戦略的調整を行うべきか。例えば商船監視の強化、偽装船舶識別センサーの配備、沿岸部での民間船舶緊急搭載応急隊の展開などが考えられる。

武居氏は、中国が軍民融合方式で水陸両用作戦準備を進めていることは、軍民境界線を深刻に曖昧化し、従来の海事戦略に巨大な挑戦をもたらしていると指摘した。日本海上自衛隊は根本的に海上作戦思考を再考する必要があり、特に「ブルー・オン・ブルー識別」(Blue-on-Blue identification)能力を強化し、友軍誤射や敵情誤判を回避すべきだとした。 (関連記事: 独占インタビュー1》台湾海峡防衛に「断線」リスク 元海上幕僚長・武居智久氏が日米台の新協力案を提言 関連記事をもっと読む

同氏はいくつかの重要な戦略を提示した。まず、多元識別能力の強化で、AI画像認識、ソナー、レーダーを組み合わせた先進センサーを配備し、商船を常態的に監視し、偽装軍事行動の存在を探知する。次に、多方面情報を統合してクロス検証を行い、商船の真の用途と行動意図を正確に区分する。

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