約1年にわたり準備が進められてきた罷免案は、7月26日夜、国民党所属の24人の立法委員に対する投票がいずれも法定投票数に届かず、成立しないまま終わった。中国大陸の国務院台湾事務弁公室(国台弁)は翌27日朝、簡単な声明を発表し「今回の罷免案は民意を得られず、改めて台湾の主流の意志が示された」と述べた。もっとも、その言い回しからは、投票結果をすでに予想していた様子がうかがえ、驚きはなかったとみられる。
国台弁は同日午前、記者団の質問に答える形でこの声明を出した。陳斌華報道官は「民進党当局は『台湾独立』の本性と『一党独大』の野心から、島内の民生を顧みず、たびたび政治的な対立をあおり、あらゆる手段で政治的対立勢力を弾圧し、『緑色恐怖』をつくり出し、社会の分断を深めている。その姿は『偽りの民主、実態は独裁』という虚偽の本性をさらけ出している。投票結果は、民進党による政治的操作が島内の人々の思いにまったく反しており、支持を得られていないことを示した」と述べた。
党系メディアが今後の両岸情勢を予測、好転か悪化か
多くの中国官製メディアが今朝、そろって「今後の台湾の政治情勢」をめぐる予測記事を相次いで発表した。党系メディアの《海峡導報社》は「大規模リコール後の7大影響:柯文哲氏が前倒しで出獄か、卓榮泰氏と林右昌氏が辞任する可能性が高い」と題した記事を掲載し、リコール後の展開を分析した。記事では「民意機構の政治生態は安定に向かい、『国民党・民衆党協力』は順調に進展する。賴清徳氏と民進党が『自分たちのため』の法案を通すのはますます困難になり、民進党陣営の議員が提出する対中挑発的な動議も通りにくくなる」と指摘している。
この前、上海東亜研究院の研究員・包承柯氏が《風傳媒》の取材に応じた際にも、今回示された台湾の民意は両岸関係の安定に資するもので、今後さらに台湾向けの優遇政策が打ち出される可能性があると語っている。ただし、賴清徳氏は強硬な性格で知られ、今回の大規模リコールの失敗を自らの政権基盤を揺るがすものとは捉えないため、現時点での対中政策を変えることはないだろうとの見方を示した。
また、今回のリコールがなぜ失敗したのかについて、党系メディアの《台海網》は「『大規模リコール』が天災とぶつかったとき、災害被災者が切り捨てられ、民進党は『天の時・地の利・人の和』をすべて失った状況にある」と題する記事で、その背景を分析している。
中国民間で「罷免案」への異常な関心
罷免案の前夜、中国のSNS「新浪微博」上で、あるブロガーが罷免案に関する投票を呼びかけた。投票数はおよそ9000票に達し、多くのユーザーが今回の罷免案の行方に注目していることがうかがえた。
また、ソーシャルメディア上では多くの中国のナショナリストが、それぞれの視点から罷免案について意見を表明している。山東出身のある中国人ブロガーは「国民党が統一戦線としての価値を持つのは、民進党の存在があるからだ。民進党が統一拒否の価値を持つのは、国民党の存在があるからだ。この二つの陣営のどちらかが欠ければ、台湾が直面する局面は一気に崩れ去る」と書き込んだ。
ただし、一部の中国の民間学者は、今後の両岸関係がどのような方向に進むかは、今回の罷免案を経て中国共産党が対台湾政策をどう調整するかにかかっていると指摘している。
編集:柄澤南 (関連記事: 小笠原欣幸が大罷免を分析:頼清徳の「団結十講」が裏目に、中共の台湾浸透が一層深化する恐れ | 関連記事をもっと読む )
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