台湾「17LIVE」社外取締役に太子グループ関係者 シンガポールを資金洗浄の“踏み台”と批判、当局イメージに打撃

2025-10-18 17:01
カンボジアの太子グループがシンガポールを資金洗浄の中継拠点として利用し、同国の金融監督に影響を及ぼしている。(写真/太子グループ公式サイト)
カンボジアの太子グループがシンガポールを資金洗浄の中継拠点として利用し、同国の金融監督に影響を及ぼしている。(写真/太子グループ公式サイト)
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カンボジアの詐欺グループとされる「太子グループ」が米司法省・財務省の制裁対象となり、波紋が広がっている。責任者の陳志氏はシンガポールで資産運用会社「DW Capital Holdings(DW資本集団)」を設立。財務担当の陳秀玲(Chen Xiuling)氏は、台湾の「台湾太子不動産」の名義上の責任者であるとともに、米台出身の歌手で元L.A. Boyzの黄立成(Jeff Huang)氏が立ち上げた配信プラットフォーム「17LIVE」の非常勤取締役も務めていた。陳氏は米国の制裁指定後に17LIVEの取締役を辞任。ただ、17LIVEはシンガポールで上場し、同国の政府系ファンド・テマセクからも出資を受けている経緯があるため、太子グループがシンガポールをマネロンの“踏み台”に使ったとの批判は、同国の監督当局イメージにも痛手となった。

米当局は台湾時間15日、太子グループの起訴と主要幹部の制裁指定を発表。陳志氏がシンガポールで設立したDW資本も対象に含まれ、同社の財務部長・陳秀玲氏もリスト入りした。

アメリカ市場での公開計画が失敗

シンガポールの報道によれば、太子グループ関連では同国で計17社が米制裁の対象となり、陳秀玲氏を含むシンガポール籍の役員3人もリスト入りした。陳氏はDWキャピタルグループの財務部長であるだけでなく、台湾のライブ配信プラットフォーム「17LIVE」の非常勤取締役も兼務していたが、制裁公表後に同職を辞任した。

「17LIVE」は2015年、米台出身の歌手で元L.A. Boyzの黄立成氏が友人らと共同設立。設立当時には、万達グループ董事長・王健林氏の一人息子、王思聰氏が出資した。同プラットフォームのオンライン「分配」制度では、視聴1,000人につき配信者に台湾ドル1元が分配される仕組みが導入されている。

2016年末には、シンガポールのデーティングアプリ「Paktor(パクトル)」が17LIVEを買収。元Paktor CEOの潘杰賢氏が黄氏に代わって「17 Media」のCEOに就いた。続いて米国上場を目指し、2018年6月7日には運営会社M17 Entertainmentがニューヨーク証券取引所でのIPO(約9,500万ドル調達予定)に踏み切った。

ライブプラットフォーム17 Mediaの親会社であるM17 Entertainmentグループが初の公開発行で751.1万株の米国預託証券(ADS)の価格を1株8ドルと発表しました。(17LIVEウェブサイトより)
17 Mediaの親会社M17 Entertainmentは、初の公開発行で米国預託証券(ADS)751.1万株を1株8ドルと設定。(画像/17LIVE公式サイト)

しかし、17LIVEの米上場計画は頓挫。上場予定の5日前時点で価格決定や取引成立に至らず、IPOは取り下げられた。黄氏は6月13日、フェイスブックに「#fuckCitibank」「#fuckDeutschebank」と投稿し、NYSEや主幹事2行を名指しで批判。2020年11月18日には創業者の黄氏が自社の買い戻し計画に応じて全株を会社に売却し、すべての職務を退任した。 (関連記事: カンボジア「太子集団」のオンライン詐欺拠点、台湾にも 米制裁の関連9社に加え、台北101内に拠点 関連記事をもっと読む

シンガポール上場計画を始動

株式再編を経て、17LIVEはシンガポールでの上場計画に乗り出した。2023年10月、グループは同国の特別目的買収会社(SPAC)Vertex Technology Acquisition Corporation Ltd(VTAC)と条件付き買収契約を締結し、合併後にシンガポール証券取引所へ上場すると発表した。

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