独占》米国、国民党関係者と「鄭麗文現象」をめぐり意見交換を開始 彼女は「国民党の蔡英文」か、それとも「台湾版トランプ」か

2025-10-21 17:59
鄭麗文氏が国民党主席に当選し、政治的な人気が高まっている。彼女の今後の展開についての議論も増えており、中には鄭氏を「国民党の蔡英文」と例える声もある。(写真/顏麟宇撮影)
鄭麗文氏が国民党主席に当選し、政治的な人気が高まっている。彼女の今後の展開についての議論も増えており、中には鄭氏を「国民党の蔡英文」と例える声もある。(写真/顏麟宇撮影)
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台湾では、鄭麗文氏が中国国民党の新主席に選出された。民進党出身でありながら最終的に国民党主席となった歩みは、かつて国民党政府で勤務し、その後に民進党を率いて全面与党化させた蔡英文氏の初期経歴を想起させる。選出直後から、民間では「国民党の蔡英文」になり得るのかが話題になっている。『風傳媒』によれば、鄭氏は米側にとって“白紙”に近い存在で、当選後、米在台協会(AIT)は青陣営(国民党)の対外担当者らと面会を始め、鄭氏の理解を進めている。

前CSIS(戦略国際問題研究所)訪問学者の黃裕鈞氏は『風媒』に対し、蔡氏が民進党の独派スペクトラムを広げ、若い世代全体の支持を得たように、鄭氏がそれを実現できれば望ましいと述べた。

黃氏はさらに、鄭氏はむしろ米国のトランプ氏に近いと指摘。台頭の過程はいずれも反エスタブリッシュメントの力を背景にしており、トランプ氏の背後に「MAGA(アメリカを再び偉大に)」層がいたように、鄭氏の背後には国民党内の揺るぎない統派勢力があるという(当時、米大統領選にロシア介入があったとの指摘も一時浮上した)。

もっとも黃氏は、トランプ氏の要諦はMAGAの力を効果的に活用しつつ、政策自体はMAGAに振り回されなかった点にあると分析。ゆえに鄭氏も「統派の党首」にとどまる必要はなく、米側も彼女を単なる過渡的リーダーとは見なさないだろうとした。

米側が「鄭麗文現象」を分析

黃氏によれば、米側は現時点で鄭氏の実像を十分に把握しておらず、朱立倫氏が主席だった時期ほど理解が深くはない。このため新主席就任を受け、今後は接触を強化する見通しだ。まず確認したいのは、今回の当選が「個人要因」によるのか、あるいは背後に特殊な「現象」があってその受け皿となったのか、という点。鄭氏が単独で潮流を牽引したのか、それとも後方の勢力が力を投射したのか――米側は、鄭氏が象徴する力学を見極めようとしている。

20250924-風傳媒《下班國際線》節目主持人路怡珍、前美國戰略與國際研究中心CSIS訪問學者黃裕鈞(見圖)、風傳媒國際兩岸中心記者楊騰凱24日在節目中對談。(柯承惠攝)
鄭麗文氏は「国民党の蔡英文」か、それとも「国民党のトランプ」か――前CSIS訪問学者の黄裕鈞氏。(写真/柯承惠撮影)

黃氏はとりわけ、鄭氏の得票率が5割超で、党内における正当性が極めて高いことを指摘。加えて習近平総書記からの祝電が届いた事実にも触れた。国民党の特異な歴史的背景を踏まえると、鄭氏は両岸関係で一定の「歴史的使命」を帯びる可能性があり、祝電は彼女が今後の卓上の一プレーヤーであることを示すサインだという。ゆえに米国は、鄭氏を「理解し、対話すべき相手」と捉えるはずだと述べた。

黃氏は、韓国の李在明氏の事例を参照すべきだと指摘。李氏の利害は米国と一部しか重ならない面もあるが、在野期から将来性ある野党リーダーとして、米国は良好な関係維持に努めてきた。同様に、鄭氏も日米関係をにらんだ有効なパートナーとなり得るという。 (関連記事: なぜ鄭麗文氏は郝龍斌氏を破ったのか? 游盈隆氏が「世論調査」で読み解く国民党の「歴史的転換点」 関連記事をもっと読む

さらに黃氏は、鄭氏が自民党新総裁・高市早苗氏との会談に前向きな姿勢を示した点に言及。日本は米国にとってアジア太平洋の最重要同盟国であり、この動きは米側が鄭氏を「対話可能な相手」とみなす一因になるだろうと述べた。

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