論評:「天選の女王」誕生か?

2025-10-20 14:55
鄭麗文氏が国民党主席に当選。(写真/柯承惠撮影)
鄭麗文氏が国民党主席に当選。(写真/柯承惠撮影)
目次

台湾・国民党主席選挙で、鄭麗文氏が過半数の得票率で当選したことにより、百年の歴史を持つ政党が二人目の女性主席を迎えた。彼女の特異さは性別ではなく、その政治的経歴と性格が「伝統的な国民党」とは異なる点である。鄭氏にとって、この古い党の機械を動かせるかどうかは疑問の余地があり、国民党にとっても彼女のような風変わりな主席にどう適応するかが試練となる。

初めての女性主席である洪秀柱氏は「国民党の阿信」と称され、ベテラン立法委員としての実績を持つ。国民党が最も危機的状況にあった際には、総統選挙の重責を担ったが、早々に撤退を余儀なくされた。総統選後、党の残骸を拾い集め、1年3ヶ月の間立て直しに尽力した。

大胆に構想を追求する党主席 ─ 国民党らしくないリーダー

「思い切って登場した」鄭麗文氏は、学生運動世代の出身で、かつては民進党の人物であった。20年以上前の連戦主席時代に国民党に加わり、最も輝かしい時期には党のスポークスパーソンを務め、大陸を訪問する連戦氏に同行した(氷解の旅)。呉敦義時代には比例代表立法委員を務め、国民党との「つながり」は限られている。彼女は公然と「かつては民進党の人だった」と宣伝することを気にせず、「党を離れる」ことを誇りにしている。彼女にとっては国民党よりも学生運動世代の経歴こそがアイデンティティであるが、当時の学生運動世代がいまも彼女を仲間と認めているかは定かではない。

大規模なリコール活動が盛んだったとき、彼女は国民党の署名運動がどうしようもなくなっていると痛烈に批判した。批判の後、彼女は「党外在野大連盟」を結成し、国民党の看板を直接捨て、リコール対象となった国民党議員の支援に奔走した。当時の彼女の目的は単なる議席防衛ではなく、「台湾の民主主義を守る」ことだった。鄭氏は典型的な国民党政治家のように舞台がなくなれば退くタイプではなく、「政治を志業とする」民進党型の政治家に近い。党職がなく、党本部に居場所がなく、立法委員を退任して公職を失い、趙少康氏主導の「戦闘藍」にも参加できなかった状況でも、彼女は自力で舞台を見つけ出してきた。 (関連記事: 台湾・国民党の鄭麗文主席、習近平氏と会談意欲表明!両岸「反台湾独立」強調し、頼清徳の行動に「失礼」と批判 関連記事をもっと読む

鄭氏が党主席選を制する見込みがどの程度あるかは未知数だが、確かなのは、彼女が伝統的な国民党人のような打算をほとんど持っていないという点である。「重責を担えるか」「資金を集められるか」「乗る側か担ぐ側か」といった思考もない。何より、彼女には任期を全うすべき公職が一切ない。台中市長の盧秀燕氏が党主席選への不出馬を正式に表明した瞬間、鄭氏は取材中だったにもかかわらず、「盧秀燕氏が出ないなら、私が出る」と即答し、すぐさま選挙態勢を整えた。このような「欲しいものは取りに行く」政治的性格は、国民党内では異例である。例えば郝龍斌氏の場合、出馬を決めてもなお「本当は出るつもりはなかった」と繰り返し強調し、「立候補したい」という意思をあたかも恥じるかのように語った。

最新ニュース
光復か収復か占領か、劉維開氏が語る台湾史「光復」成立の経緯と実像を検証
鄭麗文、習近平との会談意欲表明!両岸「反台湾独立」強調し、頼清徳の行動に「失礼」と批判
空襲後停戦発表?イスラエル、再びガザへ攻撃、和平合意が宙に浮く
気象予報》台湾、台風24号(フンシェン)離れても北部・東北部で累積雨量300mm級の「大量降雨」警戒、気温20度台まで低下
イギリス議会、中国スパイ疑惑を受け「中国市民の立ち入り制限」を検討 下院議長が安全強化に言及
北京観察》習近平、台湾・国民党鄭麗文新主席に「異例のスピード祝電」 両岸関係「融氷」の兆しか
中国、レアアース輸出規制強化 TSMCは「第二波」直撃懸念 欧米供給網も実は中国依存
スターラックス航空の新章2》月8000人が利用!ミシュラン料理がラウンジに登場、どんな選択肢があるのか?
「伝説のブルーライン区間車」一日わずか10本未満 途中で全員下車、謎の南港基地へ 台北メトロが明かした「幻のルート」とは?
スターラックス航空の新章1》2026年の航路計画:ヨーロッパへの新路線と高雄の新拠点明らかに
大阪に香る台湾コーヒー「啡嚐嘉義」 阿里山の風味が日本の味覚を征服
飛行機の空席、移動に追加料金? 収益だけではない理由―機体バランスなど「航程全体に影響」
韓国財務長官が不満表明:「トランプが“ソウルは3,500億ドルを前払いせよ”と主張する」
エバー航空の客室乗務員が急逝、総経理ら6名幹部が謝罪 「1週間以内に調査完了を約束」
人物》台湾・国民党に波紋――元民進党で台湾独立を掲げた鄭麗文氏、郝龍斌氏を破って新党首に
人物》元台北市長・郝龍斌氏、「将軍の息子」も及ばず 国民党主席選で敗北
台北・微風広場が「夢への入り口」に変身!「アリス、仙境を救う」没入型展が11/8開幕
早稲田大学・岡本隆司教授が語る「中国史の長い影と習近平政権」
台湾人が日本地方創生の推進力に――民進党立法委員・陳冠廷氏「三方に利益をもたらす新しい国際協力」
中国が再び「レアアース規制」発動  NYT報道「トランプへの警告、タカ派けん制」
外国人が見た台湾観光の弱点 日本のブランド運営に学べとAllen氏提言
米国パスポートが初のトップ10陥落シンガポール・韓国・日本が世界トップ3独占
茨城・那珂市の先﨑光市長が「台南道」を設置 台湾・台南市の黄偉哲市長は次世代へ友情の継承を望む
BLACKPINKメンバーの家柄はセレブ揃い?「財閥令嬢」「皇室の末裔」との噂も それでも世界を席巻する超級ガールズグループの理由
小豆島で台湾の味と温もりを届ける──日台夫婦が営む台湾料理店「agon」、その歩みと思い
日本家屋を活かして再生 台湾・桃園文学館オープン 旧市街を歩き、百年の文学時空をめぐる
日本でクマ被害が過去最多 7人死亡・負傷は100人超、市街地にも拡大 専門家「冬眠しないクマが新常態に」
台湾「17LIVE」社外取締役に太子グループ関係者 シンガポールを資金洗浄の“踏み台”と批判、当局イメージに打撃
台中が「黄潮」に染まる! 中信兄弟、台湾シリーズで王座奪還へ 市政府前で1,300インチのライブ応援イベント開催
台湾・台北でカフェを楽しみながら飛行機を観賞!松山空港の展望デッキが改修後に再オープン!
花蓮・立霧渓の270万トンせき止め湖が危機!決壊すれば「河水が5メートル急上昇」の可能性、最新の監視結果を読む
台湾・林佳龍外交部長、日本・比・米・欧を歴訪 第一列島線で日・比と連携、中国の権威主義に対抗
北京観察》「トランプ・習近平会談」で誰が得をするのか 米財務長官ベッセント氏、半導体・製薬・鉄鋼に加え「それ」の戦略備蓄を示唆
王義雄の見解:初の女性総裁・高市早苗氏 日中の「歴史的対立」を深めるのか、それとも緩和へ導くのか
村山富市・元首相が死去、101歳 戦後50年「村山談話」で歴史直視、「侵略と植民地支配を謝罪」した歴史的談話を遺す
舞台裏》台湾・台北市公務員が「大量流出」内幕 蔣萬安市政で何が起きているのか
カンボジア「太子集団」のオンライン詐欺拠点、台湾にも 米制裁の関連9社に加え、台北101内に拠点
TSMC、熊本第2工場の建設開始を正式発表 木村知事「整地は最終段階」
天気予報》台風24号(フンシェン)たまごが発達中 台湾で週末から4日連続の豪雨・北部は10度下がる見通し
台湾民意基金会の世論調査》台湾・国民党主席選、三つ巴の激戦に 郝龍斌氏が24%で首位、鄭麗文・羅智強氏が猛追
「トランプの宿敵」ボルトン前補佐官を起訴 機密「日記ゲート」で最長10年刑の可能性
品川・大井町に新ランドマーク「OIMACHI TRACKS」誕生へ TOHOシネマズやホテルメトロポリタンが入居、2026年3月開業
「中国人と間違われたくない」韓国旅行の台湾人が“自己証明バッジ”着用ブーム 日本旅行にも必要との声も「誤認される不安」背景に自衛の動き広がる
トランプ氏、米中首脳会談で「台湾取引」か 米専門家が警鐘「習近平の思惑通りに」
池袋ガールズバー店長、女性従業員に売春強要 3カ月で400人、報酬は食費のみ 「ブスで客がつかない」暴言と暴行、GPSで監視も
インド空軍が中国を抜き世界3位へ 米誌報道、アジアの空の勢力図が塗り替えられる