特集》台湾・新竹リコール戦 野党連携で逆風を跳ね返し、藍白陣営が議席を死守

2025-07-27 12:38
新竹で藍白連携の戦術が功を奏し、新竹市長の高虹安氏と国民党立法委員の鄭正鈐氏がリコールを乗り越えた。(写真/方詠騰撮影)
新竹で藍白連携の戦術が功を奏し、新竹市長の高虹安氏と国民党立法委員の鄭正鈐氏がリコールを乗り越えた。(写真/方詠騰撮影)
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台湾で行われた大規模なリコール投票の結果が発表され、汚職で起訴され職務停止中の新竹市長・高虹安氏と、国民党の立法委員・鄭正鈐氏がリコールの危機を乗り越えたことが明らかになった。民衆党は党主席・黄国昌氏の指導のもと、国民党との「藍白合(国民党と民衆党の協力)」を進め、最終的に民進党と市民団体によるリコール運動は成果を上げられなかった。

注目すべきは、新竹市が民進党団総召(議会代表)・柯建銘氏の地盤であり、一級戦区と目されていたことだ。その新竹で高虹安氏と鄭正鈐氏がどのようにリコールを防ぎ切ったのかが焦点となる。民衆党の前主席・柯文哲氏は2024年の大統領選で国民党との「藍白合」を約束したが、のちに破棄した経緯がある。今回の選挙は「その戦術を上回ることができるのか」という試金石となった。

20250610-民進党団総召柯建銘10日出席立法院党団協商。(柯承惠撮)
民進党団総召の柯建銘氏は大規模リコールを推進したが、自身の地盤である新竹で敗北した。(写真/柯承惠撮影)

黄国昌氏、新竹死守を指示 高虹安氏・鄭正鈐氏が藍白連携へ

新竹市長リコールが動き出した段階で、民衆党中央は黄国昌氏が「新竹を死守せよ」と指示。党中央は「新竹保安隊」を設置し、地元の支持を固めた。新竹野球場問題や統一配分金などのテーマを掲げ、地元組織を通じて宣伝を行った。

市政防衛では、代理市長・邱臣遠氏が元民衆党スポークスマン・楊宝楨氏を市政府発言者に据え、リコール側の批判に逐一対応。高虹安氏は基隆市長・謝国樑氏から「政績を伝えるべき」と助言を受け、投票前2週間で教育・介護・交通・環境といった施政成果を発表する記者会見を重ねた。

鄭正鈐氏がリコール対象となった際、国民党新竹市党部は民衆党新竹市党部に協力を要請。両者は陸戦でも足並みをそろえ、選挙戦後期には藍白の大物が次々と新竹を訪れ、街頭を共に回る姿が見られた。

20250615-民衆党15日新竹セミナー開催。(民衆党提供)
民衆党は新竹に注力し、防衛力を強化するとともに空中戦での支援も提供した。(写真/民衆党提供)

黄国昌氏、小草に呼びかけ 新旧のわだかまりを超える

国民党が接戦区を抱えるなか、民衆党は「小草(民衆党支持層)」の動きがカギになると判断。黄国昌氏は早い段階で国民党支援の姿勢を打ち出し、後半戦では全国を回って応援を展開した。

一部支持者には2024年の「藍白不合」や京華城事件で国民党に不満を持つ人もいたが、黄国昌氏は「民主法治を守るため、新旧の国民党への敵対を捨てるべきだ」と訴え、投票を呼びかけた。結果として小草たちは、新竹で黄国昌氏が導いた藍白合の路線に従ったことが証明された。

20250720-民衆党主席黄国昌、反リコールイベント出席。(柯承惠撮)
民衆党主席の黄国昌氏は、リコール戦で国民党を全面的に支援し、全国を巡回して後押しした。(写真/柯承惠撮影)

大規模リコールが野党の士気を削ぐことを懸念 民衆党は国民党への支援を決断

民衆党が最も危惧していたのは、民進党が再び国会の過半数を奪うリスクに加え、民衆党立法院党団が主導する8月23日の「核三継続運転」公投への影響だった。もし国民党の立法委員が大量にリコールされれば、野党全体の士気が下がり、投票率が低下しかねない。そこで民衆党は、国民党を支えることが必要だと結論づけた。

民衆党内部では「投票意欲の低さ」も課題とされている。選挙のない年は投票率が下がりやすく、過去に謝国樑氏のリコールで支持者の反応が鈍く、投票率が伸びなかったことも教訓となった。このため後半戦の空中戦では「反対票を投じよう」と積極的に呼びかける戦術をとった。

20250720-民衆党、反リコールイベント開催。(柯承惠撮)
民衆党は、大規模リコール戦の敗北が8月の核三公投にも影響を及ぼすと懸念している。(写真/柯承惠撮影)
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