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台湾「17LIVE」社外取締役に太子グループ関係者 シンガポールを資金洗浄の“踏み台”と批判、当局イメージに打撃 カンボジアの太子グループがシンガポールを資金洗浄の中継拠点として利用し、同国の金融監督に影響を及ぼしている。(写真/太子グループ公式サイト)
カンボジアの詐欺グループとされる「太子グループ」が米司法省・財務省の制裁対象となり、波紋が広がっている。責任者の陳志氏はシンガポールで資産運用会社「DW Capital Holdings(DW資本集団)」を設立。財務担当の陳秀玲(Chen Xiuling)氏は、台湾の「台湾太子不動産」の名義上の責任者であるとともに、米台出身の歌手で元L.A. Boyzの黄立成(Jeff Huang)氏が立ち上げた配信プラットフォーム「17LIVE」の非常勤取締役も務めていた。陳氏は米国の制裁指定後に17LIVEの取締役を辞任。ただ、17LIVEはシンガポールで上場し、同国の政府系ファンド・テマセクからも出資を受けている経緯があるため、太子グループがシンガポールをマネロンの“踏み台”に使ったとの批判は、同国の監督当局イメージにも痛手となった。
米当局は台湾時間15日、太子グループの起訴と主要幹部の制裁指定を発表。陳志氏がシンガポールで設立したDW資本も対象に含まれ、同社の財務部長・陳秀玲氏もリスト入りした。
アメリカ市場での公開計画が失敗 シンガポールの報道によれば、太子グループ関連では同国で計17社が米制裁の対象となり、陳秀玲氏を含むシンガポール籍の役員3人もリスト入りした。陳氏はDWキャピタルグループの財務部長であるだけでなく、台湾のライブ配信プラットフォーム「17LIVE」の非常勤取締役も兼務していたが、制裁公表後に同職を辞任した。
「17LIVE」は2015年、米台出身の歌手で元L.A. Boyzの黄立成氏が友人らと共同設立。設立当時には、万達グループ董事長・王健林氏の一人息子、王思聰氏が出資した。同プラットフォームのオンライン「分配」制度では、視聴1,000人につき配信者に台湾ドル1元が分配される仕組みが導入されている。
2016年末には、シンガポールのデーティングアプリ「Paktor(パクトル)」が17LIVEを買収。元Paktor CEOの潘杰賢氏が黄氏に代わって「17 Media」のCEOに就いた。続いて米国上場を目指し、2018年6月7日には運営会社M17 Entertainmentがニューヨーク証券取引所でのIPO(約9,500万ドル調達予定)に踏み切った。
17 Mediaの親会社M17 Entertainmentは、初の公開発行で米国預託証券(ADS)751.1万株を1株8ドルと設定。(画像/17LIVE公式サイト)
シンガポール上場計画を始動 株式再編を経て、17LIVEはシンガポールでの上場計画に乗り出した。2023年10月、グループは同国の特別目的買収会社(SPAC)Vertex Technology Acquisition Corporation Ltd(VTAC)と条件付き買収契約を締結し、合併後にシンガポール証券取引所へ上場すると発表した。
契約によれば、VTACは最大9億2,510万シンガポールドルの対価で17LIVEの全発行済み株式を取得。条件として、17LIVEまたはその株主に対し、発行価格5シンガポールドルで最大1億6,060万5,109株のVTAC新株を交付する。これにより、事業統合後の評価額は8.03億シンガポールドルとなる見通しだ。この取引により17LIVEはシンガポール上場を果たし、VTACとの合併後には陳秀玲氏が同社の非常勤取締役に就任した。
2023年10月、17LIVEはシンガポールのSPAC「Vertex Technology Acquisition Corporation(VTAC)」との条件付き買収契約を公表。(画像/VTAC公式サイト)
シンガポールのメディアによると、VTACはシンガポールの主権基金であるテマセクとそのベンチャーキャピタルのVertex Venturesによって設立されており、テマセクは2023年3月末までに「17LIVE」の株式の26%を保有していた。
『マネロン中継地」化が中・星関係を緊張させる 太子グループがシンガポールを資金洗浄の中継拠点として利用したことで、同国の金融監督当局の信頼に傷がついた。習近平国家主席が就任後、反腐敗を政権課題に掲げ、2019年の香港「雨傘運動」以降は本土権力者や犯罪組織の資産管理拠点としての香港の地位が、徐々にシンガポールに置き換わりつつあるとされる。こうした中、本土で違法賭博資金を得たとされる太子グループが、シンガポールでの運用を通じて世界規模のマネーロンダリング網を再構築できるようになり、中星関係は次第に緊張を帯びている。
制裁発表後、陳秀玲氏は17LIVEの社外(非常勤)取締役を辞任。(画像/17LIVE公式サイト)
2023年4月21日には、リー・クアンユー元首相夫人のホー・チン氏が、習氏の12年の統治を「一貫してギャングの首領のようだ」と批判する評論記事をフェイスブックでシェアし、直後に削除。背後の意図が波紋を広げた。中国政府がシンガポールの監督当局に圧力をかけ、犯罪組織のマネロン証拠の提供を求めているとの見方も出ている。
なお、潘杰賢氏は17LIVEの責任者を務めるだけでなく、かつてシンガポール資本を用いて台湾の『Apple Daily』を買収し、『壹蘋ニュース』へ改称している。
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