トランプは台湾を「切り札」にするのか 新チューリヒ紙が警告「対中戦略なき混乱」

2025-07-24 13:22
米大統領トランプ氏。(AP通信)
米大統領トランプ氏。(AP通信)
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トランプ大統領がホワイトハウスに返り咲いて半年。彼の対中政策はいまだ輪郭が見えず、世界の外交筋やアジアの同盟国の間で不安が広がっている。1期目では中国に対する強硬路線を鮮明に打ち出したが、2期目となった今は、強気な発言と実利を優先する取引路線の間で揺れ動き、ワシントン内部からも矛盾するシグナルが飛び交う。国防総省の強硬な布陣、国務長官の現実路線、そしてトランプ氏本人の読めない「ディール」――この「トランプ・ミステリー」は、世界の地政学に大きな影を落としている。

米中関係は世界で最も重要かつ複雑な二国間関係とされる。2025年1月、トランプ氏が大統領に復帰して以降、アジアの新興大国・中国への対応は注目の的だった。しかし半年経っても、明確な戦略を示す兆しはない。

1期目のトランプ政権は、2017年の「国家安全保障戦略」、2018年の「インド太平洋戦略」、2020年の「対中戦略指針」などを相次いで発表し、中国を「米国の地位を脅かす戦略的競争相手」と位置付けた。だが、トランプ2期目の現政権にはそうした基調文書がまだなく、8月末に予定されている「国防戦略報告」でようやく方向性が見えるのではないか、と期待されている。

スイスの有力紙「新チューリッヒ新聞」は「いまのワシントンは対中強硬派と“トランプ流ディール”の間を行き来している」と指摘。トランプ氏は関税問題や内政課題に重点を置き、かつて戦略の最優先だったアジアへの関心は薄れつつある。実際、復帰から半年間、彼が公の場で中国を語ることは少なく、中東やウクライナ、さらにはグリーンランドやパナマの話題が目立った。

「トランプには中国戦略がない」と断言するのは、米シンクタンク「ドイツ・マーシャル基金」のボニー・グレイザー氏だ。「そもそもどの国に対しても明確な戦略を持っているようには見えない」とも述べている。

国防総省で進む「対中連携」 しかしトランプ本人の意向は?

うした混乱した状況は、トランプ政権1期目と鮮やかに対照をなしている。トランプ1.0では少なくとも3つの戦略文書を発表し、路線を明確に示していた。2017年12月の「国家安全保障戦略」、2018年の「インド太平洋戦略枠組み」、2020年5月の「対中戦略方針」で、いずれも中国を「米国のインド太平洋地域での地位を脅かす戦略的な競争相手」と位置づけ、過去の関与路線を改め「原則的現実主義」を打ち出していた。

一方、トランプ2.0ではいまだ明確な対中戦略が示されておらず、外部の関心は8月末に発表予定の「国防戦略報告」に集まっている。そこから、トランプ政権が中国をどう見ているのか、ようやく手掛かりが得られるだろう。

この報告を取りまとめているのは、ペンタゴンで第3位の実力者、戦略担当の国防次官エルブリッジ・コルビー氏だ。コルビー氏は2017年の「国家安全保障戦略」で中国を最大の挑戦相手に位置づけたキーパーソンのひとりで、2021年の著書『拒否の戦略』では、米国の核心目標は「中国をアジアの覇権国にしないこと」だと明確に説いている。
そのために必要なのは、インド太平洋地域で「反覇権連合」を築くことだと考えており、日本、オーストラリア、韓国、フィリピンといった同盟国と結束し、中国に対する確かな軍事的抑止を形作るべきだと主張している。

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