独占》台湾情報機関トップ人事 台北支部を掌握した副局長候補、接待を控える理由

2025-07-23 16:17
調査局の新たな人事異動は、陳白立局長の人事刷新の意図を反映し、国家安全保障のための捜査能力を強化する方針だ。(写真/蔡親傑撮影)
調査局の新たな人事異動は、陳白立局長の人事刷新の意図を反映し、国家安全保障のための捜査能力を強化する方針だ。(写真/蔡親傑撮影)
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2025年7月16日、内政部警政署と法務部調査局で大規模な人事異動が予定されていた。警政署長の張栄興氏と調査局長の陳白立氏はすでに人事名簿を準備していたが、7月26日に迫る大規模リコール投票の行方次第で立法院の構図が変われば、民進党の政権運営や2026年の統一地方選挙にまで影響しかねない。警察と調査局は買収摘発や選挙秩序の維持を担う要の組織であり、今は動かず静観すべきだとの判断から、内政部と法務部は急きょ異動を見送った。すでに固まっていた人事が、リコールの結果次第で変わるのか注目されている。

治安当局のある高官によれば、警察は国民の守護者であり、調査官は地方での情報収集を担う現場最前線の組織だ。地方選挙の生態を左右する重要な鍵を握っており、これまでも高層人事は一寸の狂いも許さない慎重な配置が続いてきた。2026年の統一地方選では国民党が地盤死守を、民進党が奪回を、民衆党が拡大を狙い、激戦は避けられない。まだ1年以上あるとはいえ、警察・調査局高層は早めに地方に人員を配置し、現地の状況をつかむ必要がある。

20250505-警政署長張榮興5日至立院備詢。(柯承惠攝)
警政署長の張栄興氏は、高層人事異動の計画を進めている。(写真/柯承惠撮影)

調査局のトップ層入り 陳白立30期組が指導班子の主力に

今回の警察・調査局の大規模人事異動では、調査局第一副局長の孫承一氏が2025年7月16日に定年を迎えることから、局内の高層人事が連動し、政治・情報機関の両面で注目を集めている。調査局は局長、3人の副局長、1人の主任秘書で権力中枢を形成する。前身は国民党時代の情報機関・中統で、組織は厳密かつ秘匿性が高く、内部の最上層の人物は実名では呼ばず、伝統的に「局の先生役」「重鎮」といった呼び方で敬称を使ってきた。現在もこの慣習が残り、局長などをそのように呼ぶことで、地位と権限の大きさを示している。

局内ではこれまで、国内安全調査処長の陳宇源氏、国家安全維護処長の葉麗卿氏、台北市調査処長の徐国楨氏の3人が最有力とされてきた。いずれも局長の陳白立氏と同じ調査班30期の同期生である。調査官によれば、陳白立氏の就任により、調査局は「30期世代」が指導層を担う時代に入った。30期以前の職員は、局長と共に働いて実績を認められた者以外は処長級ポストに就くことが難しく、いわば「昇進の機会を逃した」という状態だ。

事情通によれば、陳白立氏が、年功序列が色濃い調査局でこれほど思い切った抜擢を行ったのは、1年余り前に賴清徳総統が彼を抜擢した経緯と同じだという。かつては副局長の孫承一氏や呉富梅氏を賴総統が面談する予定だったが、二人が1~2年以内に定年を迎えることが分かり、長期的な実行力に不安があると判断された。そのため、より若い局員を推薦するよう求められ、定年まで5年以上あった陳白立氏が面談を受け、一発で抜擢された。陳白立氏は就任後も、賴総統の方針に沿って、人事の若返りをさらに進めている。 (関連記事: 京華城案件》「私はもう7人目のルームメイトと過ごしている」柯文哲氏、検察に反論「あなたたちはネット軍だ」 関連記事をもっと読む

20250107-總統賴清德(左)出席法務部調查局調查班第61期結業典禮,圖中為法務部部長鄭銘謙、圖右為調查局長陳白立。(蔡親傑攝)
調査局長の陳白立氏(右)の就任後、人事の若返りが加速している。(写真/蔡親傑撮影)

調査局長が私的な宴席を禁止 昇進候補は外出を控える

調査局内でトップ層に入ることは、調査官たちにとって最大の栄誉であり、誰もが憧れる到達点だ。陳白立局長の側近リストに名を連ね、次の指導層に抜擢されようと、各方面からの働きかけも絶えないが、陳局長の背後には総統という強固な後ろ盾があり、簡単には影響を及ぼせない状況になっている。

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