百年政党は「対中再定義」へ? 台湾・国民党主席に鄭麗文氏 FT「親中路線がトランプ氏を刺激する恐れ」

2025-10-27 16:06
2025年10月20日、国民党主席当選人の鄭麗文氏(左)が国民党立法院党団総召集人の傅崐萁氏(右)や党団メンバーに挨拶。(写真/柯承惠撮影)
2025年10月20日、国民党主席当選人の鄭麗文氏(左)が国民党立法院党団総召集人の傅崐萁氏(右)や党団メンバーに挨拶。(写真/柯承惠撮影)
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台湾・国民党前立法委員の鄭麗文氏がダークホースとして主席選を制し、台海の地政学に新たな変数が加わった。英紙フィナンシャル・タイムズは24日、同氏の当選は百年政党の路線転換を示唆するだけでなく、親中的な姿勢がトランプ氏を怒らせる可能性があると指摘。米中の主導権争いが続くなか、台湾は一層不安定な綱渡りを迫られるとの見立てを示した。

開票結果の公表直後、習近平国家主席が祝電を送り、いわゆる「国共協力」への“オリーブの枝”を差し出し、「推進国家統一」への共働に期待を示した。もっとも、フィナンシャル・タイムズは、鄭麗文氏が北京とのより「温暖な」関係を志向する姿勢は、台湾の自衛力強化を繰り返し求めてきたドナルド・トランプ米大統領を刺激しかねないと指摘。11月1日に4年の党主席任期を開始する同氏は、高水準の国防費について「台湾は負担できない」と明言している。

国際危機グループのシニアアナリスト、楊皓瑋氏は、国防支出拡大に反対する立場が、台湾の防衛力強化を重ねて求めるトランプ政権下で、国民党と米国の摩擦を再燃させ得ると指摘した。

国民党の路線に対する不安

「国民党は脱皮し、再生しなければならない」。勝利演説で鄭氏はこう宣言し、大統領選の「三連敗」に区切りをつけ、2028年の政権奪還と台海の平和実現を掲げた。55歳の同氏は得票率50%で、体制派とみられた郝龍斌氏や羅智強氏らを大きく引き離した。圧勝は基層党員の現執行部への不満の噴出と受け止められ、FTは歴史的転換につながる可能性に言及する。

FTによれば、国民党は長らく「92年コンセンサス」という曖昧な枠組み「一つの中国」を前提に、その解釈は各自が表明することを対中路線の基軸としてきた。これに対し、選挙戦での鄭氏の主張は朱立倫氏より北京寄りとされ、「平和」と「協力」の必要性を一段と強調。対米依存の過度な拡大にも警鐘を鳴らした。

また同氏は、中国人としての自己認識を競争相手以上に前面に出し、「誰もが胸を張って『私は中国人だ』と言える社会にしたい」と語った。FTは、賴清徳氏の対中強硬姿勢に不満を抱く国民党支持層にとって、「中国人」アイデンティティの受容が難しくなっているとの見方を紹介。感情に訴える鄭氏のスローガンが、一部の藍陣営(国民党支持層を指す呼称)の心情に鋭く響いた可能性を示した。 (関連記事: 台湾・鄭麗文氏、党勢拡大へ着実に前進 傅崐萁氏と全面提携し「国民党中央常務委員会」の主導権をめざす 関連記事をもっと読む

もっとも、台湾大学の左正東氏は、鄭氏が従来から特段の「親中」イメージを帯びていたわけではないとしつつ、今回の選挙では「北京を批判しない」戦略が差別化要因になったと分析。ロンドン大学SOAS台湾研究センターのダフィッド・フェル氏は、郝龍斌氏の穏健姿勢は有権者の感覚に近いとしながらも、党員は同氏を「古く、体制色が濃い」と見なして鄭氏に賭け、「国民党を再び与党へ戻す最有力」と期待したと述べた。鄭氏が党に若々しいイメージを与え、若年層を引きつける可能性にも言及している。

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